第4話 ショートケーキ少女の家庭事情(1)

ショートケーキ少女。

佐藤苺さんという少女のあだ名だ。

何故その様なあだ名なのか。

それは簡単だ。

コンビニのレジで俺の時だけショートケーキだけを買って行くから、だ。


何故かは分からない。

俺は時折見るその少女の事が気になっていた(別に恋を抱いている訳じゃ無い。気になっているとはつまり何故ショートケーキだけ買って行くのか、と思っている)。

俺は恋愛は決して出来ない。

出来ないのは何故かといえば.....俺自身が醜いと思っているから、だ。


だからショートケーキ少女は多分.....俺の人格が好きなんだろうと。

そう思いながら.....の日々だった。

するとある日の事。

財布を忘れた事がきっかけでショートケーキ少女と初めて話す時が来てから。

ショートケーキ少女は俺に接近してきた。


(カフェでお話ししないですか)


そんなお誘いが来るぐらいに、だ。

俺はビックリしながら.....その文章を読みつつ。

またショートケーキ少女の佐藤さんと一緒に帰った。

その姿はまるで恋人の様であり。

俺は少しだけ緊張した。


「その。佐藤さんは何故俺をカフェに?」


「.....ヒミツです」


「?」


俺は佐藤さんを見つめる。

少しだけ紅潮しながらマフラーで顔を隠す。

その姿に少しだけ赤くなる。

それから帰宅しながら.....俺は分かれ道で佐藤さんを見る。

佐藤さんは笑顔で手を振って俺を見てくる。


「また.....また会えますよね」


「.....そうだな。.....会えると思うよ」


「.....えへへ。で、ですね。じゃあ.....」


佐藤さんは嬉しそうに去って行く。

初めて出会ってから。

随分と進化したものだな。


思いながら俺は天を見つめる。

星空が間も無く広がりそうである。

俺は.....その光景を見つつ。


「.....恋か.....」


そう呟きながら.....俺は白い溜息を吐いた。

それから歩き出す。

俺は醜いしな。

恋なんてものは有り得ないしな。

考えながらそのまま家に着く。


「お帰り.....お兄ちゃん」


「.....ただいま。.....母さんは仕事だよな」


「.....うん。仕事だよ。.....今日もバイトだよねお兄ちゃん」


「.....そうだな」


「.....うん。.....あ。お兄ちゃん。ちょっとこっちに来て」


俺は妹に手招きされた。

それから.....俺は?を浮かべながら近付くと。

妹は俺の頭に手を添えてきた。

そして笑顔で頭を撫でてきてくれる。


「お兄ちゃん。頑張ってるね」


「.....お前.....」


「.....大好き。お兄ちゃんが。私の代わりに頑張ってくれるのが」


「.....有難うな。お前からの最大のプレゼントだ。嬉しい」


「.....もう私の今の体力じゃこれぐらいしか出来ないけどね。でもエールは贈りたい。.....だからこれぐらいはしないと」


俺は妹のでこに自分のでこをくっ付けた。

それから互いに笑顔を浮かべる。

コイツはやっぱり最高の妹だ。

どんだけの状態であっても、だ。

俺は.....考えながら.....ガシガシと妹の頭を撫でた。


「じゃあ今から飯を作るからな」


「.....うん。お兄ちゃん」


「.....何か食べたいのあるか」


「.....じゃあにゅう麺」


「分かった」


それから俺はにゅう麺を作ってから。

家事をし始めた。

これが俺の日課だしな。

それから.....早めに妹が寝てから.....俺は勉強をする。

そんな時に俺は気が付いた。


「しまった。食材が無いな」


明日の分の朝ご飯とかの食事の分が無い。

俺は考えつつ玄関の鍵を持ってから。

起こさない様にして近所の激安スーパーへ向かう。


その道のりで.....俺は公園でベンチ。

椅子に座っている少女を見掛けた.....あれ?

佐藤さんじゃないか?

俺はビックリしながら声を掛ける。


「佐藤さん」


「.....!?.....!?.....え.....羽鳥さん!?」


「もう20時だけど.....どうしたの?」


「.....あ。うん。.....その.....親と喧嘩して.....」


「.....?」


佐藤さんは俯いて悲しげな顔をした。

俺は迷惑にならない様に先のベンチの横に腰掛ける。

それから.....佐藤さんを改めて見る。

部屋着のまま.....飛び出したんだな、って思える。


「.....私.....その.....親が毒親なんです」


「.....え?」


「パチンコですってくるんです。.....お金。.....生活費も」


「.....そうなんだな」


「.....だから悲しくて。家を飛び出しました」


君に暴力は振るうのか、と聞くと。

佐藤さんは首を振った。

それから空を見上げてみせる。

そして佐藤さんはこう呟く。


「.....私.....唯一の楽しみが.....羽鳥さんと話す事とショートケーキを買う事です」


「.....それでショートケーキを.....」


「はい。お金が無いですから」


「.....君も大変だね」


「.....羽鳥さん程じゃ無いです」


そして、でもどうしようかな。家にパチンコのお父さんが居るから帰れない、と呟いてみせる。

俺は顎に手を添える。

しかし未成年の女の子を連れて家に行くのもな。

思いながら俺は直ぐに電話する。


「あ。母さん。.....その」


「?」


俺の母親に、だ。

佐藤さんの件で許可を貰えたら、と思ったのだ。

すると母親は事情を理解してくれたのか、良いよ、と電話で言った。

俺は、有難う、と言いながら電話を切る。


「佐藤さん。.....俺の家に来るか?今だけ」


「.....え!?え!!!!?」


真っ赤に染まる佐藤さんの頬。

ボッと火が点灯した様に、である。

俺はその姿に、大丈夫。今だけだけだから、と笑みを浮かべて言い聞かせた。

それから俺はそのまま俺の家に佐藤さんを案内する。

佐藤さんは、お。お邪魔します、とカチンコチンに緊張しながら入って来る。


「.....寒いだろうしな。.....ごめんな。ボロ臭い家で」


「い、いえ。.....う、嬉しい.....」


「え?」


「い、いえ!何でもないです!」


この1月の寒い空の元で外に置いておくわけにはいかないだろうしな。

思いながら俺は.....佐藤さんを案内する。

すると佐藤さんは寝ている妹に気が付いた様に俺を見る。

そして首を傾げた。


「.....ああ。俺の妹だ。.....少し病弱で寝ているんだ」


「そ。そうなんですね.....」


「.....俺の部屋に来たら良い。取り敢えずは」


それから佐藤さんを俺の部屋に案内した。

そして佐藤さんは座ってから俺を見上げてくる。

あ。有難う御座います、と言いながら。

俺は、構わないよ、と笑顔を浮かべてから、それはそうと何か飲む?、と話した。

すると、佐藤さんはお構いなくです、と答える。


「.....そんなに緊張する?やっぱり」


「.....そ。そうです.....ね。はい!うん、あ、はい!」


佐藤さんはぶんぶんと手を振る。

真っ赤になりながら。

耳まで真っ赤のまま俺を見てくる。


何というかその。

反応がやたらにおかしいのだが。

俺は目をパチクリしながらも。

そのまま飲み物をゆっくり飲み物を取りに行った。


「.....やましい気持ちにならない様にしないとな」


絶対に配慮しないと。

思いながら.....そのまま寝ている妹の傍を通り。

佐藤さんの元に暗い部屋の中戻る。


そして.....佐藤さんに接する。

佐藤さんはニコニコしながら.....緊張しつつも俺を見てきていた。

笑顔で、だ。

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