第13話 A違和感

A違和感




 あれが良くて、これがダメで


 そんな人生良くないはずで


 私はレールを歩いてた


 このレールは誰のもの






 ダメってはっきり言われるわけではないけれど、ダメなことは多かった気がする。大手への就職や一人暮らしがそうだ。それは治療のためなんだろうけど、何か釈然としない気持ちになってしまう。




 いや、他にもあるのだ。時々、繁華街への外出がダメになる時がある。これは家族に言われるのだ。はっきり言ってさっぱりわからない。何故かお兄ちゃんまで一緒になって反対してくるのだ。これも病気のためらしい。バイオリズムがどうこうって言われる。はっきし言って自由に遊べないのはしんどい。友達に別の日を提案する私の気持ちになって欲しい。




 あとは、まあこれはちょっと違うかもしれないけど、大学の友達が全然いないことだ。これも病気のためとか言ってるけど、絶対おかしい。だって記憶取り戻したいなら会わせたり、話聞いたりして取り戻した方が良いに決まってる。そう言ったら、記憶が急激に戻るのは危険だからそれは出来ないって言われる。ああ言えばこう言うみたいな感じで本当に嫌になっちゃう。そんなこともあって、大学の最後の一年間は必要な授業だけ出て、すぐに帰らされた。わざわざ学校のカウンセリングの先生や、事務スタッフの人が送り迎えするくらい徹底的だった。私はどこかのお嬢様かよ。絶対変である。




 一体何がどうなってるんだろ。




 まあ、もしかしたらそんなストレス発散からこのゲームにハマって課金者やってるのかもしれない。私の中ではそんなことになっている。






ロビンビン:こんにちは。花さんってすごく女の子っぽくて良いですよね


花鳥風月:こんちゃ。そうかな?ありがとうございます。






 ロビンさんが自分から話しかけてくるのは珍しい。そう言えば、ジュンちゃんとは結構コミュニケーション取ってたけど、ロビンさんとはいまいちだったなって思う。






ロビンビン:うん。なんか羨ましいです


花鳥風月:ロビンさんも女の子でしょ?






 私としては病気の無いロビンさんの方が羨ましい。






ロビンビン:私は女の子って言うほど若くはないから


花鳥風月:私も若くはないよー


ロビンビン:でも、二〇代しょ?


花鳥風月:まあ、うん


ロビンビン:私三〇後半だからな






 たまに女の子のふりする男性とかその逆とかいるけど、どうやらロビンさんはちゃんと女性のようだ。まあ、あんまり気にしてないけど。






花鳥風月:ロビンさん何かあった?悩み事?


ロビンビン:いや、一回病気やっちゃってここまで生き遅れたのが、ね






 あっ、ロビンさんも病気だったんだ。って生き遅れか……。うーん。他人ごとではないかも。ってどうしよう。私あんまり他人の事情に深く関わらないようにしているんだけど、これがログ(過去のチャットが三〇件表示されたままになる)に残るの良くないしな。






花鳥風月:なんか大変だね


花鳥風月:でも大丈夫だよ


花鳥風月:ロビンさんはそれでも素敵な女性だから








 秘技、連チャ。短期間だと三件がマナー限度だけど。






ロビンビン:ありがと


花鳥風月:ロビンさんは映画観る?


ロビンビン:観るよ、たまに、ね


花鳥風月:私も家でよく観るー


花鳥風月:どういうの観るの?


ロビンビン:恋愛系が多いかな?


花鳥風月:おお、何か好きなタイトルある?


ロビンビン:あなたに読みたい物語が好きだ   よ


花鳥風月:あっ、知ってる!


花鳥風月:病気の恋人に二人の思い出を話すやつだよね!?


花鳥風月:花もあれ好きー


ロビンビン:いいよねー。豪華客船沈没も好きだけど、こっちの方が好きかな


花鳥風月:私、その映画寝たww


ロビンビン:まじかwwあっ、ごめん仕事戻るねー






 まじか。






花鳥風月:いってらっしゃーい


花鳥風月:暇だぁー


花鳥風月:映画観ようかな






 とりあえず三つ書いたけど、まだ残ってやがるちくしょうめ。




 まあ、自分から話したから見られても良いのだろうけどさ。暗い話になっちゃうと嫌だしさ。






ジュン:こんちゃ






 来たぁー。神。神タイミングだよ、ジュンちゃん。






花鳥風月:ジュンちゃんこんちゃ♪


ジュン:花さん今仕事ないの?


花鳥風月:うん、今日は休みだよー


ジュン:ね、聞いていいかな?


花鳥風月:いいよー、何?


ジュン:花さんって、今彼氏いるの?






 うん。何だろいきなり。






花鳥風月:いるよー






 一応いる。先生が紹介してくれた。してくれた……。いや、違うな。押し付けられたんだ。まあ、もちろん本人同士の了解はしてるけど。私の中ではそういうイメージ。




「月風さん、折り入って話があるんだけど」




 その連絡はインスタントメッセンジャーで来た。




「はい、何ですか」




 先生から連絡が来ることは珍しかった。




「私の後輩の医大生なんだが、お見合いしてくれないかな。ご両親にも話は通してあるから」


「えっ、お見合い。親にも。えっ、何でいきなり」




 私の反応は普通だと思う。親にも連絡いってるって辺りが特に驚いた。




「これも治療の一環だと思って」




 いやいやいや




「えっ、これが治療」


「次の日曜日に後で送る場所まで来て。一二時までにお願いします」




 えっ、えっ、




「ちょ、えっ」


「治療だから。ではまた次の日曜日に」


「えっ」




 ……。




 何が治療の一環だよ。蓋を開ければ普通のお見合いだった。相手はものすごく誠実でイケメンで、将来有望で、スタイルも悪くない。家柄も良い。そして、めっちゃ猛烈にアタックされて……。まあ、ぴったりタイプだったし、悪い気はしなかったんだけど、恩は感じないからな、先生。






ジュン:そうなんだ!!どれくらい付き合ってるの!?


花鳥風月:一年かな






 よし、三〇件完了。やっと流れた。






ジュン:一年かぁー。幸せ?






 というかさっきから、ジュンちゃんどうしたんだろ。






花鳥風月:うん、まあww


ジュン:じゃあとりあえずの旦那さん候補だね!!


花鳥風月:うん、まあww






 ジュンちゃんやたらテンション高めだな……。






ジュン:ごめんね、いきなり


花鳥風月:いや、別にいいけどww


ジュン:それ、たまに進捗聞かせてね☆


花鳥風月:ああ、うんww


ジュン:じゃあね






 ええー。この会話はこれで終わりなの。「じゃあね」って本当にジュンちゃんどうしちゃったの。






花鳥風月:はーい、じゃあね






 まあ、深く入り込まない主義だからいいけどさ。一体何がどうなってるんだろ。まあ、いいか。……。いいのかな。何か引っ掛かるな……。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る