88
身体に乗っかる重みと、唇への柔らかな感触で目が覚めた。
………朝?
部屋は明るかった。
明るくて、俺は。
「………っ」
朝。
何時か分かんないけど、朝?で、今俺は絶賛柚紀に襲われ中、だった。
昨夜は結局、ご飯を買いに出かけることはなかった。しなかった。
ちょっとでも長く一緒に居たいから出掛けちゃやだって、かわいいやらガキっぽいやらなことを言う柚紀に、じゃあ何か簡単に作れるもの教えてよって、ベッドから柚紀に教えてもらって、俺が作った。
レンチンの超簡単、そしてうまいうどんを、ふたりで食べた。
食べて、薬飲ませて、一緒にごろごろして、俺は風呂ってかシャワー借りて、歯磨きして、早めの就寝。
保育園児並の早い就寝だったと思う。21時とか。
不服そうではあったけど、むぅって口を尖らせて、なっちゃんのケチって言われたけど、寝るぞって、寝た。
そしてただいま絶賛襲われ中。
キス、が。
キスで起きた俺に、起きたことに気づいた柚紀が大人濃厚なキス攻撃。
頭ががっちりホールドされてて、もう任せるしかない状況。
ちょっと待って。
熱は?ってかどうすんの、コレ。キス、すごい。すごいし朝だし、アレだしコレ。
『アレ』、だよ。
主張が激しい『俺』。そして、同じく『柚紀』。
わざとなんだと、思う。
乗っかってる身体。
『俺』に『柚紀』も、乗っかってて、そこにさらに容赦ないディープなキス。
不服な昨夜を取り返すみたいな。
下からぐいぐい身体を押してみたけど、絡みつく舌を、身体は押しても、俺も離せないでいる。
興奮度が増してくるからヤバイ。ヤバイ、けど。
だから言ってるじゃん。俺だってお年頃なんだよ。この先の未知の世界には、興味なんか津々でしかないんだ。
こんなことされたら。………されたら、さ。
して。キスして………っていうかされて。されて、されまくって。
ぷはって、やっと離れた頃には、俺はもう。
ぜーぜーはーはーどっきんどっきん。
「おはよ、なっちゃん」
「………はよ。ってか熱は」
「ないよ。下がった」
ほらって、俺が聞くのを想定して、計り終えた体温計をそのまま置いといたらしくて、見せる。
濡れた唇で口角を上げる。
色っぽすぎる。視線が。
36.6度。
で。
だから?
「………あのね」
「………ん?」
柚紀は昨日俺がしてたみたいに、俺の顔の両側に肘をついて、俺のほっぺたから髪を、撫でた。何度も。撫でてる。
真上。
ちょっと、これは。
態勢も、空気も。勢いも。
ヤバイかも。これでおしまいには。できない、かも。
見下ろされる。見つめられる。
視界が柚紀だけになる。
すごい色っぽい顔。大人キレイに色気プラス。
あのねってもう一度動いた濡れた唇に誘われて、俺が下からキスをした。
触れるだけのキス。
あのねの後、ちょっと目を伏せてた柚紀が、びっくりして目を開けて、照れ笑い。
「………なに」
「なっちゃんが言うようにさ、してないから不安とか、心配とか、あるんだよ。やっぱり無理って言われちゃうんじゃないのかな、とか」
「………うん」
また伏せられた目。
どうしてコノヒトはこんなにも表情が変わるかな。
俺も。
その顔が、今してる顔が切なくて、俺も触れた。触った。その、ほっぺたに。両手で挟んだ。
「でも、同じぐらい思うのはね」
「………うん」
好きな人に好きって言われながら、思われながら抱かれるって、それはどんな気持ちなんだろう。
「僕はそれが、知りたいんだ」
何か。聞いて。それを。
すごい堪らなくなって。色んなものが。溢れて。堪えきれなくて。
柚紀からされてたような深い深いキスを、今度は俺から。下から。柚紀の頭をがっちりホールドして。
………した。
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