幕間の春サイド 2

 おれには、こうこうさんねんせいの おっきいにーちゃんがひとりいて、かーちゃんとほいくえんからかえると、いつもだいたいせんたくものをたたんでいて、おう、はる、おかえりっていってくれる。

 

 

 おれはにーちゃんが、にーちゃんのなっちゃんがだいすきだから、てをあらってうがいをしたら、なっちゃん、なっちゃんってむぎゅむぎゅしにいくんだ。

 

 

 

 

 

 なっちゃんは かっこいい。

 

 

 なっちゃんは にーちゃんなのに いえのことは なんでもできる。

 

 

 なっちゃんは あたまもよくて よくともだちにでんわでべんきょうをおしえてる。

 

 

 

 

 

 なっちゃんはおれの じまんのなっちゃん。

 

 

 

 

 

 うちにはとーちゃんがいない。

 

 

 とーちゃんはおれがもっとちいさいときに『いえで』をしたんだって。

 

 

 

 

 

 よくわかんないけど、かーちゃんはおうちでおしごとしてるし、なっちゃんもおれがかえるといるし、べつにさみしいとおもったことは………ちょっとしかない。

 

 

 

 

 

 きょうも なっちゃんのせなかに むぎゅむぎゅしながら、だいすきなゆずせんせいのことをおしえてあげた。

 

 

 

 

 

 きょうは あやとりをおしえてもらったんだよ。

 

 

 ごむかんがつくれるようになったんだよ。

 

 

 ゆずせんせいはあやとりでなんでもつくれちゃうんだよ。すごいんだよ。

 

 

 

 

 

「おまえ、ほんとに ゆずせんせいがすきだな」

「すきだよ‼︎だっておおおきくなったら、ゆずせんせいとけっこんするんだもんっ」

「そっか。じゃあけっこんしきはおれもよんでくれよ」

「うんっ。ぜったいきてねっ」

「ぜってぇいくわ」

 

 

 

 

 

 ゆずせんせいは、すっごくすっごくかわいいから、なっちゃんきっとびっくりしちゃうよっていったら、たのしみだわーって なっちゃんはわらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 つぎのひも おれはゆずせんせいにあやとりをおしえてもらって、いっかいだけ さんだんばしごがじぶんでできて、ゆずせんせいが はるくんすごーいってほめてくれた。

 

 

 けいこちゃんがまたなきながら ゆずせんせいのえぷろんをひっぱってて、ゆずせんせいはどうしたのけいこちゃんって、けいこちゃんといっちゃった。

 

 

 

 

 

 おれもないたら ゆずせんせいとてをつなげるかな。だっこしてくれるかな。

 

 

 でもそのあと らくにまたへんなむしをぽけっとにいれられて わんわんないても、きてくれたのは こうせんせいだった。

 

 

 

 

 

 こうせんせいも きらいじゃないよ。

 

 

 きらいじゃない。ただ、ゆずせんせいがだいすきだから、ゆずせんせいのほうがいいだけ。

 

 

 

 

 

 らくくんって こうせんせいが こわいかおで らくのなまえをよんで、らくはないた。

 

 

 それはこうせんせいのめぢからがはんぱないから。

 

 

 って、かーちゃんがいってたけど、めぢからってなんだろう。よくわかんない。

 

 

 

 

 

 らくはごめんねっていってくれた。

 

 

 でもまたやるんでしょ?ってきいたら らくはうんっていった。

 

 

 

 

 

 おれがこんなにもむしぎらいなのは、らくのせいだとおもう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はるくん、おかあさんきょうは、はやおむかえっていってた?」

「いってた‼︎」

「そっかあ。じゃあもうちょっとまとうか」

 

 

 

 

 

 おむかえのじかんはもうきてて、でもかーちゃんがこなくて、おれはらいおんぐみのまえのところで ゆずせんせいとすわってた。

 

 

