93
「ついた」
赤くついたアトに俺はすっごい満足で、それを指でなぞった。
印。証。
アンタのココロは俺のもの。俺を好きでいて、俺に好きって言って。俺もいる。アンタを好きでいる。アンタに好きって言う。
「………見せて?見たい」
「ん?ここ」
仰向けで俺の頭を抱えるみたいにしてた柚紀が、腕を解いた。
だから。ここって、今俺がつけたばかりの赤いあとを、指差して、見える?って。
「………ついてる」
「ついてるな」
頭を上げてそれを見て、柚紀の指もなぞった。それを。
何を思ってるのか。
何かを思ってるだろうその顔が。笑みを浮かべる顔が………キレイって、思った。
「………っ」
思った、から。
身体へのキスの再開。そして。………そして。
好きな人に好きって言われながら、思われながら抱かれるって、それはどんな気持ちなんだろうって言ってる柚紀には、好きって言いながら、思いながらやりたいって思って、とにかく何もかもを、初めてなりに丁寧にやった………つもり。
上半身も下半身も、俺が柚紀にされてたより時間をかけた。キスもいっぱいした。
さすがに、触る以上のことは、その先のことは聞かないと分かんなくて、教えてって聞いた。
そしたらちょっと待ってねって、柚紀がベッドの下から「なっちゃんとやるために買ったんだよ」って、ごそごそと何やら取り出した。
「残ってたやつじゃないよ。新しく買ったやつだよ」
ほらって、小さい段ボール箱をぱかっとして見せられた、未開封のそれ、は。
俺にとっては初めましての、アイテム、だった。
それ、いつ買ったの?って思わず聞いたけど、柚紀はへへって照れ笑いで誤魔化した。
それを渡されて、やり方聞いて、え、大丈夫なの?っておそるおそる指でして。指でしてから。
………柚紀に、入った。
入ってすぐは、動けなかった。
うわ。と、ああ。で。
後ろからの方がやりやすいよって柚紀は言ったけど、俺は断固拒否った。
やりにくかろうが何だろうが、絶対普通にやるって言って。
だって。
だって、好きって言われながらだろ?好きって思われながらだろ?
後ろからだってそりゃできるけど、違う。何かそれは違う。絶対。
身体を繋げることだけが大事なんじゃない。それが目的なんじゃない。
柚紀が求めてるのだって、身体だけじゃないだろ?
だから、ちょっと時間かかって、もたもたして、初めて感丸出しでカッコ悪かったけど。
正面同士で。俺が上。柚紀が下。入れて、入って、まず、とにかく抱き締めた。
ぎゅうって、ぎゅうううううって。抱き締めた。
「………柚紀」
「………ん」
好きだよ。柚紀が好きだ。すっげぇ好き。好きだから。な?
入れて、抱き締めて、キスして、ぎこちなくだけど動いて、しぬほど好きって言って。
「………なっちゃん」
俺は柚紀で、どーてーくんを卒業した。
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