第26話「次の停車駅はお兄ちゃんと彼女です。」
6月6日俺は、東京都で生まれた。
俺の親は、天才コンビと言われた、漫画家とラノベ作家だった。
この二人は、それぞれ漫画家とラノベ作家と業種が全く違った。
だが、ある日二人は出版社で出会ったらしい。お互い芽が出ないことから気が合い、二人は手を組むことになった。
そこからというものの、二人は瞬く間に有名になり名前を知らない人はいなくなった。
そんな中俺を授かった二人は、俺の育児に専念するため、1年ほど育休を取った。
無事に出産し、俺のことをすごくかわいがっていたという。
一人目の子供でもあるから、この気持ちはわからないでもない。
そのこともあってか、編集者の人に仕事の頻度を落とすように話したという。
だが全く仕事をしていないわけではなかった。
イベントには出演するし、作品は期間は開くもののきっちりと出していた。
ただ、毎週出していた作品を2カ月に一度出す頻度に落としたくらいだ。
確かに週刊の人間がここまで、頻度を落とすとやっぱり世の人は驚くかもしれない。
だから、子供ができたことも公表したし、頻度を落とすことも先に伝えた。
俺も二人の愛情を受け数すくと成長していた。
二人は、俺のことをすごくかわいがってくれた。
顔がばれてただでさえ外に出るのが大変なのに、変装して遊園地に連れて行ってくれたり、キャンプにも連れて行ってくれた。
そんなある日大阪からある一人の男子がやってきた。
両親はその子を温かく受け入れた。
両親はその子を現場で仕事をさせる新しい仲間だと話した。
その子は俺にもすごく優しく接してくれてとても仲がよく、「お兄ちゃん」と呼んでいた。
その子は今でも誰かはわかっていないが、その人は良く自分の妹の話をしていた。
「翔太君にはちょっと難しいかもやけど、俺には妹がおってな~?その妹がめっちゃ可愛いんよ~!」
「そうなんですか?」
「うん!でその妹には夢があるらしいねん!」
「それはすごい!どんな夢ですか?」
「なんか漫画家になりたいねんて!自分に憧れてるみたい!」
「いいですね!」
「だから俺も早く有名になって、妹の宣伝をせなあかんねん!」
「そうですね!頑張ってください!」
「翔太君には夢はないの?」
「僕は電車が好きなので、電車関係の仕事に就きたいなと考えています!」
「いいね!かっこいいやん!じゃあお互い頑張らなあかんな!」
「はい!」
その子はすごく真面目で夢に向かて努力を重ねていた。
そんな夢を追いかけている、彼を心の底から応援したくなった。
とてもかっこよかったから。
だが、そんなある日事件が起こった。
この日も作業をしていた時だった。
そんな時事務所のインターホンが鳴り、たまたま創立記念日で学校が休みだった俺が扉を開けた。
そこには包丁を持った人間がたっていた。
するとそいつは
「お前が生まれてからだよ…お前が生まれたせいで、作品が出なくったんだ…
クソガキ!!死ね!!」
その時俺は死んだと思った。だが目の前にいたのは、俺に夢について語ってくれた男の子だった。
「誰だよお前!!邪魔すんじゃね!!」
「お前こそ誰だ!!」
「どうしたん?騒がしい…翔太!お兄ちゃん!!」
「先生…危ない…」
「みんな殺してやる!!お前もお前で、子供産んでないで絵をかけよ!!」
「やめろ!!」
「あんた!!」
「大丈夫か…あかね…」
「圭太くん!!」
「あかね…逃げろ…」
「け、警察…」
一気に3人も刺したあいつの顔を今でも覚えてる。
鮮明に一生忘れることはないだろう。
