第16話 はっちゃんと小説を書く!

告白された。

誰にと言えば.....そうだな。

丁度.....俺の元友人の元男の子に、だ。

いーちゃんに、だ。


勘違いしないで欲しいのだが、女性だった、ってオチだ。

野犬から救ったりしているうちに俺を好きになったという.....らしい。

その前からずっと好きだったみたいだが。


「.....」


「.....」


気まずいんだが。

どうしたら良いのだろうか。

告白されたのは良いけど.....とても気まずい。


俺は.....チラチラと横のいーちゃんを見る。

いーちゃんも恥ずかしさ故か悶えていた。

まさか告白する事になるとは思ってなかったのだろう。

予想外だったのだろうと思う。


「はっちゃん」


「.....な、何でしょう」


「.....やっぱり忘れて。.....恥ずかしいかも」


「.....駄目だ。忘れないよ。.....君からの告白なんだから」


「.....っ!.....う、うん」


そもそも商店街に来た目的。

それは買い物もそうだが本屋に寄ってみようって話だった。

いーちゃんの小説に役に立つ本があるかもしれないから、って話だ。

俺は考えながら.....いーちゃんと共に中古の本屋に来る。

この街には中古の本屋は数少ないのだ。


「おや?」


その本屋は文庫堂という中古の本屋だった。

そこの店主らしい中年の男性が俺達を見てからそう言う。

俺は、い。いや、と呟きながら反応する。

するとその代わりにいーちゃんが、こんにちは。吉田さん、と反応した。

それから、私の親密な友人です、と苦笑しながら答える。


「.....今は違いますけど.....うん」


「.....複雑なんだね。.....うんうん。.....詳しい事は聞かないよ」


笑顔を浮かべる吉田さん。

助かった。

思いながら俺は奥に行ってしまう吉田さんを見る。


するとそれを伺ってからいーちゃんは、小説を書きたいけど.....はっちゃんと原案を考えたいの、と赤面で言い出した。

俺は驚愕していーちゃんを見る。

いーちゃんは、も。もしだけど、と言う。


「.....私.....小説をはっちゃんと考える事が夢だった。.....だから.....お願い.....手伝ってくれないかな」


「.....嘘だよね。.....俺には文才はないよ」


「.....それでも良い。アイデアを出してくれたら何でも良いの」


「.....で、でも」


「.....私のお願い。聞いてくれないかな。はっちゃん」


今は仲が良い友人として、と笑顔を浮かべるいーちゃん。

俺は困惑しながらも、分かった。アイデアを出し合おうか、と笑顔を浮かべる。

そして、いーちゃん。どんな小説書くの?、と聞く。


応募するのに必要だから.....そうだね、と顎に手を添えていーちゃんは悩んだ末。

私。恋愛小説書く、と言い出した。

俺はビックリしながらも、分かった、と頷く。

その中でいーちゃんは、私達の恋愛を切り取って使う、と切り出す。


「い、いーちゃん!?恥ずかしくない!?」


「恥ずかしくないよ。.....私は.....だって。はっちゃんが好きなんだから」


「いや.....まあ良いけど.....うん」


「やった。じゃあ協力してね。はっちゃん」


言いながら俺の腕に自らの腕を絡ませて来たいーちゃん。

俺は再度またビックリしながらいーちゃんを見る。

だって小説に必要なんだから、といーちゃんは胸を張った。

それから俺に寄り添う.....って、オイオイオイオイ!!!!?

健全な男が壊される!


「いーちゃん.....い、幾ら何でも」


「良いから。.....お、お願い」


「.....」


そして本を選び出すバカップル。

あまりの事に動きがぎこちないのだが。

そんな感じで居ると奥から先程の吉田さんが出て来た。

でも苺ちゃんはようやっと幸せを手に入れたんだね、と言いながら、だ。

お茶を持っている。


「これ。良かったら飲んで」


「えっと.....有難う御座います。.....ようやっとって何ですか?」


俺は驚きながら聞いてみる。

すると吉田さんはニコッとしながら俺を見てくる。

そして遠くの彼方をみる様な顔をした。

眼鏡を上げつつ、だ。

それは老眼鏡の様に見える。


「.....苺ちゃんは君とお話が出来るのを待っていたんだよ。.....ずっとね。.....コンビニ通いしてからずっと私に楽しそうに話す姿。.....それは本当に楽しそうだった。だから君とお話が出来る様になったんだね、と思ってね」


「.....そうなの?いーちゃん」


「.....そうだよ。.....私ははっちゃんと話せる日を.....ずっと待ってたから。私は.....はっちゃんが好きだったから気付いてほしかったからね。.....早くね」


「.....いや.....もう恥ずかしいんだけど」


「小説の題材には必要だよ。はっちゃん。うふふ。覚悟してね」


そして頬に人差し指を立ててくる。

もうこれ以上赤くはならないだろうぐらいに赤くなりながら、だ。

俺は流石に赤くなる。

それから頭をボリボリ逃げる様に掻く。

すると吉田さんが俺を見ている事に気が付いた。


「.....君は.....苺ちゃんを大切にしてくれそうだね。.....君なら.....苺ちゃんの問題を跳ね除けてしまいそうだ」


「.....俺にはそんな力は無いです。.....でもいーちゃんは大切な人ですから。.....どんな悩みでも解決します」


「.....好青年だね。本当に。.....苺ちゃん。良かったね」


「はい」


吉田さんとかなり仲が良いが.....もしかして幼い頃から知っているのだろうか。

思いながら俺は仕事に戻ろうとした吉田さんに聞く。

吉田さん。.....もしかしていーちゃんをずっと.....昔から知っているのですか?、と。

すると吉田さんは少しだけ辛そうな顔をした。


「.....知っている.....と言うよりも。知る羽目になったんだよ。.....苺ちゃんの親御さんが苺ちゃんを.....家から追い出して泣いていた時に。小学校の帰り道だったかな.....確か」


「.....!」


「.....私は小学校で定期的に読み聞かせも行なっているが.....その帰り道だったよ。.....苺ちゃんに出会ったのも.....この古本屋を開く決意をしたのも苺ちゃんがきっかけだったかもしれない」


「.....いーちゃん.....が.....」


「そうなんだよね。.....何だか.....その点も含めて吉田さんは私の恩人の1人なの」


でもその後に夜逃げだったかな。

別れ別れになってから。

私は.....とても悲しかった.....。


しかし1年前に再会したんだよね。

そして.....今に至ったんだ。

と吉田さんは頬を掻きながら嬉しそうな顔を見せる。


「.....色々あったんだね。いーちゃん」


「.....まあもう色々あって.....次元が超越するよ」


「.....」


俺は何も知らなかった。

ずっとの戦いを。

彼女の.....大変な戦いを、だ。


思いながら.....俺は彼女を大切にしよう。

これからは親友として見守っていこう。

そうまた新しく決意する。

そんな感じの思いしかなかった。


「.....でもはっちゃんとまた仲良くなった。これでもう十分だよ」


「.....そうか」


「熱いねお2人さん。ハハハ」


そんな感じで時間が過ぎる。

その中で俺達は本を探してみる。

そんな間.....ずっといーちゃんは寄り添っていた。

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