第29話 A第一の人生
A第一の人生
あの人一人じゃ重過ぎる
彼女と二人も重過ぎる
彼にあいつにいっぱい来た
いつの間にやら大きな輪だ
花鳥風月:暇だぁー
獣の王様:暇だぁー
花鳥風月:おっ、獣ちゃんこんちゃ
獣の王様:花さんこんちゃ
花鳥風月:獣ちゃん仕事休み?
獣の王様:うーん。学校休みかな
花鳥風月:そっかww学校だったww
獣の王様:花さんは休みなの?
花鳥風月:ああ、うん。そんな感じ
ロビンビン:ハロ
花鳥風月:ロビンさんこんちゃー
獣の王様:ロビンさんこんにちは!!
ロビンビン:休憩中に覗いてみた
花鳥風月:ロビンさんは休憩中か
獣の王様:お仕事お疲れ様でーす
ロビンビン:なんか最近ジュンさんチャット来ないね
花鳥風月:確かに言われてみればそうだね
獣の王様:この前忙しくなるって言ってたよ
ロビンビン:そうなんだ。飽きたわけじゃないのね
花鳥風月:良かった良かった
獣の王様:寂しいよねー
ロビンビン:まあまた落ち着いたら来るでしょ
花鳥風月:だね
ロビンビン:じゃあ仕事戻りまーす
花鳥風月:いってらー
獣の王様:いってらっしゃい!!
獣の王様:ねえ、花さん
花鳥風月:んっ?何?
獣の王様:最近課金率落ちました?別にいいんですけど、気になって
花鳥風月:あー、うん。控えめにしている
花鳥風月:お金ないから
獣の王様:飽きたわけじゃなく?
花鳥風月:うんww飽きてないよww
獣の王様:良かった♪
言われて初めて気付いた。確かに最近課金率低めだ。まあ、入院して働いてないからお金ないってのもあると思う。ただ、確かにそれを差し引いても課金する気は前よりも少ないのは事実だ。なんでだろ、不思議なもんだ。まあ、たぶん理由は色々あるんだろうけど、所詮ゲームのことなので深く考えない。飽きてるつもりはないのは確かだ。
それにしてもジュンちゃんのことちょっと心配。平日はともかく、土日も全然顔出さないから、普通に心配。仕事に忙殺されてないかな。というかジュンちゃんって純ちゃんみたい。あ、響きが一緒だからだよ。まさか同じ人だなんて思ってないよ。さすがにそれがありえないことくらいわかるよ、私だって・ただ、ジュンちゃんが私が入院した辺りから忙しくなって、チャット来なくなったなって思って。意外と身の回りの人かもとか、ね。ほら、入院生活って暇じゃない。だから考えることも多くてそんなことも考えるわけさ。まさか、ねえ……。
「花君。説教タイムだ」
先生が一八時前に来て開口一番にそんなことを言い始めた。
「むっ、何か悪いことしましたか、私」
思いつくことが無いわけではないが。
「純君に聞いたよ。無理矢理連れ込んで犯したそうだな」
すごい言われようである。
「ちょっ、連れ込んだとか犯したとか、カフェで会ってちょっと話しただけだよ。久しぶりに会ったから、体調も悪くなかったし」
「関係ない。記憶が急激に戻る危険性については十分説明したはずだが」
「うん。わかってますよ。でも大丈夫だったし、良いじゃないですか」
「良くない。純君と今度こそ今生の別れになるんだぞ」
「……それは嫌です」
「なら、反省しなさい。今後お互い見かけても一切関わらないと誓いなさい。因みに純君は誓ったからね」
純ちゃんも怒られたか。まあ当然だよね……。
「はい……。わかりました」
ちょっとやきもきするなぁー。先生に聞いてみよっかな。当たったらスカッとするし。
「ねぇ、先生。質問していいですか」
「んっ、何だい」
「前携帯でゲームしてるって言ってたじゃないですか。私が」
「うん。ああ、あなたの中国娘だっけ」
「そうそうそれ。さすが先生良く憶えてるー」
ほーんと、良く憶えてるんだ。情報その一。
「それがどうしたのかな」
「ジュンちゃんっていたじゃん」
「うん。あー、新しくチームに入ったとかの」
先生の訝しい顔発見。情報その二。
「そうそう。最近思うんだよね。あの子が純ちゃんと同じだったらなって」
さあ、直接攻撃。どうだ。
「っ。プハハハハハ。何を言ってるんだ君は。そんな偶然あるわけ無いだろ」
今一瞬詰まったよね。ね。情報その三。
「いやさあ。私が入院してからゲームのジュンちゃんもなかなか来なくなってね。シナジー感じるなって思って」
「ほぅ、そんな偶然あるんだな。ま、仕事が忙しいのだろう。あるいは飽きたとかじゃないかな」
偶然だと言ったり、無いと言ったり。情報その四。
「うん。仕事は忙しいって言ってった」
「じゃあその通りじゃないか」
なんかテンション高めな気がする。情報その五。
「でも別人なら連絡取っても良いよね」
「っ、いや、忙しいなら迷惑じゃないかな」
今、ちょー変な詰まり方した。情報その六。
そもそも先生が迷惑かどうか気に掛けるの変。情報その七。もう十分だね。こりゃ。
「あっ、それもそうだよね。先生の言う通りだ」
「そうか、話がそれだけなら私は失礼するよ」
急に落ち着いて聞こえる。ダメ押しの八。確定だね。
「はーい。ありがとうございます」
「何かあったらすぐに連絡するように」
そう言って、先生は出て行った。そして私はすぐに携帯を取り出す。ゲームを開き、個人チャットの画面を出した。
花鳥風月:ジュンちゃん。また相談乗ってくれる?
