第29話「次の停車駅は活動です。」

夏休みも終わり、9月がやってきた。9月になったというのに、まだまだ暑い日が続いている。

ここ最近、バンドの話がまた起きている。


「バンド組むって言うてたのはどうなったん?」


「せやな、それ私も気になってん」


「あ~あのみんなで組むってやつだよね?」


「あ~言ってたね」


「どうする?俺が言い出したのに忘れてた。翔太はどう思う?」


「いいと思うで。いいと思うけど、その作った曲はどこでどのように使うかを明確にしておいたほうがええんちゃうか?」


「確かにせやな…え、歌詞はお前が書いてくれるん?」


「うん、別にええで。あんなん愛してるとか、ちゅ!とかあなたの心奪う的なこと書いてたら、何とかなるわ!」


「いや、適当にもほどがるやろ!w」


「いや~だってさ?あんなん聞いてたらわかると思うけど、男性でも女性でも大体君のことがなんやかんやっていうてるやん!」


「でも、あながち翔太君の言ってることは間違ってないよね!」


「まあせやけど…」


「でもそこからどのようにして物語を広げていくかで、みんな差をつけてるんじゃないかな?」


「新家ええこというやん!」


「ま~ね!」


「ま~そういうことやから、お前頼んだで。」


「わかった。」


こうして、俺が歌詞を書くことになったが、はっきり言ってどんな歌詞を書いたらいいのだろうか…

漫画向け…はっきり言って俺は漫画なんて見たことない…

親は漫画家とライトノベル作家…

けど、その時の記憶は小さくてあまり覚えていない…

一度、DVDでも借りてみるか…

そう思いみゆがいつも見ているというアニメのDVDをみて、考えることにした。

そして、俺はこのDVDを見て驚いた。

まず、映像がすごい…

とてつもなく綺麗…

CGも使われていて、キャラクターそのものに艶が出ている。

そして、キャラクターがとてつもなくかわいい…

どうなってんだ…


「そら、こんなキャラと付き合えたら、人生勝ち組中の勝ち組やん…」


思わず口から洩れてしまった…

そして、声優さんもすごい…

みんな歌がうまい…

これを俺が作るのかと思うと、少し心が重くなった。

でも、みゆのために作ってやらないとな…

そう思った。

その日からというものの俺は考えに考えた。


「私、ドラムやる!!」


「まき昔からドラムやってたもんな~」


「真奈は?」


「じゃあ、私はギターにするわ。なおは?」


「じ、じゃあ私はベースで…」


「じゃあ俺もギターいこうかな」


「あ、池田がもう一人のギターか。どっちがメイン弾く?」


「そら、河北やろ~!主役はお前らなんやから」


「そうか…堀溝は?」


「うん?俺は…じゃあキーボードで」


「え、でもキーボードってあんまり目立てへんくない?」


「それでええねん!目立たないけど裏にはしっかりいてるそれがええんや!」


「ふ~んせっかくなら目立つやればいいのに…」


これには作戦があった。

以前香川さんにあった時、驚くことを聞いたからだ…


「翔太君…あくまで推測の話なんだけどね、君の両親を殺した犯人…

どうも一人じゃないみたいだ。」


「え、それどういう…でも俺たちのことを襲ったのは一人でしたよ…」


「ああ。指示役がいたんだよ。

あの当時同じ出版社で作品を出版していた人間の中に…」


「え…そいつは君の両親が作った作品の中に自分が作ってる作品と似ていると思ったらしい…」


「つまり…僕の親が盗作したってことですか?」


「いや、それはあり得ない…

だって、その犯人は一切出版社に顔を出さない人間だったんだ。」


「なるほど…でも作品は別に買えば見れることはできますよね?」


「いや…その作品は未発表作品だったんだ。だから、君らの両親が盗作したのは考え難い…」


「まあ、だって、その作品は外に持ち出されてないんですもんね…」


「そうさ。」


「じゃあ僕の親は…そいつの勝手な勘違いで殺されたんですか?」


「それだけじゃあない…君は君の親がどうやって知り合ったか知ってるかい?」


「え、売れない作家同士が知り合って…」


「やっぱり知らないのか…」


「え、ほかにもあるんですか?」


「実は、君の母親であるあかねはもともとほかの男と付き合ってたんだ。」


「え…そうなんですか?」


「そう。あかねは高校生の時に作家としてデビューした。

あの時から俺はあかねのマネージャーであかねとよく話していた。

その時あかねは彼氏がいることも話してくれた。」


「彼氏がいたんですね…けど、なぜ父と?」


「あかねの彼氏はよくあかねに手を挙げていたんだ。」


「お母さんに?」


「そう。あいつも漫画家で、なかなか伸びなかった。その腹いせを、彼女である、あかねに暴力をふるっていた。そんな時に圭太とあかねは出会ったんだ。

最初はお互い売れない作家同士で、話は盛り上がったらしい。そして、あかねが圭太にこのことを話して、圭太の家に住むことになった。」


「それが父との出会いなんですね。」


「あかねは、当時付き合っていたやつに気づかれずに引っ越しをした。夜逃げといっても過言ではない。」


「母は一人暮らしだったんですか?」


「一応は…けど、毎日決まった時間にあいつの家に来いと言われていて、行かなければ何されるかわからないから、毎日行っていた。だが、その日から、あかねは彼のところに行かなくなった。」


