間話4望んでいた未来
目が覚める。右手に温もりを感じて視線を向けると、1人の女の子があどけない顔で寝息を立てていた。(普通の寝巻きをキッチリ着ている)その無防備なほっぺをそっと突いてみる。すべすべとしていて、柔らかい手触りを指先に感じる。そんな些細なことに自分の表情が緩む。もっと触りたくて、ほっぺただけにとどまらず、彼女がよく手入れしている髪の毛にも手を伸ばす。手触り、肌触りを堪能し続ける。そんなことを続けていたら、いつの間にか時間が経っていたようで、彼女側に置いてあるスマホからアラームが響いた。それを、この時間が終わってしまうのがもったいないと感じながら、そっと手を戻し、少し待つと、彼女は、薄く、目を開けた。少しずつ彼女の意識が覚醒していく様子を観察しながら待っていると、彼女は体を起こした。そしてこちらをみると、少々寝ぼけた声で、
「おはよう、りょうくん」
「おはよう、ふきちゃん」
俺の名前は早乙女亮。まだ普通の大学生である。大学は一時期は防衛大学校か迷ったが、結局理工学系の大学に進学した。彼女持ちである。世の中の負け組共よ、これが勝ち組だ。彼女の名前は津田寿。身長150センチほど(本人談)と少々小柄(時々身長を気にしている)な背丈に背中の中ほどまでの黒髪ロングの持ち主の少女だ。性格は少々奥手気味だけど、お互いに気を遣い合える、とても良い関係を築いている。今は一緒に朝ごはんとお弁当を作っている。
「卵出してくれる?」
「まな板の上で常温に戻してあるよ」
「あっ、ありがとう。やっぱりだし巻き好き?」
「うん、とっても。っていうか知ってるからいつも入れてくれてるんでしょ?」
「えへへ。でもいつもだし巻き卵の準備だけは忘れないじゃん」
「だめ?」
「そんなことないけど」
「あっパセリ取って」
「はい。ここに置くよ?」
「ありがとう」
まずはお弁当を作って、それから朝食を作る。といってもパンに具材乗っけてトーストするだけだけど。こんなことを他愛無い会話をしながら進めていく。ちなみに彼女とは婚約と御両親様への挨拶までは済ませてあるが、そこから先は、まだまだこれからといった関係である。特にお義父さんからは娘が大学を卒業するまでは手を出すなと・オ・ハ・ナ・シ・をされた。(ちなみに元々手を出すつもりはなかった)その話を将来的な展望も交えながらしっかりと話したら、時々飲みに誘われる、良い関係になった。(毎回手を出していないか確認されているような気もするが)そして焼けたトーストを皿を乗せてリビングのテーブルの前に置く。ちなみに住んでいるのはリビングが広めの2LDK。お互いに物を広げるような趣味を持っていないので、リビングを居間にして、集中したい時はもう一つの部屋で勉強なりなんなりをする。ちなみに俺のデスクトップPCは寝室に置いてある。理由は勉強部屋に置くと勉強する時に集中できないからである。ちなみに着替えとかその他は寝室のクローゼットに全部いれてあるので着替えは基本的にそこで行う。(まぁ、本番を済ませていないだけで、その手前までは済ませてあるのでそこまで極端に意識することはないが)デスクトップPCはあくまで本体が寝室にあるだけで居間や勉強部屋でもノーパソで遠隔操作できるので彼女が着替え中でも問題はない。リビングには大きめの本棚二つがある以外は特に目立つものがなく、キッチリと整理整頓してある。
「よし、お弁当できた」
「こっちも朝ごはんの準備できたよ」
「わかった〜ちょっとまって」
2人でテーブルに隣り合って座ってから、
「「いただきます」」
と声をかけてから食べる。ちなみに元々椅子は向かい合うように座っていて、テーブルもそれ前提のものだったので、並んで座るには少々、いや結構手狭だったりする。でもくっついて食べれるというメリットがあるのでお互い気にしない。
