第23話 病院に運ばれた夕日と山根の想い
救急車で夕日は運ばれた。
それから.....総合病院で夕日のレントゲンやら検査をする。
その結果だが.....悪くなっていた。
病状が、だ。
俺は衝撃を受けながらも.....真剣な顔で田中慎吾(たなかしんご)医師という何時も夕日を診てくれる医者を見る。
40代ぐらいのだが.....その田中医師もジッと俺の目を見つめる。
真剣な顔で見据えていた。
それからレントゲンとカルテを見ながら口を開く。
「.....良くないです。.....病状が悪化しています」
「.....そうですか.....」
「.....はい。.....肺が半分ほど真っ白です。それに肝臓も良くない様です」
「.....覚悟はしていました。.....良くない事を知って.....いました」
「.....余命とは言いません。.....でも覚悟はしたほうが良いかと思います」
「.....」
そんな感じで言い聞かされていると。
背後のドアが開いた。
看護師に促されて人が入って来る。
それから.....いーちゃんと山根と燕ちゃんが、だ。
その顔は深刻な感じだった。
「.....大丈夫なのか?」
「.....山根。お前な。.....診察中だぞ」
「.....友人って言ったら通してくれたぞ。.....それで.....どうなんだよ?」
「正直.....良くは無い。.....覚悟が要る」
「.....」
山根は、そうか、と言いながら唇を噛む。
いーちゃんは複雑な顔をする。
そして燕ちゃんは涙を浮かべていた。
俺はその姿を見ながら田中さんを見る。
田中さん。.....俺はどうしたら良いですかね、と聞いた。
その田中さんは、私は全力で治療する。.....それしか無いです、と応える。
それから、私はあの子の主治医ですから、と答えた。
「.....田中さん.....本当にお世話になっています」
「.....いえ。幼い頃から知ってますからね」
「.....はい.....」
「全力はあげますからご安心下さい」
「.....はい.....」
するといーちゃんが俺の肩を掴んだ。
それから俺を見てくる。
不安そうに、だ。
俺はその手を握りながら.....笑みを浮かべる。
大丈夫だ、と言いながら。
「.....今度ですね。先生」
「.....何でしょう」
「流星作戦ってのを.....友人がやってくれるんです。俺の誕生日ですが.....それまでに.....夕日は退院出来ますか」
「.....正直言って厳しいとは思いますが配慮します。.....良いですね。.....その作戦」
「.....はい。星々を観察するんです。みんなで」
まあ流石に山根が実際に高校に忍び込むとかは言えないけど。
思いながら俺は田中さんを見る。
田中さんは笑みを浮かべて俺を見てくれた。
それから、友人を持つ事はメンタル面のサポートでも良い事です、と答える。
そして俺とみんなをジッと見つめた。
「.....あの子をサポートしてあげて下さい。私にとっては.....子供みたいですから」
「.....田中さん.....」
「.....私も頑張ります。.....頼みます」
俺達は頷く。
それから.....俺は診察室を出た。
そうしてから.....夕日が入院している場所に向かう。
ICUとは言わないが.....それなりの場所に、だ。
複雑な顔で見据える。
「.....何でだろうね。.....何で夕日ちゃんなんだろう」
「.....神様がサイコロを振って当たったのが夕日なんだろうけど。.....俺は許せない。神様を信じれられない」
「.....私も思います」
「.....」
サイコロで気まぐれに夕日を選んだとするなら。
俺は神を殴り倒そうと思っている。
こんなに夕日が苦しんでいるのに、だ。
許せないし絶対に許さない。
思いつつ俺は握り拳を作った。
「.....ショートケーキ作ろうよ」
「.....ショートケーキ?いきなりだね。いーちゃん」
「.....だってあれは.....魔法のケーキだから。.....絶対に良くなるよ。.....夕日ちゃん。.....だから作ろうよ」
「.....それは私も賛成です。.....夕日ちゃん.....ケーキ好きですから」
「.....俺も賛成。.....俺はまあ助けれないけど。そういうの作れないから」
食材は確かに買った分がある。
俺は.....夕日が横になっている入院ベッドを見ながら。
壁のガラスに触れる。
それから.....静に頷いた。
そしてみんなを見つめる。
「分かった。魔法のケーキを作ろうか」
「ですね」
「うん」
「.....」
山根がジッと夕日を見ている。
ずっと、だ。
一時も目を離してない。
俺は?を浮かべつつ山根に聞く。
どうした、と。
「.....なあ。.....俺さ。笑うなよ」
「.....ああ」
「.....夕日ちゃんが好きなんだよ」
「.....それ前も話していたじゃねーか」
俺は苦笑する。
いーちゃんが直ぐに聞き返した。
それは.....愛ですか?、と。
山根が、じゃなきゃ何だってんの?、と苦笑いを浮かべる。
それから.....また夕日を見た。
「.....夕日がやっぱ好きなのか?お前」
「.....ああ。.....俺は昔からずっと好きだぞ。.....でも叶わぬ願いだって知っているんだ」
「.....」
「.....流星作戦は.....俺がお前の為にやるけど.....実はそれ以外にも夕日ちゃんに告白しようと思ったんだ。でも今こうなっちまったから。.....先に言うけど」
「.....そういう事か.....」
俺は顎に手を添えながら夕日を見る。
ガラス面におでこを打つける山根。
それから嗚咽を漏らした。
何で.....夕日ちゃんなんだろうな、と言いながら、だ。
涙が頬を伝っている。
「.....そうだな」
「.....俺は夕日ちゃんを心から愛していると思っている。.....ずっと守りたいって思っているんだ」
「.....山根さん.....」
「山根さん.....」
その気持ちはマジなんだろうな。
コイツだしなって思う。
思いながら俺は.....目の前の夕日を見る。
良かったな夕日。
お前を見てくれる奴.....居るじゃないかきちんと。
「.....山根」
「.....何だ」
「.....駄目だったらどうする気だお前」
「.....その時はその時さ。.....勿論0であるのも考えているぜ」
「.....」
俺達は顔を見合わせてから山根を見つめる。
山根は真剣な顔で夕日を見る。
その姿を燕ちゃんもジッと見ていた。
流星作戦.....成功すると良いが。
思いつつ山根を見ていた。
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