第4話 中編・二人

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 犬神市某神社。

 ここはこの街でも有名な犬神神社の分社の一つ。本社とは違い在住している人はおらず、定期的に本社の人が来たり、近くの幼稚園の行事などで使うくらいで人はほとんど来ない。


 (ここならいいかな?)


 終夜は竹刀をユイに振らせる場所に選んだのは、その神社の裏。車を止めるスペース以外は竹や草木があるだけの場所。


 「うん、さっそくする」


 終夜は階段を上って乱れた息をぜえぜえとしながら、


 (ちょっと待ってよ、あと少し休んでから……)


 ユイは終夜のことなど構わず、体に入り込む。終夜はさっきまでのユイのような幽霊の状態になった。


 「懐かしい」


 ユイは竹刀を持つとそう言い、軽く振る。そしてもう一度振る。それを見た終夜は唖然としていた。剣の筋というか、放つ雰囲気がつるぎのと似ている。同じ流派だったのか。それとも気のせいなのか。

 そのあともユイは竹刀を縦に、横にと振り体を動かし続ける。


 超えていた。一連の動作はつるぎのもののレベルを超えていた。何より自分の体のなせる領域ではない、いや人のなせる領域ではないと終夜は感じていた。終夜は思わず言葉が、


 「神域……」


 神域。つるぎの目指している神力者に武術でのみ勝つ領域。

 実際に今のユイが神力者に竹刀のみで勝てるかは分からない。相手の神力のレベルや種類、状況にもよる。だが、それを考えてもである。


 少なくとも程度の低い神力になら勝てるだろうと終夜は思った。


 (ユイ、凄いね。もしかして何かの神力でも使ってる? 幽霊が神力を使えるのかは分かんないけど)


 「使ってない。私は神力を持っていない……持って、ない」


 ユイは悲しそうに言うと続けて、


 「神力は人に宿るもの。体がシュウヤのものになっても私は神力は使えない……幽霊だから」


 (そっか、でもニュースとかでAIとか人工知能、ロボットに神力を宿らせれる可能性がでたってみたけど……それができるなら幽霊でも神力を使えるようになるかもよ?)


 「ない。神力は心と体があるものにしか宿らない。そして人以外の生物にも宿らない……私は体もないし……人……じゃなくて幽霊だから」


 終夜はユイを見て、微笑みながら


 「ユイは幽霊だけど、人だよ」


 と。



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 某中学校男子寮。

 終夜は家に帰ると、ユイに作ってもらったカレーを食べる。


 (美味しいよ、ユイ)


 終夜はスプーンでカレーを食べ、


 (ユイに会えて本当によかった。こんなに美味しいもの食べれるんだもんね)


 「私がもしいなくったらツルギにでも作って貰ったら?」


 (ツルギ? ツルギはただの友達だし、作ってくれないよ。確かにツルギの作る料理も食べてみたいけど……おいしくなかったらどうしよう? ああいう、クールで美人系のキャラって漫画だと料理下手だしね。まぁ、それは冗談できっとおいしいと思うけど……)


 「作ってくれると思う。ツルギ、シュウヤのこと好きそうだから」


 (茶化してる?)


 「茶化してない。たぶんシュウヤのこと好き……女だから分かる」


 (本当かな? ならいっそのこと聞いてみようかな)


 「それは駄目。なんかシュウヤが付き合うと私が気まずい。私が消えるまでそういうのは駄目」


 (ユイが一生消えなきゃ誰とも生涯付き合えないってこと?)


 「そう」


 (それは酷いよ、僕だってそのうち彼女くらい欲しいよ)


 「終夜は私に消えて欲しいの?」


 (そうとは言わないけどさ)


 「冗談、でももう少しだけ待って。もう少しだけシュウヤのこと独占したいから」


 (もしかして、ユイ僕のこと好きなの?)


 「嫌い……ではない」


 (酷くない? そこは好きっていってくれてもいいでしょ)


 ユイは無感情に「好き」と言うと終夜はそれだと無理に言わせたみたいだなぁと感じた。


 


  



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僕にだけ見える幽霊メイドは剣の達人です~天秤の神域者 @h27

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