第13話 夕日の覚悟
そんなこんなでいーちゃんとの。
林檎ちゃんとの。
燕ちゃんと時間はあっという間に終わってしまった。
色々あったのだがみんなで仲良くいれたのが良かったと思う。
思いながら.....去り際に燕ちゃんが俺に向いた。
「お兄さん」
「どうしたんだい?」
「私もお兄さんを手伝いたいです。お料理じゃなくても良いんですが.....」
「.....え?.....いや.....でも」
「夕日の事もあります。.....全部に気に障らない程度で良いんですが.....」
「.....分かった。君も来て良いよ。燕ちゃん」
それから俺達は握手した。
そしていーちゃんと林檎ちゃんと燕ちゃんは去って行く。
俺はそれを見送っていると。
後ろから声がした。
「良かったね。お兄ちゃん。昔の.....お友達に再会出来て.....」
「そうだな。.....全部.....親父のお陰かもな」
「そうだね。お兄ちゃん。.....ねえ」
「.....どうした」
「.....パンケーキ。また作ってね。お兄ちゃん」
そう言われて俺はビックリしたが夕日に頷いた。
それから夕日の頭に手を添える。
夕日は赤面していた。
恥ずかしいのだろうと思う。
俺ははにかむ。
「俺をまた好いてくれて.....有難うな。夕日」
「だってお兄ちゃんはお兄ちゃんだから。.....ヒーローだから。当たり前だと思うから。当時は子供臭かったね.....私」
「.....当たり前だよな。.....親父になろうとしたんだから。俺が」
「お兄ちゃんは必死にやってくれたよね。.....本当に感謝してる。.....お兄ちゃんの妹で良かった」
それから笑顔を浮かべてから、ちょっとしんどいから布団に戻るね、と言い出す。
俺はその言葉に、ああ。大丈夫か、と言いながら介抱した。
そして寝せてから.....俺は外を見る。
あっという間の夕暮れだな。
早いもんだ。
「.....明日は.....買い物か。.....いーちゃんとの買い物.....久々だな」
昔を思い出す。
小学校時代を、だ。
その頃.....丁度いーちゃんの男装している時だ。
一緒の帰り道で.....駄菓子屋に寄って買い物した時以来だな、って思う。
そして俺が小学校を卒業してから.....離れ離れになったのだ。
それから.....悪夢が始まった。
それもまた運命なのかもしれないけどな。
「ショートケーキ少女が.....まさかな。こんな馬鹿な事があるんだな.....本当に」
運命ってのは不思議なもんだな。
思いつつ.....俺はゆっくりと夕日を寝かせてから夕日を見つめる。
夕日の病状だがそんなに深刻ではない.....、と思いたい。
こんなに笑顔を浮かべているのだから、だ。
思いつつ俺は夕日を寝かせてから。
自室に戻ると.....何か俺の勉強机の上に手紙が.....置かれていた。
(お兄ちゃんへ)
そのタイトルを見ただけなのに。
俺は心臓を冷ややかな手で撫でられた感触になった。
何故か分からないが、だ。
俺は夕日を一瞥してから.....唾を飲み込んでから手紙を開ける。
そこには.....こう書かれていた。
(お兄ちゃんに伝えるのにかなり悩みました。だけど大好きなお兄ちゃんだから.....知っておいてほしいと思いました。.....だから伝えます。.....私の病状の事で、です。.....実は.....私の病状ですがあまり良くないみたいです。お母さんがお医者さんと話している姿を見てから。自分で調べてから。そう思いました。私はもしかすると余命があるかもしれません。こうして手紙で伝える事にしたのは悩んだ末です。そして説明が難しいので手紙にしました。お兄ちゃん。私は凄く怖いです。死ぬのがです。だからお兄ちゃんにだけは幸せになってほしいと思います。だからお兄ちゃん。もしこの先私が居なくなるとしても忘れないでね 夕日)
「.....」
この手紙には涙の跡がある。
幸せの形が.....抉れた気がした。
そして崩れ去る様な。
そんな音が耳元からした。
嗚咽を漏らしながら.....俺は号泣する。
だけど聞かれない様にしながら.....涙を流す。
嘘だろう。
思っていると電話が掛かってきた。
その相手は.....いーちゃんだ。
俺はグスッと鼻を鳴らしながら出る。
いーちゃんは、もしもし、と話してくる。
「.....ど、どうしたの」
『.....えっとですね。明日の.....どうしたの?鼻声ですよね?』
俺はギクッとした。
それから、な。何でもないよ、と話す。
すると、何でも無い事ないですよね、と心を支える様に言ってくる。
号泣した後の鼻声ですよ、とも、だ。
『.....何かあったんですか』
「.....何でもない。.....本当に大丈夫だ」
『はっちゃん。.....またそうやって1人で悩むんですか?』
「.....」
『.....はっちゃん。.....昔。私達が別れたのも.....それが原因だって.....忘れたの!』
いきなりだった。
敬語じゃ無くなった.....と言うよりも。
俺は別の意味でビクッとする。
確かにな.....この怒りかたをされるのも仕方が無い。
思い出した。
昔の事を、だ.....。
あの時もそうだったよな。
『一人で抱えるから全部失うよ!はっちゃん!!!!!』
「.....」
俺はスマホを握りしめた。
そして.....ありのままの全てを話す。
昔から何も変わってない俺に。
一筋の光を齎す様に、だ。
そしたら.....だが。
いーちゃんも泣いてくれた。
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