でも幸せだから
第15話 呪われた世界と輝く世界と
ショートケーキ少女と随分仲良くなった。
とは言えショートケーキ少女自体が幼馴染に近い存在の子だった訳で今に至っているのだが。
俺は考えながら翌日の事。
ショートケーキ少女もとい、いーちゃんと歩いていた。
「.....有難う。今日は付き合ってくれて」
「.....まあお前の頼みなら尚の事。.....全然大丈夫」
俺達は買い物に出ていた。
それから.....食材を買って回る。
とは言えお互いに貧乏なので大きな真似は出来ないが。
思いながら.....俺はいーちゃんを見る。
いーちゃんは紙を見ていた。
何かの紙を、だ。
それからブツブツ言っている。
俺が覗こうとすると嫌がるので何とも言えないのだが。
「.....その紙は何なんだ?」
「これは秘密だよ」
「.....そうかい」
言いながら俺達は商店街を回っているのだが。
随分と仲が良さそうにいーちゃんは話していた。
商店街の人達と、だ。
俺はその姿を見ながら、すげぇな、と思う。
何でこんなに仲良く出来るのか。
羨ましい限りである。
「.....いーちゃんは誰とでも仲良くなるんだな」
「.....私?そんな事ないよ」
「.....いや。絶対に才能だわそれ」
「.....私の才能って小説を書く事ぐらいだよ」
「どういう小説なんだい?初耳だが.....」
「そうだね。恋愛小説かな」
それも初耳。
何故、恋愛小説なのだろうか。
思いながら.....俺はいーちゃんを見る。
いーちゃんは少しだけ赤面しながらもはにかむ。
そして.....俺の手を握ってきた。
「私.....はっちゃんとこうして歩くのが夢だったの」
「.....え?それってどういう意味なの?」
「.....秘密。あはは」
「.....もー」
秘密ばかりだな。
俺は困惑しながら.....歩く。
すると.....目の前の商店街の店。
そこで見慣れた.....顔が.....。
ドクン
心臓が死神の手でも撫でられた様な。
そんな感触に包まれる。
その少女は.....顔見知りだったが。
俺にとっては.....悪夢だったから.....だ。
何故この商店街に.....、と思う。
「あれ?.....羽鳥君」
「.....優子.....」
「わー。凄い久々だね。.....あれ?.....もしかして彼女さんとデート?」
「.....そうだね。.....何故、優子がこの場所に居るのかな」
いーちゃんもかなり警戒した顔になる。
俺を見てから、だ。
そうかいーちゃんは知らないんだな。
この.....長島優子(ながしまゆうこ)の事を。
同級生で.....赤いリボンで頭を結んでいる。
この子だけは会いたくなかったんだがな。
初恋を打ち砕いた.....からな。
思いながら.....俺は警戒心で優子を見据える。
「.....もう良いかな。.....俺は.....君とはなるだけ話したくない」
「えぇ?そんな事言わないでよ〜。久々に会えたんだから!」
「.....今更何を?俺の.....告白を砕いたろ.....君は」
「.....あれは砕いたんじゃないよ。.....君の事は本当に微妙だったから。告白してくるなんて思わなかったから。咄嗟に友達にキモいかも〜、とか言っちゃっただけじゃん」
「.....!」
そんな言いふらす真似を.....酷い、と呟くいーちゃん。
怒っている。
俺はその姿に頭に手を添える。
落ち着いて、と言いながら、だ。
「優子。.....俺は君と話す事はないよ。.....御免な」
「うん。まあそれならそれでも良いけど。.....ねえねえ。彼女さん」
「.....はい」
「.....この人とは付き合わない方が良いと思うけど。.....弱々しいですし」
「.....そんな事無い.....どういう理屈でですか!?最低ですね!」
「お父さんが居なくなったぐらいで.....弱々しいから。そんななよなよ男じゃないよ〜」
親を亡くした子供がどれだけ.....!!!!!
怒りに満ち満ちた感じのいーちゃんだったが。
じゃあね〜、と言いながらニヤニヤしつつ躱す様にそのまま去って行った。
あの人!絶対に許せない!!!!!、といーちゃんは悔い掛かろうとするが。
その姿に、落ち着いて、と言う。
攻撃するのは負けだから。
心臓が痛いけど。
「.....私は.....許せない。.....絶対に許せない!だってこんなにも.....良い人なのに.....!」
「.....正直。.....俺も悪かったんだと思う。だから君だけが怒っても仕方がないんだよ。過去は過去の事だ」
「.....でも.....でも.....許せない。.....私.....君が.....君が.....!!!!!」
ずっと好きだから!!!!!、と絶叫する。
商店街に響く声で真っ赤になりながら。
道行く人が驚く。
俺は驚愕して目をパチクリしてからいーちゃんを見る。
いーちゃんはハッとしながら火が点いたかの如くボッと赤面する。
それから俺を.....そのままジッと見てくる。
ご。御免ね、と言いながら、だ。
「.....初恋を砕かれたって話の直ぐ後なのに.....ゴメン.....」
「.....い、いや。いーちゃんは俺が好きなの?」
「私は.....うん。.....好き。.....はっちゃんが大好き。男じゃなくて女の子として。だから.....」
「.....そうなんだね。.....有難う」
俺はそれ以上は何も言えなかった。
涙目で震える.....いーちゃんを見ながら。
いーちゃんは、ずっと俺の事を野犬から守ってくれたから好きだったんだ、って告白してきた。
俺は胸が苦しくなる。
「.....その想いに気が付かなくてゴメン。ゴメン.....」
「当たり前だよ。だって隠していたんだもの。.....こんな事がきっかけになるって思ってなかったけど.....アハハ。良い事を多少はしてくれたかな。.....あの女」
「.....」
苦笑しながら俺を見てくるいーちゃん。
胸が苦しい.....というかこれは何と言うか、押し潰されそうに、ってなる。
残念ながらその想いには応えられない。
というか.....応えてはいけない。
俺は醜い。
それから俺は唇を噛む。
どうしたものか。
その様に.....思いながら叶わぬ願いに俯いた。
歯痒いもんだな.....。
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