第8話 A闇
A闇
回る回る貴女は回る
僕の周りを笑顔が回る
あまりに踊って回り疲れて
僕は貴方を立たせて消えた
昔、闇サイトを巡遊した経験がある。とても堕落した世界だった。裏掲示板を始め、闇サイト、闇への入門、闇の探偵、闇の医療。どれも高額なお金のかかる金食い虫ばかりだ。だんだん闇へと染まっていく自分がいて、震える毎日を送った思い出がある。社会人になって、日が浅い僕が破滅した一つの理由だ。未だにその時のツケを払っている。まあ、普通に稼いでいても使いどころがあるわけでもない。花のように高額課金者になっていたのかもしれない。闇を巡遊していたから言える。お金は闇だ。そして、課金も闇だ。人は皆、闇にお金を払いたくなる時がある。そうやって自分の闇を隠すのだ。
獣の王様:このままコロナが終わらないとどうなんだろ
ジュン:そう考えると、怖いよね
花鳥風月:私、発狂するかも
ロビンビン:大丈夫だよ、どんな状況にも終わりはあるし、
ロビンビン:苦境の次には新しい世界が待っているものだから
獣の王様:おおー
花鳥風月:オオー、パチパチパチ
ジュン:さすがロビンちゃん。聖人だね
苦境の次には新しい世界、か。新しい世界ってどんなんだろ。
花鳥風月:暇だぁー
ジュン:暇だぁー
花鳥風月:おっ、ジュンちゃんこんちゃ
ジュン:花さんこんちゃ
花はよく連盟チャットに顔を覗かせているんです。ってのはたぶん連盟を盛り立てるためが七割、自分がおしゃべり好きなのが三割くらいだと睨んでいます。結構責任感ある方なので。
花鳥風月:ジュンちゃんお休み?
ジュン:うん、この前土曜日働いたから振り替えでお休み
花鳥風月:結構ホワイトな企業だね
ジュン:だね。だいぶホワイトだと思う。花さんは?
花鳥風月:ん?
ジュン:ホワイト?ブラック?
花鳥風月:たぶん、だいぶホワイト。一人の時に携帯いじってても怒られないから
ジュン:なーる。ってそれ、一人の時だからじゃない?
花鳥風月:あっ、そっかww
ジュン:(笑)
花鳥風月:でも、誰かいても怒られないときあるよ
ジュン:おっ、そうなんだ
花鳥風月:皆で携帯いじってるから
ジュン:共犯者(笑)
ジュン:ホワイトっていうか自由だね(笑)
花鳥風月:うんwwまあでもホワイトだよ
ジュン:そうなの?
花鳥風月:花、これでもやる時はやる性格だし、そういうの許してくれるから
ジュン:ノルマ性ってこと?
花鳥風月:うん。そんな感じ。ノルマもすごいきついわけじゃないからさ
ジュン:確かにホワイトみたいだね
ジュン:あっ、ごめん映画始まるからじゃあね
花鳥風月:はーい。楽しんでね
ダメだ。これ以上しゃべったら。
久しぶりの二人の会話で、自分の鼓動が徐々に高まっていったのがわかった。くそーどうしてこういう時に彼女がいないんだ、僕は。そもそも誰か会話に入って来いよ、リア充達め。
そ、そ、そんなことないですよ。別に花に再燃なんてしてませんから。あれは過去の話です。僕は今未来に向かって歩いているので。
えっ、じゃあ理想の女性を言えって。探してくれるの。おお、やった。じゃあ……。やっぱり美人が良いよね。あとスタイルも良くなきゃ。スレンダーな人よりかは肉付きが少しだけある人かな。太っている人はちょっと……。性格も良い子が良いよね。えっ、具体的にか。うーん、あんまり愚痴は言わないで、それでも男勝りは嫌だな。女の子っぽい人かな。あとは……あとは……。でもやっぱり相性が良ければそれで良いかも。助け合えるような感じ。窮地の時に助けてあげられるような関係……。
えっ、一人いる。ほんと。しかも近くに。えっ、誰。
花……
って、だから花じゃダメなんだってば。わかってないんだからもう。あーもうやめやめ。この話終わり。もう相談してやらないんだからね。
えっ、因みに花は彼氏がいるのかって。知らないよそんなの。聞けるわけないじゃん。聞けるわけ……。って終わりだってばこの話。
でも、何かの正体はわかった気がするね。えっ。ああ、このゲームに惹きつけられる何かって話。まさかまさかの花がその正体だなんて、ね。はっきり言って、最初は眼中になかったんだよ。月英さんが入ってきたのはちょっと後だったから。そういえばその頃から課金するようになったんだっけかな……。
なるほどね。天はどうやら僕を苦しめたいらしい。
はぁ、僕、何か悪いことしたかなぁ。まあ闇サイトには手を出したけど・そのツケってこと。高いツケだ。
花鳥風月:今日の晩御飯、納豆とイカの沖漬けでした
獣の王様:おっ、ビール片手に?
花鳥風月:いや、ご飯片手にww
獣の王様:めっちゃ健康的ですねww
花鳥風月:なんか無性に食べたくなって
ロビンビン:私は豆腐とイカの塩辛
獣の王様:それは……
ロビンビン:ビール片手に
花鳥風月:やっぱりww
ロビンビン:我ながらおじさんっぽいと思う
獣の王様:確かにww
ロビンビン:歳取るとね、どうしてもね
花鳥風月:ロビンさん若いイメージだった
獣の王様:僕もそうでした
ロビンビン:たぶん結構上よ
花鳥風月:そうなんだ意外
獣の王様:意外だね
ふぅ、と溜め息吐いて携帯の画面から上へと目を逸らす。四角い天井が目に入るだけであとは何もない。今はそこを見ている方が落ち着く。目を閉じて、もう一度画面に顔を落とす。目を開けるとすぐにアプリを閉じて今度は携帯ではなく昔のパソコンを広げ始めた。
久しぶりだな。
僕はいつの間にやら闇の遊びをまた始めていた。
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