幕間の春サイド 1
おれのなまえは ほった はる。
ひかりほいくえんのらいおんぐみ、6さい。
「じゃあはるくん、ぴょんぴょんぴょーんでさようなら」
「………」
「あれ、はるくんごあいさつは?」
かーちゃんがおむかえにきて、らいおんぐみの あおば こうめいせんせい。こうせんせいと てをつないで いつものごあいさつ。だけど、おれはしなかった。
なんで こうせんせいなんだよ。
「はる、ちゃんとあいさつしなきゃダメでしょ」
かーちゃんがこわいかおでいう。
こうせんせいが どうしたのかな、はるくんはって、おれのまえにすわった。
ゆずせんせいどこ。おれ、もうひとりのらいおんぐみのせんせい、かがや ゆずきせんせいと ぴょんぴょんごあいさつしたい。
むうううってしながら、ゆずせんせいをさがした。
さっきまでいたのに、どこいっちゃったの。
らいおんぐみになるまでおれは、ほいくえんがきらいだった。
うるさいし、きゅうしょくはまずいし、いじわるしてくるやつはいるし。
「あ、らくくーん、おかあさんきたよー」
こうせんせいが おれのまえにすわったままよんだ。
うわ、さいていだ。らくだって。
もう。なんでゆずせんせい いないんだよ。
ゆずせんせいがいてくれたら、らくといっしょにならずにすんだのに。
ゆずせんせいっておれは、なきそうになる。
らくが くつをはいてでてきた。
なきそうなおれをみてる。
らく。たけした らく。
おなじらいおんぐみの、いじわるなやつ。
いつもどっかから へんなむしやとかげをつかまえてきて、やるよっておれのずぼんのぽけっとにいれてくるんだ。
こないだなんか どろだんごをいれられて、あとでこっそりすてようっておもってたらころんでつぶれて ぽけっとのなかがぐちゃぐちゃになったんだ。
おにごっこのときは いつもおれをおいかけてくるし、かくれんぼはついてくるし、とにかくおれは らくがいるからほいくえんが だいきらいだったんだ。
はるに、らいおんぐみにゆずせんせいがくるまでは。
らいおんぐみのせんせいはふたり。
こうせんせいとゆずせんせい。
らいおんがついた あおいえぷろんがめちゃくちゃにあわない、ちょっとこわいこうせんせいと。
あたらしくはいってきた、めちゃくちゃかわいいゆずせんせい。
ゆずせんせいがきてから、おれはほいくえんがだいすきになった。
やさしいやさしい ゆずせんせい。
ぴあのがへたっぴな ゆずせんせい。
はるくん がんばってきゅうしょくたべたねーっていってほしくて、まずいきゅうしょくも がまんしてたべてる。
おれのゆめは ゆずせんせいとけっこんすること。
なのに。
「はるくん、らくくんもいっしょにごあいさつしよう?」
こうせんせいが おれとらくのてをもった。
らくはじっとおれをみてから、じぶんのぽけっとをごそごそした。
「やる」
そういって ぽけっとからだしたのは。
「うわああああああああああん‼︎」
「こら‼︎らく‼︎」
「いやああああああああっ」
たくさんの 『だんごむし』だった。
「はるくん、どうしたのー?」
「ゆずせんせいーーーーっ」
やっときた。
やっときてくれた。どこいってたの。おれもうかえるのに。
なきながらふりむいたら ゆずせんせいがいた。
いたけど。
「うわあああああああああん‼︎」
「だんごむしぐらいでなかないでよ、もう」
ゆずせんせいは、おなじらいおんぐみのけいこちゃんをだっこしていて、おれはよけいにかなしくなった。
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