春のお兄ちゃん離れと恋模様 7
「あー、夏はねぇ」
母ちゃんが不自然に口ごもって、だから、え、何って母ちゃんを見た。
いつものごとくボサボサ頭で寝不足の目でヨレヨレの母ちゃんが、そのボサボサ頭をぽりぽり掻いた。
「なっちゃんは?」
「………土曜日の夜は、実はいつも居ない」
「………え?」
「毎週土曜日は泊まってきてる」
「え?」
土曜日の夜は実はいつも居ない。土曜日は泊まってきてる。
母ちゃんの言葉が理解できなくて、頭の中でそのまま繰り返した。
「どういうこと?」
「………ゆず先生のとこに行ってるってこと」
え。
びっくりして。
びっくり、した。
ゆず先生。
俺が通ってた保育園の、年長のときの先生。
保育園で一番のかわいくて優しくて、俺は何でかゆず先生がすごい好きで、将来はゆず先生と結婚しようって本気で思ってた。
忘れたいぐらいの超絶恥ずかしい過去だけど、俺は当時すごい本当に本気でゆず先生が好きで、そのゆず先生となっちゃんがいつのまにか恋人になってるって分かった時は、恥ずかしいことにショックのあまり家出した。
え。
会ってた、んだ。
いや、別れたとかは聞いてない。
っていうかそもそも付き合ってることにも最初は気づかなかった。
何きっかけとか実は知らない。
ただ、なっちゃんから聞いて、俺の初恋は見事に終わった。
うん。
なっちゃんが誰かと楽しそうに電話で話してるとこは見たことある。
うん。
なっちゃんが誰かと楽しそうにラインしてるのは見たことある。
うん。
それがきっとゆず先生なんだろうなってことは思ってた。ずっと。
「それって、いつから?」
「土曜日の夜に居ないのは、夏が高3のときから。泊まりはハタチこえてから」
え。
なっちゃん。
クソがつくほど真面目ななっちゃんが。
なんかすごいびっくりして、どうしていいかわかんなかった。
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