第3話 A確信

A確信




 回る回る貴女は回る


 僕の周りを笑顔が回る


 あまりに踊って回り疲れて


 僕は貴方を立たせて消えた






 どうですかね。なかなか強烈な想い出じゃないですか。何か今回の件と関係ないですかね。えっ、それでもたまたま……ですか。……そう、ですか。いやまあそうですよね。たったこれくらいの証拠じゃ確証になりませんよね。




 うん……。




 あっ、言い忘れてましたが、このゲームはいわゆる課金ゲームの部類です。無課金・微課金を貫いてきた僕としては非常に抵抗のあるゲームだったんです。しかし僕はいつしかハマっていき、低課金者・中課金者の階段を上がっていきます。




 おかしな話です。本当におかしな話です。普通ならたぶん、前まで積み上げてきたプライドや決して裕福とは言えない経済状況から、課金者への階段を上がることなんか無いのです。無いはずなんです。




 それでも僕は課金者になった。このゲームには僕を引き付ける何かがあるんです。何かが。


僕の言いたいことわかりますよね。ね。




 はあ。




 わかってます。とんだ運命論者ですね、僕。ある意味では大人になったってことかもしれません。悪い大人に。




 悪い大人、か。




 ははっ、悪い大人になっちゃったのかな。






獣の王様:あー、早くコロナ終われー。自粛期間長過ぎー


花鳥風月:長いよねー






 僕はいつの間にか花さんの運営する連盟に入りました。運命を信じたからじゃないよ。課金者になって半ばガチ勢になった僕としては当然の選択だったんです。花さんの連盟、このサーバーで一番強いし。




 一応、経緯を言うとこんな感じです。




 しばらくしてシューユさんが音信不通、やめちゃったんです。時を同じくして白ネコちゃん(盟主)も仕事が忙しくなってログイン率がガクッと減っちゃって、そこからしばらく僕が盟主やることになったんです。




 でも、二人も主要なメンバーが活動しなくなったから、連盟の成績はだんだん下がっていき、やめるメンバーも多くなっちゃって、連盟としてかなり弱くなっちゃたんです。




 その状況を危惧した僕は、合併の案を思いついた。それで色々な連盟に声を掛けたら、花さんの連盟と、そのライバル連盟(二位)が全員とは言わずも、多数受け入れてくれることになったんです。それで自由意思で転盟してもらうことになったんだ。もちろん残りたいメンバーは残って良いってことで。




 結果的にはメンバーがバラバラになっちゃう最悪な策になってしまいました。何が理想の人は諸葛孔明です、だよ。メンバーが離散しただけだってのにね。




 で、僕ともう一人は花さんの連盟にお世話になることになったんです。






ジュン:長いねー花さん獣さんテレワーク?


花鳥風月:ううん。普通に出勤だよ


獣の王様:僕もテレワークじゃないかな。そんなに良い会社じゃないから。


花鳥風月:えっ、会社の質とテレワークって関係あるのww


獣の王様:なんかそんなイメージあるからさ


ジュン:僕もなんかそれ聞いたことある


花鳥風月:あるんだww


獣の王様:僕大学行ってないから馬鹿なんです


ロビンビン:私は大学二浪しているから馬鹿です






 あっ、すみません。そういえば紹介ほったらかしでした。順番に説明しますね。




 獣の王様は花さんの連盟にいた人です。結構おしゃべりしてくれて楽しいです。




 ロビンビンは知ってますよね。一緒に移籍したのはこの人です。たぶん少し前から覗いてて、タイミング見てたんだと思います。




 で、花鳥風月さんが花さんです。花さん凄いんですよ。このサーバーで三番以内の権勢ステータス持っているんですよ。中課金の僕が三億五千万なのに対して、花さんは十一憶。単純計算だと僕の三倍は楽しんでいますね。さすがサーバー内一位の連盟の盟主です。




 それにしても花鳥風月か。実はこの言葉にも前彼女の花との想い出があるんだけど、これに関しては関係ないことが判明しているので、たぶん皆さんが正しいのだと思います。一応、こんな会話があったよって、掲示しておきますね。






ジュン:そういえば花さん花さん


花鳥風月:うん?何?


ジュン:花さんの花鳥風月ってどんな意味なの?


花鳥風月:うん?知らないww


ジュン:知らないんだ(笑)


花鳥風月:よくゲームとかで必殺技であるでしょ。おしゃれだなって


ジュン:なる(笑)






 花鳥風月という言葉は風流とされるものを集めたもの。花ならそれを知ってるはずだし、知らなかったってのは大きいかな。……うん。






花鳥風月:大学行ったとか二浪だとか頭の良さには関係ないよ


ジュン:確かに。獣さんもロビンさんも頭良いよ、きっと。


ロビンビン:そう言われると、救われる


獣の王様:うーん、僕は本当に頭良くないけど


ジュン:因みに花さんは現役合格?


花鳥風月:うん。たぶんww


ジュン:そんな気がした。って、たぶんって(笑)


花鳥風月:いや、大学の事あんまり覚えてないんだよね。


花鳥風月:就活した辛い記憶しか覚えてないww






 えっ。






ジュン:どういう事?最初の三年間覚えてないの?


花鳥風月:うん。そんな感じww






 最初の三年間を覚えていない。まさか、そんな……。






獣の王様:彼氏とかいなかったんですか?


花鳥風月:いたような。いないような……


ロビンビン:彼氏乙ww


ジュン:ま、いっか(笑)


花鳥風月:うん。気にしてないww






 皆さん、これは大問題です。大学の最初の三年間を覚えていない。そんなレアな人間そうそういません。そう、花しかいないんです。




 そっか、皆さんは知らないのか、あの事件を。あの忌むべき事件を……。

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