第22話 世界が暗転する時

実の所だが山根と夕日は意外な繋がりがある。

学校の帰り道で体調不良に夕日がなった時に山根が助けた、という事が、だ。

それ以降、山根と夕日は仲が良くなったのだ。

俺は夕日と山根がしっかりと話している姿を見ながら。

そのまま野菜スープを出す。


「山根さん。電話.....そろそろ切りますね。ご飯なので」


『お。そうなのか。んじゃ最後にアイツに宜しく伝えておいてくれ。.....んじゃな』


何の話をしていたのだろう。

思いながら俺は夕日を見つめる。

夕日は、えっとね、と直ぐに答えてくれた。

山根さん.....ずっと心配してくれていたよ。お兄ちゃん、と言う。

それから笑顔を浮かべた。


「優しいね」


「.....そうだな。山根らしいよ。馬鹿な面も有るけどな」


「うん。.....でも山根さんがもし彼氏だったら楽しいだろうな」


「.....それは.....ちょっと悲しいかも」


「もー。シスコンめー」


夕日は苦笑しながら俺を見つめてくる。

だって悲しいではないか。

山根に取られるのは良いけど.....俺の大切な妹なのに。

親父も泣くぞきっと。

思いながら悲しい目をした俺を夕日は、もー、と苦笑いを浮かべた。


「.....お兄ちゃん。例え私がどうなってもお兄ちゃんはお兄ちゃんのままだよ。だから.....心配しないで」


「.....そうだな。.....心配はしなくても良いとは思うけど。.....でも俺は夕日が心配だよ」


「.....有難う。お兄ちゃん。そう心配してくれるお兄ちゃんが好きだよ」


「.....うん。.....じゃあ食べようか」


「そうだね。.....あ。今日お兄ちゃんと一緒にお風呂入りたいかも」


「良い加減にしろよ夕日。俺としては嬉しいけど.....思春期の女の子なんだぞお前は」


でも私はお兄ちゃんとお風呂が楽しみだから。

とニコッとする夕日。

俺はその姿に苦笑しながら、分かったよ、と言いつつ。

アツアツだから気を付けて食べような、と話す。

それから俺達は野菜スープを食べ始めた。


「お兄ちゃん」


「.....何だい」


「美味しいよ。有難う」


「.....そうか。.....良かった」


俺達は笑み合いながら。

そのまま食事を済ませてから一緒に風呂に入る。

そして俺は久々に見た夕日の背中に。

複雑な思いを抱いた。


どんな思いかって言えば.....そうだな。

かなり痩せている、と。

その様なイメージを、だ.....。

俺は悲しかった。

これだけ食わせて頑張っているのに.....と。



(山根。今日は有難うな)


(良いって事よ。.....それはそうとお前は元気なのか?)


(おう。お前は夕日の事で頭いっぱいだったんだろ?)


(そんな事は無いぞ。失礼だな)


(いや。絶対にそうだ。お前.....夕日好きなのか?)


そんな会話をメッセージアプリでしながら。

俺は苦笑いを浮かべつつ。

ったく、と思った。


でも良い奴だよな本当に。

思いつつ俺は山根の途切れた答えを待つと。

予想外の答えが。


(俺は夕日ちゃんが好きだぞ)


(.....ファ!?お前マジか!?)


(当たり前だろ。あんな良い子は他に居ないぞ絶対に)


(.....お前.....)


(.....だからマジに好きだ。こんなクソボケがモテる訳も恋が叶う訳が無いけどな)


俺は衝撃を受けながら画面を見つめる。

そして山根は恥じらいながらの返事だろう。

数秒経ってから送ってきた。

そのメッセージにはこう書かれていた。

流星作戦の日に告白しようと思う、と、だ。


(.....お前.....その日にか?)


(ああ。夜空をキラキラ彩っている星々の下で告白。ロマンチックだろ?)


(.....ったくよ。.....んじゃ.....まあ俺も協力するわ)


(.....え?いや。良いよ。お前が主役なんだから)


(いや.....そうは言ってもその当日に告白なんかしたら結局な話.....俺置いてけぼりになるだろ?なら誕生日とはいえ俺も協力してやるさ。お前の為にな)


(.....お前らしいこったな)


そりゃお前もだろ、と笑い合う俺達。

それから.....俺は苦笑した。

そしてため息を吐きながら.....窓から外の三日月を見た。

相変わらずの外に.....俺は笑みが溢れる。

全くな、と思いつつ。


「.....何だかやる気が出てきたわ。.....とりま頑張るか」


思いつつ俺は、よし、と言いながら、山根。すまないけど、と打った所で、ゲホゲホ!、と後ろから声がした。

俺はびっくりしながら直ぐに立ち上がる。

それから襖を開けた。

そして.....若干吐血している夕日をみつ.....夕日!!!!!


「オイ!!!!!」


「ゲホゲホ!」


「.....何てこった.....!.....くそう!救急車!」


俺は直ぐにスマホで救急車を呼ぶ。

119番通報で救急隊員がやって来た。

で救急車に乗る際に、しまった、と思う。


何をと言えば。

俺は.....金を持ってない事に.....だ。

どうしたものか.....。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る