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俺がやるとまじヤバイからって自分で身体を拭かせて着替えさせて、買って来たスポーツドリンクを飲ませて水分補給。
ゼリーも食べたから歯磨きしてくるってゆず先生を待って、戻ってきたゆず先生のおでこに俺がペタって熱冷ましのシートを貼った。
下がりますようにってシートの上からキスをしたら、やだ、なっちゃんって、がしって何でか抱きつかれた。
「ん?」
「………なっちゃんってどうしてそんなにかわいいのかなあ」
「いつも思うけど、高3男子にそれってどうなの」
「だって本当に本当に本当に本っ当に、かわいいんだよ。あーもー僕何で熱なんか出してるの?カモがネギしょって目の前に居るのにっ」
「………言い方な」
「だってそうじゃんっ」
「分かったから布団行け」
「くううううう」
行けって言ってるのにゆず先生は俺の腰に腕を回して、くうううううって何回も言いながらゆらゆらしてる。
いや、むしろアンタの方がかわいいんだけど。
俺は、どんだけゆず先生がかわいいかわいいって言ったって、一応むさくるしさが出てくる高校生。
それにかわいいって言うのもどうよ、だし、ゆず先生が言うから、顔がどうしてもデレるけど、それ他のヤツに言われたら『はあ?』だ。
「それはアレだ」
「アレ?」
「アレ」
「アレって?」
ほらもう布団行けって身体を離して、掛け布団をめくってゆず先生を促した。
「電気どこ?」
「あ、電気はリモコン。ここにあるよ」
「ん、消して」
「うん」
ゆず先生にもっとつめろって言って俺も一緒に布団に入った。
ピって電子音。
暗くなる部屋。
そして。
「あっちぃな」
狭いシングルベッドに、発熱成人男性ひとりと、背だけは大人と変わらない俺。
腰を抱き寄せたら、腕がぎゅって、首に絡まった。
熱を持ってる身体との密着だから、触れてるところが熱くて暑い。
「アレって何?」
甘えてんのか、コノヒト。
すりってほっぺたを擦り寄せて来るから堪んなくて、暗い中、盛大にニヤけながら髪を撫でた。
早く寝ろよって。誤魔化しつつ。
「なっちゃん、アレって何?気になって眠れないんだけど」
コノヒトの方が年上なのに、それこそかわいくて。
俺は堪えきれず、柔らかい髪の毛にキスをした。
「アンタが俺をかわいいって思うのはさ」
「………うん」
「アンタが俺のこと好きだからだろって、思っただけ」
そして、言われても『はあ?』じゃないのは、俺が。
俺がアンタを好きだから。
密着の身体はそのままに、顔がちょっと、離れた。
ふふふ。
俺の好きな、甘い笑い声。
撫でられるほっぺた。そして。
うわって。
何回しても、うわってなる。キス。
唇と唇が触れ合ってるだけなのに、何でこんなにも気持ちいいんだろう。
「好きだから、か」
「………そう」
「その通りすぎてびっくりだよ」
「だろ」
うん。
どんな顔で頷いてるのかは、またゆず先生の顔が戻ってったから分かんないけど。きっと。
何回見てもどきってなる、大人キレイな顔なんだろう。
「寝よ」
「あーあ。こう先生に迷惑かけちゃうかなあ」
暗い中、こう先生って聞いて。
あ。って、唐突に思い出した。
春がお泊まり保育んときに見たっていう、ゆず先生とこう先生の。
「………あのさ」
寝よって言ったけど、寝かさないとだけど。
思い出したら気になって気になって。
気に、なるだろ。俺とはもう手を繋ぐ以上のことしてんだから。
これからもっと、してくんだから。
「ん?」
「こう先生って言えばさ」
「うん」
「手、繋いでたって聞いた。春に」
「こう先生?」
「うん」
「誰と?」
「アンタ」
「へ⁉︎」
俺に伏せてた頭が、がばって、上がった。
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