第25話「次の停車駅はお兄ちゃんと彼です。」

私にはお兄ちゃんがいた。

10歳違いのお兄ちゃんがいた。

お兄ちゃんは大きな夢を追いかけていた。

それは漫画家になること。お兄ちゃんの漫画は、とても面白かった。まだ、難しい言葉はわからず、ひらがなを少し読めるくらいの私でも、面白かった。

お兄ちゃんはとっても優しくって、いつも私のお世話をしてくれた。

お兄ちゃんは私にいつもこういっていた。


「なあ、みゆ?みゆには「夢」ってあるか?」


「夢?なにそれ?」


「夢はまだわからないか~!夢はな?大人になりたいものをいうねん!例えば、みゆは大人になったら何をしたい?」


「お兄ちゃん!お兄ちゃんになりたい!」


「ははは!」


「え、なんで笑ったの~?みゆ、本当にお兄ちゃんになりたいもん!!」


「みゆは、女の子だから、お兄ちゃんにはなれないけど、お姉ちゃんにはなれるで?だから、お姉ちゃんになたらいいんちゃうか?」


「うん!わかった!お姉ちゃんになる!」


「でも、どんなお姉ちゃんになるんや?ママとパパみたいに、お仕事をしないといけなくなるで?」


「う~ん…じゃあお兄ちゃんみたいな、漫画家になりたい!!」


「お!!よく言ったな!!さすが、俺の妹!じゃあお兄ちゃんもっと有名になって、みゆが漫画を出したときに、お兄ちゃんがみんなにおすすめするわ!」


「おすすめ?」


「おすすめってのはな?みんなに、これ面白いですよ~!っていうことやねん!みゆも、お兄ちゃんの漫画みんなにお話ししてるやろ~?」


「うん!してる!」


「それがおすすめや~!」


「そうなんや!」


「だから、お兄ちゃんもみゆが漫画家になったら、みんなにおすすめするな~!」


「うん!」


お兄ちゃんは、才能があり、漫画家の道を駆け上がっていった。そしてある日、こんな話が上がる。


「父さん、母さん。この話どう思う?」


「私は、何とも言えへんな~お父さんは?」


「俺は、一回一緒にこの人の場所に行って一緒にお話をしたいと思う。本当にこいつの才能を認めてくれて、育ててくれるんやろうかって聞きたいし。」


お兄ちゃんは、才能が認められ、当時すごかったラノベと漫画作家から、うちで、修行しないか?という話が来た。

そこからお兄ちゃんは東京にいき、作家の下で働くことになった。

その反面自分の漫画を描いていた。

だが、そんなある日…

お兄ちゃんは亡くなった。私が小学4年生でお兄ちゃんが20歳の時だった。

親からは交通事故と聞いたが、夜中に話している二人の話を聞いてしまった。

お兄ちゃんは殺されたという…親に直接聞いてはいないが、お兄ちゃんが殺されたことは間違いない。

でもなんで…お兄ちゃんは殺されたのか…

16歳になった今でもその理由がわからない。

その日から、お母さんは厳しくなった。

昔はお兄ちゃんと同じ、漫画家を目指していたら、応援してくれたが、今は違う。勉強ができない私を怒ったり、勉強ができないならせめていい就職先をと工業高校に入れた。

なぜこうなってしまったのか…わからない…

けどある日、私が小学校5年生のころ、一通の手紙が届いた。あて先は不明だった。

内容は


「みゆ。元気か?お兄ちゃん、みゆの漫画おすすめできひんくってごめんな。お兄ちゃん遠くからやけど、みゆのこと見守ってるから、夢は諦めたらあかんで!絶対に!絶対に!夢は諦めない限り、1%でも叶う確率は残ってるんやから!」


お兄ちゃんからだった。

この手紙が届いた次の日、翔太が話しかけてきた。

私の書いている漫画を見てこう言った。


「何書いてんの?漫画?そんなん売れると思ってるん?無理やで。お前文へたやし、作文もめちゃくちゃ。俺みたいに電車の運転手になれば、将来安定やで~」


この言葉にめっちゃ腹が立った。何も知らないくせに。

だけど、あいつの言っていることは、間違っていない。

あいつはずっと電車の図鑑を見ていた。

図鑑をみて、電車に詳しくなったりしていた。

それを見て私は、本を読めば、文章がきちんとするんじゃないか。と。

この日から、ずっと本を読んだ。でも漫画も読みたかった。そのどっちもを満たしている、ライトノベルに出会ってからは、ずっとライトノベルを読んでいる。そして読んでいくうちに私は、お兄ちゃんは漫画家を目指していたならば、私はラノベ作家を目指そうと。

