6
かっ………。
本日二度目の萌え萌えに、俺は危うくその場に撃沈するとこだった。
いつもの保育園。
でも、提灯がぶら下がってて、いつもと違う雰囲気の保育園。
門のところの受け付けに、ゆず先生は立っていた。
しかも、春の言う通り浴衣姿。
しかもしかも、妙に色っぽく見える、白い、浴衣。
隣に並ぶ女の先生が、やっぱり浴衣姿なのに霞んでる気がする。
ゆず先生と並ばなきゃなんて、ある意味悪意だ。拷問だ。
「ゆず先生、こんばんはっ」
「春くんこんばんは。暑いけど今日はがんばろうね」
「うんっ」
いっぱい練習したもんねーって。
腰を下げて春と同じ目線で話すゆず先生が。
ゆず先生が、ゆず先生が、猛烈に、激烈に。いつもだけど今日は増し増しで。
………かわいすぎる。
春もゆず先生ゆかたかわいいーとか言ってるし。さりげなくだけどちゃっかり言っちゃってるし。
え?ほんとー?ありがとうーって照れてるゆず先生が更に猛烈にかわいくて、うおってなった。
んで、照れながら、春くんも甚平かっこいいねって。
いいなあ。春。
俺もゆず先生にかっこいいって言われたい。………ってか。
その前に、ゆず先生にかわいいって、俺も言いたい。
「なっちゃんもこんばんは。暑い中ありがとう」
「………あ、ども」
言いたいのに。俺だって喋りたいのに。
すっかり定着したゆず先生の『なっちゃん』呼びに、定着したのに呼ばれるたびにドキンでドキドキで。
浴衣姿のゆず先生がかわいすぎて、ゆず先生にドキンでドキドキでドキドキ、しすぎて。
いつも以上に、ろくに喋れない。
「なっちゃん、甚平似合ってるね」
「え」
「すごくかっこいいよ」
「………え?」
かっこいい。
すごくかっこいいって、今。ゆず先生が、俺に。
かあああああって顔が赤くなって、やべぇ恥ずかしいって思ったけど、思ったところでどうにもできなくて、俺はごまかすみたいにそっぽ向いたけど、何でそっぽ向くんだよ俺‼︎態度悪いだろ‼︎って思うけど‼︎
ダメだ。
ゆず先生を前にすると、どうしてもドキンでドキドキで俺が俺で居られない。
そんな俺に、ゆず先生はふふふっていつも通り笑う。
耳にくすぐったいゆず先生の笑い声、に、も。
………ずきゅーん、だ。
思って自爆。余計に顔が。顔がっ。顔があああああっ。
「春くんこれお祭りのカードね。先生みんなでお店やるから、太鼓終わったらなっちゃんと楽しんでね」
「うんっ」
「なっちゃん。年長さんはまず和太鼓のお披露目があるので春くんを教室に連れてってもらっていい?終わったらカードに描かれてる………」
ゆず先生が穏やかな口調で説明してくれてたけど、俺はそのほとんどを聞いてなくて。ってかドキドキしすぎて聞いてられなかった。
「なっちゃん、おれ、らいおん組に行くんだよ」
「へ?」
「さっきゆず先生が言ってたよ。おれ行くからじゃあねっ」
「へ?春っ」
走って教室に行く春と、情けなくああってそこに取り残された、俺。
ぽつんって。
取り残された。俺。
まわりは園児の父さん母さんじいさんばあさんきょうだいがぞろぞろしてる。
だから、ぽつーんな俺は、ちょっと居心地が。だいぶ、居心地が。
………悪かった。
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