「そのあとはどうなったんですか?」


「当たり前だが、電話がずっとかかってくる。でも、あかねの携帯は、俺が預かっていたから、全くでないに決まってる。だから永遠と電話がかかってきたんだ。

でも、圭太の家をそいつは知らない。

だから、どこにいるかわからないし、きっと、探しに来ることはないだろうと思っていた。だけどそれは違った。」


「探しに来たんですか?」


「びっくりしたよ…当時、あのヒット作と言われた、漫画を描いていてその時3人で、打ち合わせをしていたんだ。

そして、俺が帰る時に扉を開けたら、目の前にいた…

そのあと俺があいつを止め、何とか家に帰らせた。

そしてあの頃ストーカー規制法ができたてのころで、すぐに警察に言いに行ったけど、警察は人が死なないと動かない…

その当時も動いてくれなかった。

そんな時に、君をあかねが妊娠したんだ。」


「え、そんな時に妊娠したんですか?」


「確かそれが10月の下旬くらいにわかったんだ。」


「そこからどうしたんですか?僕の両親は結婚したんですか?」


「いや、二人はその前から結婚していた。書類上はな。」


「なるほど…」


「そこから、あかねは君のことを生むと決めて、引っ越しをしたんだ。そして心機一転新たな生活を始めた。そこから数年間は事件が起きなかったんだけどな。」


「でも、なんで新たに犯人がいるということが分かったんですか?」


「この前、ある一人の刑事から電話があったんだ。」


「刑事からですか?また、突然…もう8年9年前のことですよ?」


「その刑事が話してくれてたんだが、その刑事は君の両親が殺されたことがきっかけで、刑事になると決めたそうなんだ。」


「え、僕の両親の影響ですか?でもそれなら漫画家かラノベ作家になるのが普通じゃありません?」


「彼もそうだったみたいなんだが、両親が殺されてから、その犯人を殺してやりたいと思ったそうだ。だが、それをすると二人が苦しむと思ったため、この手で絶対に捕まえると決めたそうだ。」


「なるほど…」


「きっとあいつは、翔太君も殺しに来るはずだ。相手からしたら、君は浮気相手の息子…存在すら消したいはずだ。」


「まあそうなるでしょうね…」


「そして今やっていることを考えてみろ…ラノベ作家だぞ…きっとまた作品をパクったなどのいちゃもんをつけるに決まってる。それも…」


「みゆは…お兄ちゃんの妹…」


「きっとあの兄の言った言葉も聞いていたはずだ。

そして、兄は君の両親の近くで仕事をしていた。

だから、妹にこの話をしていると思い込んで、またパクられたといわれるかもしれない。ってなるとその子も狙われることになる。」


「じゃあ、みゆがお兄ちゃんの妹ってばれないようにするってことが、大切。」


「そして翔太君は、両親によく似ている。本当にイケメンだ。」


「そんなことないですよ~!」


「地味に喜んでるじゃねえか!」


「ええ~!いわれなくてもわかってますって~!」


「地味にうざいな…まあとにかく、君がその子と活動してると、ばれる可能性が高い…だから、君はメディアに顔を出さないほうがいい。そして、全員フルネームを使わないほうがいい。」


「それはそうしてます。下の名前だけ使うようにしてます。」


「まあ、それがいいな。また何かあれば君に話に来るよ。電話などで話して、電波ジャックで聞かれたら、大変だ。」


「そうですね。また読んでいただいたら、香川さんや刑事さんのとこにも行きますから。」


「わかった。くれぐれもみんなにはばれないようにな。どこから情報が洩れるかわからないから。悪気がなくても…」


「そうですね。わかりました。」


これを香川さんに言われたから、俺は芸能界に出ない。ただの一般人。この肩書を使い続ける。

今の時代は誰もが簡単に誰かの推しになれる時代…

動画投稿サイトに動画を投稿する。それが仮にすごく美人な女性としよう。(みゆみたいな)

するとすぐにファンがつく。いい人ばかりならいいが、コメントを見たらわかる通り、少しやばいコメントもあったりする。

また、少し動画に映り込んだものを見て、住所を特定し、そこからストーカー被害に発展しかねない…

ストーカーは何を考えているかわからない…

あかねのことがあるから、俺はそれをよく知っている。

あいつらは、殺して自分も死ぬと一生一緒に過ごせると思い込んでいる…

そんな人間から、俺はみゆを守る…トップに立つ人間こそ狙われやすいからだ…


「おい、聞いてる?」


「あ、あ~ごめん…なんて?」


「もう~聞いとけよ!とりあえず曲ができないと何もできないよねってなったから、とりあえず作詞よろしく。」


「あ~わかった」


これから始まる、活動…みんなを守っていけるんだろうか…



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次の停車駅は萱島です。 @nekomimiraim

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