第17話 クロックと鳩ちんといーちゃんと

いーちゃんが小説を書くと言い出した。

俺は、ど。どういう事なの?、と思いながら目を丸くしながらいーちゃんを見る。

そんないーちゃんは満面の笑顔で俺を見ている。

俺達の恋愛模様を描いた作品で.....そして.....俺といーちゃんの絆を深める為に書きたいという。

そして小説のサイトで応募するそうだ。


「.....いーちゃん.....」


「私ね。夢だったの。.....いつか好きな人と一緒の小説を書いてやるってのが」


「.....やれやれだね。でも君の好きな様にしたら良いよ。アハハ」


「うん。好きな様にやらせてもらいます」


そんな感じで言いながら俺達は先程の吉田さんの書店で何冊か選んだ本を読みながら歩いてみる。

二宮金次郎の感じってこんな感じなのかな、って思う。

そうしているといーちゃんが俺に向いてきた。


「今日は.....アルバイトは休みなの?」


「代わってくれたんだ。.....今日はリーダーが」


「.....そうなんだね。アルバイトは十分やれている?」


「うん。.....まあ十分には。.....いーちゃんも働いているの?」


「.....私は小説サイトで稼いでるよ。......えっと5万円ぐらい」


物凄いなそれ。

と思っていると、でも全然足りないけどね。

お婆ちゃんと林檎を養うにはね、と苦笑したいーちゃん。

だからもっと働きたいなって思ってる、と。

いーちゃんは少しだけ暗くなる。


「.....私は.....この路線だけじゃ駄目だって思ってるから」


「.....いーちゃんは将来を見据えているんだね。偉いね」


「.....そうだよ。.....私は.....好きな人と共に歩みたいから」


「.....い、いーちゃん。恥ずかしい」


「あれぇ?好きな人って言っても誰かって言ってないよ?はっちゃん」


クスクスと態とらしく笑ういーちゃん。

俺は少しだけ恥じらいながら周りを見渡す。

通行人の人達つまり商店街の人達が、いいわねぇ、的な感じで笑っていた。

その光景に俺は少しだけまた恥じらう。


「この本を参考にしてまた小説を完成させるよ。.....小説の完成.....協力して欲しいな。はっちゃん」


「.....ぐ、具体的には?」


「.....昔みたいに遊ぼうぜ。はっちゃん♪」


「.....わ、分かったよ.....うん」


昔みたいって恥ずかしいが.....いーちゃんがそう言うなら仕方が無い。

俺は頬を掻きながら居るといーちゃんが俺の腕に絡みついて来た。

それから、いひひ、と言いながら笑顔を浮かべる。

昔みたいな.....男の子だった女の子の様に、だ。


「じゃあ.....先ずは一緒にゲーム屋に行こうよ」


「.....ゲーム屋?」


「昔よく行ってたじゃないか。はっちゃん」


「.....そ、そうだね.....分かった」


「一緒に新しいゲーム探したりしたからね。アハハ」


そんな感じで.....は良いんだが。

胸を押し付けてくるのは止めて欲しい.....。

かなり赤くなってしまう。

意識してし待ってクラクラする。

困ったな.....。



「やっぱり昔のゲームがいっぱいだな。はっちゃん」


「.....そうだね。いーちゃん。確かにね」


「どんなゲームが懐かしいかな」


「.....俺はゲームボーイア◯バンスだな。やっぱり懐かしいといえばね」


そうだね。俺もそう思うよ。

と言いながら男勝りな感じでいーちゃんは俺に寄り添って来る。

すると奥から店員がやって来た。

あらあら。良いカップルさんね、と言ったが。

その直後に見開いた。


「貴方達.....もしかして」


「.....お久しぶりです」


「.....だね」


「.....まあまあ!懐かしいわね!.....大きくなったわね!」


丸眼鏡の特徴的な白髪頭の.....その。

歳を感じさせない服装の美春さん。

正確に言えば長門美春(ながとみはる)さん。


現在の年齢は多分.....当時は60歳だったから今は70歳ぐらいかな。

それぐらいの歳になった筈だ。

何時も小学生だった俺達に笑顔を振りまいてくれた女性だ。


「.....なかなか会いに来なかったから.....羽鳥君が特にね」


「.....色々あったんですよ。.....俺。それで.....忙しくて来れませんでした」


「そうだったのね。.....まあまあ.....懐かしいわね」


「.....それで.....またゲームを見に来たんです」


「.....お2人は今付き合っているのかしら?」


その言い方だと.....美春さんはもう知っているのか?

いーちゃんが女性だったという事を。

俺はビックリしながらも、まあ会いに来ていたんだろうな、と思う。

するとそれ以上の言葉が出て来た。


「私が......苺ちゃんの保護者代わりだった時もあったからね。.....それで.....懐かしいわ。当時の事が」


「.....マスコットキャラクターみたいだな。いーちゃんは」


「.....そうだね。恥ずかしいけどね。商店街の人達に救われたから.....」


「.....そうなんだね」


凄惨な過去.....か。

それを救ってくれたみんな、か。

俺は思いながら.....美春さんを見る。

そうしていると美春さんが、そうそう、と言い出した。

それから何かを持ってくる。


「これ。近所の温泉のチケット。持って行って」


「.....え?で、でも.....」


「私は年寄りだから遠くてね。.....せっかく福引で当たったのに勿体無くて。.....カップル限定の特典もあるみたいだしね」


「.....いや.....俺達はカッ.....」


「行きます!!!!!」


いーちゃんが突然やる気を見せた。

俺はビックリしながらいーちゃんを見る。

しかし俺バイトが、と思うのだが。


するとそれを察してか、いーちゃんは、あ。でもアルバイトが.....私も.....あら.....、と言い出してから残念がる。

するとその時だった。


「あっれ?鳩ちんじゃない?成長しているけど」


「.....?.....お前.....クロック?」


「めっちゃおひさだね!!!!!.....どったの?」


奥からゲーム屋のエプロン?姿の女性が出て来た。

その女性は八重歯が特徴的な.....そうだな。

小麦色の肌をしているポニテ少女。


俺と同級生。

因みに俺のあだ名の鳩ちんは(羽鳥)だから鳩ちん。

クロックは(黒川みすず)だからクロックだ。

お互いに、時計じゃねーか、と突っ込みあった事もある。


「こんな所でバイトしているの?」


「うんうん。そうだよ。.....して。其方は?鳩ちんの彼女さん?」


「.....この子は苺ちゃんよ。黒川ちゃん」


「.....ほえ?」


美春さんの言葉に目が・・になったクロック。

流石に訳が分からないよ?、的な顔をする少女。

そりゃそうだよな。

いーちゃんは、男の子、の印象だったからな。

俺は苦笑いを浮かべる。


「.....ふあ!?女の子だったの!?」


「(お久しぶりだ。クロック)」


「.....声が.....確かに!.....うおー!!!!!マジか!」


クロックは言いながらいーちゃんを抱きしめる。

そして涙を浮かべたクロック。

突然居なくなったから、と言いながら、だ。

俺はその言葉に少しだけ横を見た。


「.....で!?2人って付き合い始めたんビックリ!?」


「そうだよ!アハハ」


恥じらうなよいーちゃん。

というか嘘は良くない。

俺はそう思いながらも.....良い風景だな。

そう感じながら.....見ていた。

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