第十二話え、これ休んでるって言える?

 フリッツは元休憩室に入ると、数ある木箱の中から、他の箱と比べるととても小さい箱を取り出した。そして鍛冶場の方に行き、旋盤の前に立つと、木箱の中にある小指の先よりもはるかに小さい素材を削り始めた。そして部品は少しずつ小さなピンになって行く。そして旋盤から外し、次の素材を削りを削る、という工程を繰り返す。他にも様々な部品を作っていく。特に歯車はひとつずつ歯を削り出していくため、時間があっという間に溶けて行くが、フリッツの手際の良さで溶けて行く時間に抗っていく。よく見るとその部品は3セット分あるようだ。そして昼時、丁度前世でいうところの12時になり、教会の鐘が鳴り響く。丁度手元の部品も削り出しが終わったようだ。作業の手を止め、伸びをする。そう、今作っているのは時計。0.01、0.001mm単位の精度で削り、組み立てていく。実はこの世界では、時の概念はあるが、時計は存在していないのである。理由は単純。教会が必ず正確な時を鐘で知らせるからである。実は教会の仕事の一つに、時報がある。時報を行う理由は神話によって説明されており、要約すると神が仕事を行う人々の為に時間と時報を与えた、とされている。しかし時報では細かい時間まではわからないので、時計を作ってみたという感じである。ちなみに各教会には大時計がある。そして大時計を作る時計職人も居るが、時計を持ち歩こうと考え付くものは居なかった。


★ここから先は本編関係なしに時計を組み立てるだけです。★


 そして全てのパーツが完成した。が、ここからである。先ず、天真とテンプを用意する。天真はテンプを固定するための軸で、テンプは、時計で言うところの一定のリズムで針を進めるために必要な最重要部品で、時計のメトロノームの様な役割をする。形は指輪の様になっており、そしてこれを回す為に中心を通るように棒が渡され、その真ん中に穴が開いている。そしてこのテンプの調整をする。周りに周りに何本か錘のネジがついている物もある。(というか多分こっちの方が一般的)まず、テンプを天真を使って板に固定して、天真の軸を倒してテンプを垂直な角度に正確に立てる。つまり車のタイヤのように固定する。そしてそれをそっと回す。どのくらいかというと、生き物の毛をその力で押しても毛が曲がっている事に気が付かないのでは無いかと思えるほど優しくそっとゆっくりと回す。そして重量の偏りがないか探す。そしてテンプをほんの少し削って重心を調整する。そして回して確認を繰り返す。そして各パーツの当たり(噛み合い)を追い込んで行く。組み立て、当たりを確認し、外して調整し、組み立てる。を、時計が完成するまで繰り返す。そして、荘厳な細工がなされた懐中時計が一つ、華奢な見た目の小さめの、しかし美しい細工がされた腕時計が一つ、そして先の物より一回り大きく、シンプルに纏められたデザインに機能美さえ感じさせる腕時計が一つの、計三つの腕時計が完成した。

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