 きょうは けいこちゃんもらくも、おそおむかえなんだって。

 

 

 だから、はやおむかえのみんながかえっちゃったいま、ゆずせんせいは おれだけのゆずせんせい。

 

 

 

 

 

 うれしくて、おれはずっと だいすきななっちゃんのことをおしえてあげていた。

 

 

 ゆずせんせいは、うんうんってやさしくきいてくれた。

 

 

 

 

 

「あ‼︎なっちゃん‼︎」

「え?」

 

 

 

 

 

 なっちゃんはね、なっちゃんはねって、つぎはなっちゃんのなにをおしえてあげようっておもってたら、なっちゃんがきた。

 

 

 おむかえはいつもかーちゃんなのに。

 

 

 はじめて なっちゃんがきた。

 

 

 

 

 

 うれしくてうれしくて、きてくれたなっちゃんにぴょんってとびついた。

 

 

 

 

 

「なっちゃん‼︎」

「わり、おそくなった」

「かーちゃんは?」

「ん、うちにいる」

 

 

 

 

 

 ぽんぽんって ぼうしをかぶったあたまを、なっちゃんがしてくれて、なっちゃんだ なっちゃんだって、むぎゅむぎゅした。

 

 

 

 

 

「おかえりなさい。こんにちは」

「え、あ………」

「はじめまして。らいおんぐみのふくたんにん、かがや ゆずきです」

「え?あ、えっと、あの」

「はるくんのだいすきな なっちゃんって、ちょうどいまおしえてもらってました」

「ねー‼︎」

「ねー」

「え?ああ………あにの なつです」

 

 

 

 

 

 なっちゃんは もごもごしながら ゆずせんせいとちょっとはなして、それからおれはぴょんぴょんごあいさつで ゆずせんせいにたかーくぴょんぴょんしてもらった。

 

 

 

 

 

「はる、あいすかってやるからうちまであるけよ」

「えー、だっこ‼︎」

「だっこじゃねぇ、あるけ」

「おんぶ‼︎」

「おもいんだって、おまえ」

「いいじゃん‼︎だっこ‼︎おんぶ‼︎して‼︎」

「………ったく、しょうがねぇなあ」

「ほんとうになかよしなんだね、はるくん」

「うん‼︎」

 

 

 

 

 

 ほらって なっちゃんがしゃがんでくれて、おれはなっちゃんのせなかに わーいってのった。

 

 

 なっちゃんのおんぶはあったかくて、たかくてだいすき。

 

 

 

 

 

「じゃあね、はるくん。またあした」

「ゆずせんせい、ばいばーい」

「ばいばーい。ころばないようきをつけてね、なっちゃん。さようなら」

「え?あ………うん。さ、さようなら」

 

 

 

 

 

 だいすきな ゆずせんせいに だいすきな なっちゃん。

 

 

 いつも いじわるばかりしてくる らくも、すぐに ゆずせんせいをとっていっちゃう けいこちゃんもいなくて、ゆずせんせいは おれだけのゆずせんせいでうれしくて、ばーいばーいってずっとてをふった。

 

 

 

 

 

「はる、ちゃんとつかまれ。あるきにくいわ」

 

 

 

 

 

 はーいっていって なっちゃんのくびにむぎゅってしたら、なっちゃんが ぐえってすごいこえをだしたから おもしろかった。

 

 

 おもしろかったからなんかいもむぎゅってしてたら、くるしいわ‼︎っておこられた。

 

 

 

 

 

「はる」

 

 

 

 

 

 あいすをかってくれるっていうから たのしみにしてたのに、なっちゃんのせなかがあったかくてゆらゆらしててきもちよくて、おれもゆらゆらした。

 

 

 なっちゃんのこえもゆらゆらする。

 

 

 

 

 

「あしたから、おむかえおれがいくから」

 

 

 

 

 

 そしてつぎのひから、おれのおむかえは なっちゃんになったんだ。

 

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