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「なっちゃん、大丈夫?」

「………」

 

 

 

 

 

 色々衝撃的すぎて、正直大丈夫じゃない。

 

 

 

 

 

 いたーだきーますって若干ふざけめのノリで始まったけど、それは次の瞬間には消えて、柚紀からの全力のキスがスタートだった。

 

 

 

 

 

 それからは。

 

 

 それ、からは。

 

 

 俺はただただ、柚紀の好きなように触られて、キスされて、その。

 

 

 

 

 

 ………その、だ。

 

 

 

 

 

 まっぱですっかりぐったりな俺と。そんな俺をふふふって笑いながらふわんって抱き締めてる柚紀。

 

 

 俺だけまっぱだし。柚紀は脱いでもいないし。

 

 

 

 

 

「気持ち良かった?」

 

 

 

 

 

 ふわふわ撫でられる。

 

 

 うんって、柚紀のTシャツを握る。猛烈に恥ずかしくなってきて、顔が上げられなくて、柚紀に隠れる。

 

 

 

 

 

「やだかわいい、なっちゃん」

 

 

 

 

 

 柔らかな笑い声。耳にキス。首筋。そして。唇。

 

 

 

 

 

 好きな人に好きって言われながら、思われながら触れられるって、こういうこと。

 

 

 そんなとこ⁉︎とか、そんなこと⁉︎とか、びっくりで、恥ずかしいで、気持ちいい。そして。

 

 




 柚紀は、こういう気持ちを知りたかったんだ。

 

 

 

 

 

 色んなことをされながら、そう思った。

 

 

 

 

 

 最初からそれを知れた俺と。

 

 

 ずっとずっとそれを知らずにいた柚紀。

 

 

 

 

 

「柚紀」

「んー?」

 

 

 

 

 

 俺に乗っかって、大丈夫?イヤじゃなかった?こわくなかった?

 

 

 小さい子に聞くみたいに、触れるだけのキスを繰り返しながら。俺の髪を撫でながら。言ってる。

 

 

 最中もそうだった。気持ちいい?なっちゃん。大丈夫?って。

 

 

 次にうつる前、うつった後、柚紀は必ず優しい声で聞いてくれた。何もかもが初めての俺を、すごい心配してくれた。

 

 

 

 

 

「………柚紀」

「なあに?どうしたの?」

 

 

 

 

 

 恥ずかしく閉じてた目を開けたら。

 

 

 笑ってるけど、ちょっと泣きそうな顔をしてる柚紀が、いた。

 

 

 

 

 

「大丈夫?気持ち悪くない?」

「………え?」

 

 

 

 

 

 泣きそうな、顔。に。

 

 

 俺は首を振った。すぐに。振って。

 

 

 

 

 

「………好きだから」

 

 

 

 

 

 言った。

 

 

 柚紀のTシャツを握ってた手を、背中に絡めた。

 

 

 鼻先数センチの、柚紀を、見た。

 

 

 

 

 

 好きだよ。

 

 

 

 

 

 変わらないよ。そんな。

 

 

 気持ち悪くない?って、何が?

 

 

 全身へのキス含めて色々されたこと?それとも。

 

 

 そういうことをするアンタのこと?

 

 

 そんなの。そんなこと。思うわけないじゃん。好きだよ。んでもって、俺って柚紀がこんなことしたいって思うぐらい、実際しちゃうぐらい想われてんの?って。嬉しいよ。嬉しかったよ。うわって。感動。

 

 

 

 

 

「………僕はちょっと、こわかったよ」

「………何、で」

「やっぱり無理って言われたらどうしよう。イヤって言われたら。離せって言われたら」

「言わねーし。言うわけないし」

「………うん。でも、こわかったよ」

「………だから、ふざけてた?最初」

 

 

 

 

 

 え?って柚紀が小さく言って。

 

 

 うんって、ごめんねって、目を伏せた。

 

 

 

 

 

「俺。アンタが好きだよって思いながら、触られてた」

「………うん」

 

 

 

 

 

 ぐすって、鼻をすする音。そしてへへって、照れ笑い、で。

 

 

 

 

 

「なっちゃんは、僕を………触れる?」

 

 

 

 

 

 また。不安そうな。

 

 

 

 

 

「今度は、俺だろ?」

「………自分から誘っといて何だけど、無理しなくてもいいんだよ?」

 

 

 

 

 

 何言ってんだ。コノヒト。人をすっかりその気にさせたくせに。

 

 

 俺は、春が卒園するまで何とか我慢しようって思ってた。

 

 

 なのにあーんなこととかこーんなこととか、DVDや動画の世界をすげぇ色々俺にしといて、いざ自分ってなったらびびってんのか。ふざけんな。

 

 




 ふざけんな、だけど。




 

 

 ………なあ、もしかして。

 

 

 もしかして、俺に先に出させたのは、もし俺がやっぱりできないって言っても、一回出したからねって言えるから?自分にも俺にもそう言って、言えて。言い訳できて。

 

 

 

 

 

 そんなに。アンタ。

 

 

 

 

 

 ちょっとイラってして睨んだけど、何でそんなこと言うかの予想で、そのイラってやつはすぐ消えた。

 

 

 

 

 

 ………こわいか。こわい、よな。傷つきたくないよな。もう。

 

 

 

 

 

「ばーか」

「………なっちゃん?」

 

 

 

 

 

 俺を舐めんな。でもって18歳舐めんな。

 

 

 好きだって言ってる。まじ思ってるんだよ。

 

 

 一回出したから何だ。たつわ。すぐに。アンタの身体なんか見たら、触れたら、あっという間だっつーの。

 

 

 

 

 

 今度は柚紀が下。

 

 

 ひっくり返す。

 

 

 

 

 

「俺は今日、柚紀でどーてーを卒業するんだよ」

 

 

 

 

 

 びっくりして目を見開いてる柚紀の服を、今度は俺が。

 

 

 

 

 

「いつまで着てんだ。………脱げ」

 

 

 

 

 

 脱がせた。

 

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