1章 32話

ひとまずゆっくりしてねと、笑顔で手を振りながら帰ったヘラヘラ男。


もちろん2人きりになるはずで。


私たちの間に会話は無かった。


「…」


「…」


…どうすればいいのだろうか。


とりあえず帰りたいんだけど。


「あの…」


「なに。」


「か、帰りたいんですけど…。」


「…話聞いてた?」


「聞いていましたけど…」


「あんた、とりあえずここに居て」


だめか…


「なんか飲む?」


そう言って彼はソファに座っていた腰を上げ、キッチンに歩いて向かった。


「コーヒーしかないけど」


コーヒーは小さい頃から砂糖を沢山入れても飲めない。


「コーヒー、飲めないんです。」


「…だよな。」


…ん?


彼のそう放った一言に違和感を覚えながら時間が進んでいった。

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