「りょうくんの今日の帰りはいつぐらいになるの?」
「そんなに遅くはならないはずだよ。今日はお義父さんにも呼ばれてないし」
「ふふ。しょっちゅう呼ばれてるよね〜」
「やっぱり不安なんだろうね」
「でも最近は減ったよね」
「そうなんだよね、なんか義母さんから言われたみたい」
「なるほど」
今日の予定を交えた話を続ける。自分は食べるペースが速いので先に食べ終わったが、彼女が食べ終わるまで話しを続ける。そして食べ終わったら、片付けて、洗い物を彼女に任せて自分はほどほどに冷めたお弁当を保冷剤と一緒にそれぞれのお弁当のバックに詰める。
「先に部屋で着替えるね」
「は〜い」
ササっと着替える。男の着替えはとにかく速い。髪のセットとかも俺は基本しないのでめちゃくちゃ速い。そして彼女と入れ替わりで勉強部屋に行く。今日使う物や充電していたPCやら何やらをバッグに詰めていく。そうこうしているうちに彼女が部屋から出てきた。そして昨日のうちにほとんどの準備を終わらせていた彼女はモバイルバッテリーとイヤホンを充電器から外してリュックに入れるだけで準備が終わった。そのとき自分はまだ今日使うデータをデスクトップPCからインポートしていた。
「時間やべぇ〜」
「も〜昨日準備しとけばよかったじゃん」
「いや〜昨日の晩はこれの書き出しをしてたんだよね・・・」
「だからパソコン動いてたのね・・・」
「昨日書き出そうと思ったら4時間って表示されて諦めたね・・・」
少々彼女に呆れられてしまったが、やっとインポートが終わった。ちなみにパソコンは自作の防音ボックスに入っているので就寝の邪魔にはならないようにしてある。
「よし行こう!」
「はい」
ちなみに彼女とは通っている大学は異なるため、最寄駅から分岐するところまでは一緒に行く。俺は大学が郊外にあるため行きの中ほどまではめっちゃ混んでいるが、ある程度から通勤ラッシュとは反対方向の電車に乗ることになる。ちなみに彼女は乗り換え駅から3駅で大学に着く。朝からほぼ話を途切らさずに続けていたので話すことは尽きたけど、隣にいるだけでいいというやつである。そしてもうすぐ乗り換え駅に着く。
「じゃあ終わったら連絡するね」
「うん。じゃあまた後で」
そうして彼女とは別れて、自分の乗る列車の方のホームへと歩いた。そしてふと振り返り、彼女の後ろ姿を目に焼き付けた。
眩しい。天井が見える。目の周りがカピカピしている。また泣いていたようだ。右を見ても、左を見ても、誰もいない。そもそも部屋自体にベッドとローテーブルに目覚まし時計とスマートフォンと、一つの写真立てしかない。その写真、遺影になってしまったその写真を少し眺めると、スマホを開き、隠しフォルダに入っている1人の幼い少女の写真を開く。
コンコン。
「朝田様?起きてます?」
スマホの写真を慌ててすぐに隠す。
「あぁ、大津さんか。ちょっと待って」
「はいはい」
ベッドから起き上がると、寝巻きが乱れていないか確認してから、ドアの方に歩き、写真立てをもう一度見てから、ドアノブに手をかけた。
作者メモ
はい。ちょ〜ざっくりと解説を入れると、前半部分は朝田が単純にイチャイチャしてますが、あくまで朝田が自衛官への道を選ばなかった時のifストーリーです。そして最後の時の朝田の年齢は大体もう40代です。最後の朝田は、自衛官を選び、そして朝田の組織を組成し、生活をしている時期です。それ以外に話せそうなことは・・・あぁ、一応、まだ未登場の名前だけ出てるアリーニャ、クリス、レノアはこの時まだ生きている設定です。次はいつになるか・・・
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