たぶんすぐには連絡は来ないだろう。その間、作戦を練ることにした。
ジュン:どうしたの?花さん?
返事は二〇時を回った頃に来た。
花鳥風月:お返事ありがとう。最近チャット来ないから。心配してたよ
ジュン:ああ、獣さんには言ったけど、ここ最近は仕事忙しくてね
ジュン:悩みってそれ?
花鳥風月:ああ、違う違う
花鳥風月:私今入院しちゃってさ
ジュン:ええ!?そうなの!?大丈夫?
花鳥風月:うん。大丈夫は大丈夫なんだけど
ジュン:なんだけど?
花鳥風月:この病院に知り合いがいるらしくてさ
ジュン:知り合い?どんな?
花鳥風月:私の彼氏みたいなの
やっぱりすぐ返せないよね。
ジュン:へぇー、彼氏も入院しちゃったんだ
花鳥風月:ううん。違う
ジュン:入院じゃないの?
花鳥風月:彼氏と今ゲームやってるんだけど
反応がない。やっぱりね。
花鳥風月:何故だか彼氏が知らんぷりするんだよね
花鳥風月:ってか今日の今日まで私が気付くまで教えてくれなかった
花鳥風月:どうして?純ちゃん?
二百パーセント、相手は純ちゃんだ。
ジュン:ごめん。言えなかったから。ごめんね
ジュン:先生は知ってる?
花鳥風月:知らないよ
ジュン:じゃあこれ以上話せないよ。終わろう
花鳥風月:待って!!
花鳥風月:言いたいことあるの
花鳥風月:それだけ言わせて、カフェでは言えなかったから
ジュン:わかった。いいよ
花鳥風月:純ちゃん、いつもありがとう。純ちゃんがいてくれて、
花鳥風月:花はとっても幸せです。まさかゲームでも出会っているなん
花鳥風月:夢にも思わなかったよ。蜘蛛の糸の話憶えてる
花鳥風月:純ちゃんが「僕が大悪党になって花を天国に連れて行ってあげる
花鳥風月:って言った時、ああなるほどって思ったんだ
花鳥風月:花を救ってくれた純ちゃんが苦しみの中で
花鳥風月:蜘蛛の糸を掴んだんだって。今二人で手繰り寄せているんだって
花鳥風月:すごく納得できたの
花鳥風月:でね。だからこそ言わなきゃならないことがあります
花鳥風月:花は純ちゃんが用意してくれた第二の人生を捨てます
花鳥風月:とても優しくて、温かくて、素晴らしいレールだったけど
花鳥風月:そこには純ちゃんがいなかったから
花鳥風月:どんなにガタガタで走りづらいレールだって良い。純ちゃんが、
花鳥風月:ううん。全部終わったら純って呼ばせて。今も
花鳥風月:純が一緒じゃなきゃ嫌なの。一緒にそのレールを歩きたい
花鳥風月:走りたい。だからありがとう。そしてごめんなさい。私は捨てます
花鳥風月:きっと純の事だから、すごい覚悟して作ってくれたんだと
花鳥風月:思うんだけど、そこに純ちゃんがいなきゃ意味がないから
花鳥風月:花は第一の人生を歩みます。良いかな?それで?
いっぱい、いっぱいありがとう。
ジュン:全然良いに決まってるじゃん
ジュン:そのために今頑張っているんだから
ジュン:でもありがとう
ジュン:花の気持ち知れて良かったよ
ジュン:絶対記憶取り戻そうね!!
花鳥風月:うん!!
ジュン:愛してる
花鳥風月:私もだよ
ジュン:じゃあその日まで
花鳥風月:うん。またね
ギリ三〇以内。ふふっ、スクリーンショットしとこう。
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