確かに、あまり絵はうまくなかった。

そんなある日、保育園の頃に仲の良かった、友達に会った。その友達に今私がやっていることを話した。

すると驚きのことにみんながライトノベルを読んでいて、話をすぐに分かってくれた。

この時、日本中をあっと言わせるライトノベルが出た、ということがライトノベルを読む後押しになったのではないだろうか。

その日から、よくこの話をして、ラノベを作るなら、私はこの役割っていう話をし始めた。


そして中学になったころ、私は実際にライトノベルを書いてみた。

だが、恥ずかしくて、みんなには見せれなかった。

だがそんなある日、あの男に見られてしまった。


「うわ、まだ書いてたん?いい加減現実見ろよ」


「うるさい。堀溝には関係ないやろ?」


「高柳がずっと文章書いているの俺には理解できんわ。」


「お前に理解されんくてもいいし。」


「あ、そう。でもまあ文章書くのうまくなってきてるやん。」


「は?何急に。上からでめっちゃむかつくねんけど。」


「ほめたってんねん。感謝しろ。」


「は~?お前」


「そんなに、頑張ってるならあきらめんなよ。」


「お前に言われんくてもあきらめへんわ!」


「あ、そう。その話誰にも見せれんかったくせに。」


「こ、これは…」


「ほら、自信ない。お前はいっつもそうや。発表するときももじもじしてさ。」


「なんなん。お前。」


「まあ、その姿がかわいいから、彼氏すぐ出来んねんやろうな。」


「なに?嫉妬してるん?」


「ちゃうし、お前なんかの彼女に誰がなるかあーほ。」


「うざ…」


「うざくて結構こけこっこー合わせて結構こけこっこー!」


「どかいってーや!」


「ばいばーい!」


「なんなん。ほんまに。」


「みゆちゃん。」


「あ、そうた…」


「どうしたん?何んかあいつにいわれた?」


「うん。でもいいよ。ほっとけあんな奴なんか。」


「そうか。そういえば聞きたいんやけどさ、みゆちゃんってなんか、漫画書いてるん?この前おうちにお邪魔した時、なんか絵というかいっぱい文字の書いたものがあって、なんか漫画ぽかったからさ~」


「あ、見られちゃったか~実はそうやねん~!ライトノベルってやつを書いてるねんけど~知ってる?」


「知ってるよ!漫画と小説を掛け合わせたやつやんな?」


「そうそう!知ってるんや!じゃあ今度見に来てみる?」


「見に行く!!」


この時は普通の彼氏…優しい彼氏…そう思ってた。

だが…


「みゆちゃんが、誘ったんじゃん…別に中学で初めてを経験するのもいいと思うで…」


「ちょっと…これと本物は違うやん!」


「みゆちゃん欲求が溜ってるからこんなにエッチな話書いてるんじゃないん?」


彼は、私の家に行けたことに調子に乗り、私のことを襲おうとした。初めて来たときに私が書いていた、本を見て欲情していたらしい。

私は何とかこの場面を乗り切ったが、次の日学校に行くと私の居場所はなかった。

彼が逆ギレし、私のあらぬうわさを流していた。

railでは毎日私を脅してきたり、学校では本を書いている馬鹿だと話をしていた。

私はこの時死にたくなった。

気づいたら私は萱島にいた。

もうすぐ特急が通過するらしい。

あ~これに飛び込むと死ぬな…

あ、楽になれる。

そう思った時私は堀溝翔太に腕をつかまれていた。


「おい。聞こえんかったんか。「電車が通過します。ご注意ください」っていう放送が。」


「…」


「命を粗末にするな!!生きたくても、生きれない人もおるんやぞ!!」


「そんなん!お前には私の気持ちがわからんから言えるんや!」


「わかる!誰もお前の実力を認めてくれへんからやろ?彼氏には裏切られ、学校での居場所はない…」


「…」


「お前は悔しくないんか?彼氏にここまでされて、濡れ衣まで着せられてるんやぞ?今ここで死ぬと、お前は彼氏という悪に負けたことになるんや!やってもいないことをやったと認めることになるんや!そんなんで、お前はいいんか?俺は彼氏より、そんなお前のほうが許せない…」


「でも、私のことなんか誰が助けてくれるん!!」


「俺がいてる。」


「は~?」


「俺は、お前の見方や。世界の全員がお前の敵になったとしても、俺はお前の見方や。たった一人お前の見方になる。だから…だから、死ぬな…」


「ほ、堀溝…」


そこから、翔太は私のことを守ってくれた。常に横にいて、私は何もしていないのに…

私の夢を応援してくれる、たった一人の応援者。

彼は、私が何をしているかは知らない。おそらく、何をしているかも知らないはず…

だけど彼は、私にこう言った。


「今、何してるか知らんけど、力になれるならなるで」


そういった時私は、みんなでラノベを作ろうと思った。

だから、あの日私は彼を誘った。

彼は、こんな私でも支えてくれる…

私の大事なスポンサーさん


「おーい」


「え?」


「どうしたんや?ぼーっとして」


「なんもない!私ばっか見んな!気持ち悪い!」


「へいへい。みんなの前みたいにかわいくしてくれたらいいのに…」


「お前なんかに誰がするか!あーほ!」


「こいつー!うざいなー!」


「まあ、でも一番隣にいるのはお前やけどな!」


「…なんやねん…」


「な~に?照れてるん?あほちゃう?あんたが私みたいな女子と付き合うとか無理やで?」


「は~?お前なんかと誰が付き合うか!死んでもごめんやわ!!」


彼ともっと発展した関係になりたい。だけど、今のままが一番いいのかもしれない。

大切な人だから嫌いになりたくない…

お兄ちゃんみたいな人だから。


「透君、見てあれ!」


「お、またやってんなー!」


「二人いつになったら、付き合うんかな?」


「さ~?でももうカップルみたいなもんやん!」


「ホンマやね~」




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