「お前らは俺に人生をつぶされたと思うか?こんなのでつぶれちゃいねよ!!俺は、お前らの作品で何とか持ちこたえていた…だがガキを生んでからお前らは仕事をないがしろにした!そのせいで俺は楽しみにしていたものがなくなり、ストレスが溜まって人生がつぶれた!!お前らのせいでな!!」
「それは申し訳ない…」
「は?」
「みんなに楽しみや夢を与える仕事をしているのに、そこまでストレスを与えてしまったなんて…でも少し言い訳をさせてください…
僕らは、皆さんに楽しく読んでもらえる作品を頑張って作っていました…
だから翔太君を育てながら今までと同じ頻度で、仕事を続けるといつか疲れてくる。そして体調を崩す…そうなると、もう作品を出せなくなるかもしれない…
そう思った二人は、それを防ぐために休みを取りながら、みんなに楽しい作品を届けるため頑張っていました。
ストレスがたまると、楽しいものを届けられない…」
「違う…違うだろ…」
「ほんとです…だから、頻度は落ちたものの、長期休みを取ることはなかった…」
「そんな…」
「きっと二人はあなたのような人のことをわかって、多少無理をしつつ、支えになるようにと作品を書いていたんだと思いますよ…」
「そんな…」
男はそういうと走り去った
「お兄ちゃん!!」
「あ~懐かしいな~もう一度妹にもそう言ってもらいたかった…」
「ダメ!死んじゃダメ!!」
「翔太君…もう無理やな…あ、せや警察呼ばな~覚えときや…
こういう時は、携帯電話で「110、ひゃくとうばん」するねんで…」
「お兄ちゃん…」
「よし、これでお巡りさん来るわ…よかったな~」
「ダメ!!」
「翔太君…これだけ言わせて…もし大阪に…大阪に行くことがあったら、「みゆ」って名前のマンガ好きの女の子に会ってほしい…その子の夢を一緒に応援してあげてほしい…
その子はちょっと偉そうかもしれない…けど中身はすごく弱い子ですぐにあきらめてしまう…そんな彼女を諦めさせないように…そばで見守ってお兄ちゃんの夢を応援して…」
彼はそう言い残すとつながった電話に助けてと言いこの世を去った。
警察より先に、編集担当の香川さんが来て、もう一度警察に通報した。
8歳の俺にとっては衝撃的な事実で、ショックでしかなかった。
そこから、母の祖母が大阪にいるので、大阪でこれからを過ごすことになった。
東京で慣れていたのもあるが、祖母が大阪から送ってくれていた阪慶の電車のおもちゃの場所と言われ、気を落ち着かせることが出来た。
世の中では、強い喪失感に襲われた。
天才的なペアあかけいが失われたのだから…事務所には全世界から悲しむ声が届いた。
もちろん作品は打ち切り。
警視庁が総力を挙げて探した犯人は見つからず、時効が迫っていた。
だが、殺人に対する時効が撤廃され、犯人は見つかり次第捕まえるということになった。
でも、8年前の事件誰も捜査なんかしちゃいない。
ばあちゃんは幼い俺を精一杯の愛情をこめて育ててくれ、よく阪慶のイベントにも連れて行ってくれた。
ばあちゃんに還元できるのは勉強することだと思って、勉強ばかりしていた、小学生のころ…お兄ちゃんとの約束は忘れていなかった。
同じ小学校に高柳みゆという女子はいたが、とてもやさしそうに見えたので違うと思った。
だが、中学生に上がったころ、お兄ちゃんの苗字が高柳であったことがわかり、お兄ちゃんの妹はあいつかもしれないと思った。でも偉そうではない。とてもやさしそうだ。ならばと思い、少し強く当たった。強く当たると、本性を出すかもしれない。
俺の予想は当たった。
お兄ちゃんが話していた、性格とばっちり合った。
どうやら、彼女はまだ夢をあきらめていなった。
だが、どのようにして俺がみゆに近づこう?
