第5話 ショートケーキ少女の家庭事情(2)

よく考えたのだが。

全く良くない気がする。

この状況は、だ。


何がって.....俺が誘ったけどその。

仮にも同年代に近い女子を家にあげるとか......無いかもしれない。

しかも男の家に、だ。

軽率な行動だったかもしれない。


「.....」


「.....」


蛍光灯の光の下。

何を話したら良いのか.....全く分からない状況である。

互いに俯く。

いかん恥ずかしい。

気まずい感じだ。


俺自身も女子を家に入れる事自体が.....初めてなものだしな。

思いながら俺は目の前のモジモジしている佐藤さんを見る。

佐藤さんは.....ずっと俺の部屋の中を見渡していた。

落ち着かない様だ。


「私.....その.....男の子の家に入るの.....初めて?です.....」


「.....俺も初めてだ。女の子をこの家に入れるのは」


「.....その.....大変な人生を歩んでいるんですね。羽鳥さんも」


「.....俺はまあ大変だけど.....君よりかは大変じゃないよ」


「.....そ。そんな事無いです。.....羽鳥さんの方が大変だと思います」


佐藤さんは俺を柔和に見てくる。

俺はその姿に首を振る。

それから.....笑みを浮かべる。

そして佐藤さんに向く。


「俺は.....大変だけど俺には家族が居る。.....だけど君は違う。.....君は.....毒親なんだろ?.....君よりかはマシだよ。まだまだ」


「.....はっちゃん.....」


「.....はっちゃん?」


「!!!!?.....な、何でもないです!!!!!」


佐藤さんは真っ赤になりながら俯く。

目を回しながら.....だ。

いきなり、はっちゃん、と言われて驚愕だ。


俺は思いながら佐藤さんを見る。

すると佐藤さんは、すいません。お手洗い借ります!、と立ち上がる。

俺は行き道を教えると。

それからそそくさと去って行った。


「.....?」


何か本当に首を捻る事しかないな。

思いながら俺は首を傾げながら.....目の前を見る。

そこに写真があった。


昔の生き別れた少年との写真だ。

それを写真立てに入れている。

その事に思い出す。


「.....そういえば.....懐かしいな。アイツも.....はっちゃんって言ってたな」


『羽鳥だから、はっちゃんだよ!』


俺はその言葉に.....俺は懐かしく思う。

会えるなら会いたいって思うが.....一回別れたら厳しいよな。

だけどそれでも。

俺は伝えたい思いがある。

何時も助けてくれた.....その少年に、だ。


「.....アイツが居たから.....何もかもの気持ちが軽減したよな」


そう。

アイツが.....助けてくれたのだ。

考えながら.....俺はその思いを思い出しながら俺は目の前を見る。

そうアイツは今は居ない。

だけど俺は.....歩み出せる筈だ。


「俺は.....」


そう思っていると。

佐藤さんが戻って来た。

その顔は落ち着いている様に見える。

そんな姿に、落ち着いた?、と聞いてみる。

佐藤さんは頷いた。


「.....落ち着きました」


「.....そうか。良かったよ。.....君が落ち着くのが一番だと思うしな」


「.....」


すると。

佐藤さんはいきなりグスグスと泣き始めた。

かなり驚愕しながら俺は、どうした!?、と聞く。


すると佐藤さんは、本当に優しい人だなって.....思ったんです、と涙を拭う。

うちの父親と違うから、とも、だ。

俺はその姿に驚きながら.....ティッシュを渡した。

少しだけ.....複雑な顔になる。


「もう嫌。.....帰りたくないです。私.....」


「.....そうしてあげたいけど.....それは無理な話だよ。帰らないと.....」


「.....私.....羽鳥さんの傍に居たい」


「.....駄目だよ。.....その気持ちは分かるけど.....今の状況だって.....有り得ないしかなりマズいと思うし」


「.....ですよね」


悲し気な顔で俯く佐藤さん。

そんな顔に、でも、と俺は呟く。

それから少しだけ身長の低い佐藤さんの目線に膝を曲げて目線を合わせた。

そして笑みを浮かべる。


「.....そんなにイヤだったらたまに来たら良いよ。ここをずっとシェルターにしたらいいよ。俺は何時でも君を受け入れる」


「.....え.....あの。何でそんなに優しいんですか?羽鳥さん.....」


「.....優しい.....か」


胸で受け止めてみる。

佐藤さんを、だ。

優しいのかは分からないけど.....でも。


何か腹立たしい嫌な気持ちになる。

彼女が.....彼女の家に居る事が、だ。

俺はそういう思いで.....居るんだろうきっと。


「.....俺は絶望とかが嫌いなんだ。.....だから.....きっと君を守りたいんだろうね」


「.....そうなんですね」


「それに君がコンビニに来てくれる。.....君の顔を見れるしね。またこれからも来てくれるかな。.....友人として守るから」


「.....はい。.....はい!嬉しいです!」


そして俺はゆっくり佐藤さんを放してから笑みを浮かべる。

良かった。仮にも笑顔を見せ始めたな。

思いつつ.....居ると。

また佐藤さんは再びモジモジし始めた。


「.....そ、その。.....羽鳥さんの手。握っても良いですか」


「.....え?何故?」


「.....い、良いですから。.....お願いです」


「.....わ、分かった?」


それから佐藤さんは俺の手を握る。

そして笑顔を浮かべて俺を見てきた。

涙目だったが.....はにかむ様に、だ。

俺はその姿に一瞬だけ.....ドキッとした。

何故こんな事をするのか全く分からないが.....心臓がバクバクする。


「.....佐藤さん?.....その。.....離してくれないと熱い.....」


「.....熱くしているんです」


「.....???」


潤んだ唇。

そして同じ様に潤んだ瞳。

吸い込まれそうな。

まるでキスしたくなってしまう様な。

そんな感じだった。

いかん!

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