第11話 A楽しい毎日と通院
A楽しい毎日と通院
あれが良くて、これがダメで
そんな人生良くないはずで
私はレールを歩いてた
このレールは誰のもの
最近なんか妙に楽しい。と言っても普通の生活なんだけど、その普通が楽しいのだ。強いて理由を聞かれるなら、今やってる放置ゲームで私の連盟が強くなったことかな。サブで使ってる月英ってアカウントがあるんだけど、そこの盟主とログイン率が高い人がうちの連盟に入ってくれてね。仲間が増えて楽しいの。そう、私は今携帯ゲームにはまってます。「あなたの中国娘」ってゲームです。放置しながら時々インして遊ぶゲームです。私は良くインするけど。
なんでこんな男の人が好みそうなゲームを始めたのかも、やってるのかもわからないんだけど。本当に中国にも娘にも興味が無いのにハマってるんです。きっかけはたぶん広告がうるさかったからやってみたって感じだったかなと。で、ハマりにハマって重課金者になっちゃって、サーバー内で一位になった時もあったかな。始めた頃はいっぱいライバルがいて、今とは違う楽しみがあったんだよね。競ってる、みたいな。今ではやめていく人も多くてちょっと寂しい気もするけど。
うちの連盟「森の幸」って言うんですけど、実は私が作った連盟ではないんです。始めた当初にユポっていう有名なプレイヤーがいて、その人が連盟の基盤とか、今いる古参のメンバーを集めてくれたんです。ただ、ユポさんも飽きちゃったらしくて、引退するってなって、私に盟主を任せたいって言ってくれたんです。そこそこログイン率高くて、おしゃべりで、強いからかな。バランス感覚が良いって話だったかも。ともかく今はライバルが減って寂しい。けど、気の良い仲間と最強チームで戦い続けることが出来て楽しいです。
特にジュンちゃん、あっ転盟してきた盟主の人ね、は結構おしゃべりだから話し相手が増えて楽しいんです。
この前はこんなおしゃべりしたっけかな。
ジュン:男同士で語り合うと、たまに告白のセリフとか
ジュン:プロポーズの話になるんだけど、女性的には何が良い?
花鳥風月:そんなこと話すんだww気持ちが伝われば何でも良いよ
ロビンビン:セリフじゃないよね
ジュン:そうだよね。セリフじゃないよね
獣の王様:でも、「君の瞳に乾杯」とか流行ったよね!?
花鳥風月:あー、私その映画観たことないからな
ロビンビン:私の世代でも聞いたことあるレベルだよそれww
獣の王様:僕映画好きなんで、よく観るんですよ
ジュン:確か、カサブランカだよね
ロビンビン:そうそうww
花鳥風月:初めて知ったww
獣の王様:セリフで有名になったような作品だから、やっぱり関係あるんじゃ
花鳥風月:いやーどうだろww私、言われても嬉しくないww
ロビンビン:イケメンに言われたらキュンって来るかもね
ジュン:やっぱイケメンかぁー。イケメンの特権なのかぁー
花鳥風月:まあ、好きな人に言われる、気持ちのこもった言葉が一番だよ
ロビンビン:だね
獣の王様:なるほどー( ..)φメモメモ
男の人って変なとここだわるんだなーって。よく男の人はプライドが高いっていうけどなんかそれも垣間見た気がする。どこと言われるとえーと、イケメンと自分を比べているところとか。男の人っていつも勝負してるんだなって。私もこのゲーム始めた時は勝負してたわけだし、気持ちはわかるんだけどね。今はこうしてみんなでワイワイ言いながら連盟戦で上位取ったりするのが楽しいかな。
で、これが私の日課で毎日で。仕事もそこそこに、空いてる時間はエンジョイしているわけです。
家庭環境は実はまだ実家暮らしなんです。一人暮らしもぼちぼち始めなきゃなって思うんだけど、なんせ職場が実家の近くで、通院場所も実家の近くだからしょうがないんです。
ああ、そうなんです。私、通院してるんですよね。ぶっちゃけ身体はピンピンしてるんだけど、親からも医者からもお兄ちゃんからも絶対に通うように言われてて、ずっと通ってます。
大学生の時から通っているんだけど、三年生の時に事故に遭ったらしくて、それまでの大学生の時の記憶がスポーンって抜けちゃったみたいなんです。だから記憶が戻るまで、かな、通ってるんです。
「最近の体調はどうですか」
この人が主治医の田原先生。ノートをパラパラと捲りながら体調を聞くのがこの人の日課。まあ、日課っていうか私はその姿しか見たことない。
「全然問題ないですよ」
決まった言葉を返事する。次はたぶん「じゃあまた二週間後に」だ。やる気があるのかないのかかなり微妙な感じだ、いつも。まあ、問題ないのに根掘り葉掘り聞かれてもしょうがないけど。たまにこんなんで本当に記憶戻るのかなって思う。
「このジュン君ってのは最近知り合った子」
と、思ったら、全く予想だにしない言葉を聞いてびっくりする。
先生が読んでいたのは私の日記だ。最初、日記を書け、そして見せろって言われたときはかなり抵抗あった。ま、でも治療のためって言われたらやらないわけにはいかないし、慣れれば大したことはない。
「あーあ、前の連盟っていうか、私のサブがお世話になってた時から知ってるは知ってる」
ゲームのことは前から話しているから詳しく説明しなくても伝わる。
「そうか。それで最近自分の連盟に入ったって感じか。どう、仲良いの」
「仲良い……かはわかんないけど、仲悪くはないと思います。二つ連盟入るの迷っててこっちに入った人で、良く話すので」
「話しててどう。何か感じる」
えっ、好きかどうか聞かれてる私。そんなわけないじゃん。姿形がわからない相手を好きになる趣味は私にはないよ。
「えっ、何も感じませんけど」
そう言うと、先生は顎に手を当てて少しだけ考えた。
「そう、それなら大丈夫だ。じゃあまた二週間後に」
久しぶりに診断らしい診断したけど、結局煮え切らないまま終わってしまった。一体何なのだろう。まあ、いくら考えてもわからないものはわからないので、気にしないことにする。昔からわからない診察が多いのだ。特に就活の時はあれはダメとかこれは良いと言われることが多かった。人よりも苦しい就活をした記憶がある。
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