彼女はすごくモテモテだった。
だが中2の時の彼氏がキーになった。
その彼氏はみゆのことを襲おうとしたらしい。
みゆは何とかそこから逃れたが、彼氏が勝手に逆上していた。
そこから、みゆはその彼氏にあることないことを言われ、友達も失い精神的に追い込まれていた。
ある日みゆは学校に来なかった。
そして一つおかしなことがあった。
それは、学校の先生宛に欠席の連絡が来てないことだった。
俺はその日の帰りお兄ちゃんの言葉を思い出した。
みゆが「弱い子だ」ということ
俺はなぜかわからないが、萱島に向かって走り始めた。
NRの駅も近いが、あれは寝屋川市内ではない。
そう思い、萱島に走った。
とれたボタンの替えを買ったおつり150円を駅の入場券に使った。
そして、頭の中で時刻表を思い出し、ダイヤグラムに当てはめた。
この時間萱島を通過するのは、出町柳を14時ちょうどに発車する、B1401A列車。 8000系が担当する、特急淀屋橋行きだった。
この特急は寝屋川市駅を通過後、寝屋川信号所という、萱島と寝屋川市駅の間にある車庫のポイントを通過する。この時複々線となり、前を妨害する電車がいなくなる。この時から特急は減速せず、時速90km/hで通過する。
残された時間は…25秒…改札を駆け上がった。
自殺者は大体ホーム最後尾に立つ。
だが、萱島は違う。
萱島は、ホーム始まりはカーブになっている。
そして萱島を過ぎると、制限速度が変わる。
このことからホーム途中で加速する。走った。とにかく走った。
特急は予定通り萱島を通過した。
俺が車で、飛び込まなくてよかったと思った。
つらい気持ちは痛いほどわかった。
だから、俺はみゆにこう言った。
「生きたくても生きれない人もいる」
母さんと父さんはもっと作品を書きたかったはず…
お兄ちゃんも…
でもまだみゆは書くことが出来る。
俺はその可能性をつぶしてほしくなかった。
「俺がみゆの唯一の仲間になる。だから死ぬな。全世界のに人間が、お前の敵になろうとも、俺はお前の見方になるから。
だから夢をあきらめるなよ…約束したやろ…」
こういうとみゆは黙ってうなずいた。
それからというものの、俺はみゆの誤解を解いて回った。
元彼にも言い聞かせた。
みゆの誤解は解け、その後はかわいらしいせいか、再び男子に告られるようになった。
だが、すべて「好きな人がいるから」って言って断っていた。
それは誰か俺もわからない。
だが、俺的には好きな人ができるくらい、強くなったんだなと感じた。
今までは男子に告られなければ、付き合えないほどの弱い子だったのに…
とりあえず、俺はみゆを陰で支えようと思った。
それがみゆにとって、いや好きな人にとって、それが作品作りで一番いい環境だと思ったからである。
そこから一年後、今俺は好きな人の夢をそばで応援している。
ほかの男子といたら、彼女でもないのに嫉妬もする。だが、それはみゆを締め付ける原因になる。
ほんとはもっと甘えたい。
だが、みゆにストレスなく作品を作ってもらいたい。だからそばで支えている。
「おい。何してるん?」
「あ、あ~ごめん」
「えっと~パンケーキで!」
「俺は…ナポリタンで」
「かしこまりました。」
「でも、どうしたん?急にランチやなんて。」
「まあ東京にも来たし、こういうのもいかなって思ってさ。」
「ま、それもせやな~」
果たして、お兄ちゃんの妹はみゆなのか…
それは今でもわからない。
でも、違う人であっても俺はみゆのことが好きだ。
だって、彼女を見てるとあのお兄ちゃんを思い出すからだ。
「なあ、大阪帰ったらさ…二人でどっか行こっか…」
「え?なんで?急に…」
「いつも、仕事してばっからやしさ…たまには…電車で…いやか」
「行く!!絶対行く!!」
「なんやなんや?ま、いこか!
なんか…お兄ちゃんに似てるな…」
「え?みゆって一人っ子じゃないん?」
「ちゃうよ!昔お兄ちゃんがおってん…めっちゃ優しくて…お前みたいに私の夢を応援してくれてんけどな…事故で死んじゃってん…」
「そうなんや…それは…可愛そうやな…でもその人みたいに俺もなれたらええな!」
「なれるか!お前と比べたら、お兄ちゃんに失礼やわ!!」
「は~?」
「でも、応援してくれるのはお兄ちゃんと同じやけどな」
俺は今がとても幸せなのかもしれない
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