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テンション上げ上げで『えっちえっち、きゃー』って連れて行かれたベッドだったけど、柚紀は自分で上を脱ぎ捨てて、でも、次の瞬間にそれが、動きが、ぴたって止まった。
ぱさり。
床に落ちた服の音が、やけに大きい。
「………電気、ちょっと暗くするね」
くるくるくるくる変わる柚紀が静かに言って、ピってリモコンで明かりを落としてる。
俺は、久しぶりでどきどきしてるのを悟られないよう、ゆっくりとリュックをおろした。
おろして。
「これ」
コンビニの袋から今買ってきたスフレを出して冷蔵庫入れるぞって、言おうとしたら。
ビクって。
分かりやすく柚紀が、した。
え。
「あ………これって?」
振り向いて、柚紀が俺を見る。
その目がゆらゆら………揺れてる。
そして、沈黙。
俺はコンビニの袋にスフレを戻した。
そのまま床。
「なっちゃん?」
「ばーか」
何だよ。
何、その顔。その目。
そんな顔するな。そんな目で見るな。
まだ分かんないの、アンタ。まだ足りない?それともやるのが久しぶりだから?
抱き締めた。
上半分脱いでる柚紀を。
やっぱ変に結婚とか言っちまったから軽く思った?俺まだガキだし。
ガキが初めてできた恋人に夢見て言ってるって思った?
俺はすごいまじで思ってて、まじで言ってるんだけど。
ぎゅって抱き締めて、離して、ベッド。
柚紀は明日も仕事だけど。悪いけど。今日は。
もういいってぐらい、今日は。
「………やる」
これでもかってぐらい。
アンタが好きって、叩き込んでやるよ。
そんな顔でそんな目で俺を見た、バツだ。
最初こそ不安げだった柚紀は、最初だけだった。
「スフレ買ってきたけど」
諸々後処理中の俺の横で、柚紀は横向きになって文字通りぐったりしてる。
乱れた髪が妙に色っぽい。
「………今ちょっと、動きたくない」
諸々のティッシュをぽいってゴミ箱に捨てて、柚紀の横に転がる。
柚紀を抱き締める。髪の毛にキス。
柚紀はぐったりなまま。俺にされるがまま。
何でって聞いた俺に、閉じてた目を開けて、柚紀は困ったような顔で笑った。
「なっちゃんがえっ ちなこといっぱいしたからでしょ」
「まだ俺一回」
「『なっちゃんは』ね」
「そう。柚紀がいっぱいなだけ」
「そうなんだけど‼︎」
やだもう、なっちゃんって。
怒ってんだか照れてるんだか。
言って、笑って、はあって甘い息を吐いて、俺の背中に長い腕を絡めた。
許された相手との、特別なこれは、瞬間で。
思うのは、好きってこと。
「スフレは?まだやるから、先食っとく?」
「………え」
俺の肩に顔を埋めてた柚紀が、ぱって顔上げるから。
だから。
「スフレ」
「じゃなくて」
「ん?」
「まだやるって、言った?」
「言った」
「………僕明日も仕事」
「知ってる」
「僕もうすごい満足」
だろうな。とは思う。
経験値が圧倒的に足りない俺のウリは必死。
一回一回が気合いで全力で必死。
柚紀の反応を見てとにかく全力で必死。
だからこその効果は絶大だと自分で自分を褒めてやりたい。さすが俺。
ちゃんと経験豊富な柚紀を満足させられてる。
だがしかし、だ。
舐めんな18歳。
「俺がまだ」
「え」
「俺はまだ足りてない」
「嘘」
「嘘じゃねぇわ」
まだだよ。
俺がまだ、柚紀に好きって言うのが、伝えるのが、足りてない。満足してない。
「………え?」
「まだ足りない。もっと」
もっと言う。もっと伝える。
二度とアンタが、俺と居てあんな顔、あんな目をすることがないように。
「………やだ、なっちゃん」
「やだ、じゃ、ねぇだろ」
うんって、小さく頷いて目を伏せる柚紀にそっとキスして、そして。って、思ったのにだ。
のに、だよ。また。
「スフレ‼︎」
だから、タイミングな。
タイミングだってまじで。
俺はもう、『俺』がもうその気だっつーの。スフレ‼︎じゃねぇっ。
「あと」
「うえ⁉︎僕のために買って来てくれたんでしょ⁉︎」
「そう。でもダメ。もうあと」
「ちょっ………ちょっと待って、なっちゃん‼︎」
「やだね」
「なっちゃん‼︎」
スーフーレー‼︎
じたばたする柚紀を下にして、身体全部でホールド。
頭を抱えてキス。濃厚なやつ。
じたばたする柚紀にして、しまくって。
「今日は」
覚悟しろ。
宣言。
「………やだ、なっちゃん」
得意のやだなっちゃんがまた炸裂で、笑う。
許された相手との、何一つ隔てるものがないままでの、これは特別な瞬間。
合わせてるのは身体だけじゃなくて。裸の、まんまの心。
なっちゃん。
大好き。
うん。
俺も。
「だからスフレ‼︎」
「だからうっせぇって」
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