春のお兄ちゃん離れと恋模様 2

 それを聞いて なんかだったおれに おむかえにきたなっちゃんがどうした?ってきいてくれた。

 

 

 だからおれは あのねって はなした。

 

 

 そしたらなっちゃんが、このこうえんに そのでっかいまつぼっくりの木があるって しらべてくれて、それから毎日、学どうのかえりに よってる。なっちゃんと。

 

 

 でも、高い高い木の上のほうにはなってるのに、ぜんぜん下には おちてないんだ。

 

 

 

 

 

 小さいまつぼっくりは いっぱいおちてるのに おっきいこのまつぼっくりはないから なんでってなっちゃんにきいた。

 

 

 なんでだろうなって なっちゃんもわかんないっていってたけど ちょっとぶさいくな犬のさんぽに来てたおにいちゃんが このおっきいおっきいまつぼっくりは だいにんきで きみたいに 毎日見に来ては ひろってく人がいるんだよって おしえてくれた。

 

 

 だから きみが来るころには ないのかもねって。

 

 

 

 

 

 ない。

 

 

 ないよ。

 

 

 どんなに いっしょうけんめいさがしても みつけられなくて。なくて。

 

 

 

 

 

 楽のとがった口が、どうしてもあたまからはなれなかった。

 

 

 

 

 

 楽なんか、すきじゃない。

 

 

 べつにすきじゃないよ。

 

 

 

 

 

 けど。

 

 

 

 

 

 楽が作る まつぼっくりのクリスマスツリーは。

 

 

 クリスマスツリーは。

 

 

 

 

 

 なっちゃんが、かいちゅうでんとうをかた手に あちこちさがしてくれる。

 

 

 いっこぐらいあっても よさそうだけどなって。

 

 

 

 

 

 毎日来てるのに 見つからない。

 

 

 こんなに来てるのに 見つけられない。

 

 

 

 

 

 そんなとくべつなまつぼっくりを 楽はなんで おれにくれたんだろう。

 

 

 

 

 

 楽。

 

 

 

 

 

「………なっちゃん」

 

 

 

 

 

 おれはないた。

 

 

 

 

 

 なんでないの。なんでこんなに毎日来てるのに。

 

 

 

 

 

 見つけることもできないのに、見つけることがこんなにもたいへんなのに きょねんもその前も、その前も、やるってくれた楽。

 

 

 ことしもくれるつもりでいてくれた楽。

 

 

 

 

 

 楽 ごめんねって おれは おもった。

 

 

 

 

 

「明日もうちょい はやおきして見に来てやるから、なくな。春」

「………なっちゃん」

「ぜったい見つけてやるから、な?」

 

 

 

 

 

 おれのまえにしゃがんで、なっちゃんがなみだをふいてくれた。

 

 

 おれはなっちゃんにだきついて、うわあああああんって ないた。

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