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ふふって声が、笑い声が聞こえた。
なっちゃんって、甘い声も。
熱い身体に、だから熱だって思うのに、俺の身体が言うことを聞かなかった。
ゆず先生の腕が、俺に絡まってる。
俺の、ゆず先生の傷跡にキスしまくってる俺の頭を、抱えるみたいに絡まってて、熱でなのか違うのか。
時々はあって漏れる息とか。
びくんって跳ねる身体とか。
やっぱり甘い、なっちゃんって声とか。
熱で、しかも明日………もう、今日だ。今日は運動会だよ。
早く寝かせて、早く。少しでも。熱。
「………どう、したい?なっちゃん」
その、平気?って聞かれた傷跡に、キスしてキスしてキスしまくった。
身体を撫でて撫でて、撫でまくった。気づいたら。してた。
もう、気づいたら、だよ。途中でうっわって自分でも思ったけど、全然止まらない。止められない。
もっと、もっともっともっともっとって。
この先をしたいとか、ゆず先生が………欲しい、とか。
そういう『欲求』って、まじ意思の力の前には弱いんだなって、思った。身をもって実感してる。今。
思った以上にデカい。その傷。ひどかったんだなって。面積、広くて。
『気持ち悪い』って、さっき、さらっと言ってたけど。
これでも。色々あったんだろう。
コノヒトは、天真爛漫な、ヒマワリみたいな笑顔の下に、どれだけの真逆を潜ませてるんだ?
俺が思うよりずっと、コノヒトは。コノヒト、は。
俺もはあって、息が漏れて。吐いて。
ごめんって、唇と手を肩と身体から離して、もぞもぞ移動しておでこを合わせた。
熱い。ゆず先生が、本当に熱い。
ゆず先生はそのまま、おでこを合わせたまま、頭を左右に振った。
「………平気?」
「平気。全然」
合わせたおでこのままゆず先生を見ると、超ドアップすぎて目しか見えないゆず先生が、ふわんって、笑った。
俺に絡まってる腕に、ぎゅって力が入る。
良かったって、小さく、呟く。
コノヒト、は。
………コノヒトは。
「………身体拭いて服着て、寝よ。こうして寝よ」
「こうして?」
「アンタが寝るまでこうしてる」
「………え?」
こうして。ハグして。
熱いけど。そうしたい。俺がこうして、コノヒトが寝るまでしてたい。
好きだよ。アンタが好きだよ。
知れば知るほどに、好きになる。俺が好きでいるよって、言いたくなる。
俺が思うよりずっと、今までしんどかっただろう、コノヒトに。
キスしたい、もっと触りたい、先の先、最後までやって、全部を手に入れたい。
その欲求はすごい、けど。
信用の構築。が。
もっと、コノヒトには、それも必要な気がする。
色々あったんだろうだけに。
俺がまだ高校生で、ガキで、人生の経験値も屁みたいなもので。だから、余計に。きちんと。
「こうして、寝るの?」
甘い声から変わる、声。
小さくて。何かをこわがってるみたいに、聞こえた。
「春が起きるまでに戻ればいい。だからこうして寝て、朝までここにいる」
「………なっちゃん」
「………ん?」
背中に絡んでた腕が解けて、そのまま俺のほっぺたはゆず先生の熱い手に両側から触れられた。
ゆらゆらしてる、黒目がデカイ目。
泣きそうにも、見えた。だから。
キス、した。
「………っ」
されるとは思ってなかったのか、俺の身体の下で、びくってゆず先生の身体が、なった。
唇。
離して、もう一回。キス。
「………すき」
小さくて、小さくて、小さい、声。
「………うん」
俺も、すき。
言って。
ほら、身体拭こって。
最後熱いおでこにキスをして、ゆず先生から起き上がって、ゆず先生を起こした。
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