第3話 お誘い

俺ん家がそれなりに貧乏だという事を.....クラスの中では色んな奴が知っている。

というか全員知っているかも知れないが。

それだけ.....クラスメイトの間では有名な話である。

その事に関して、恥ずかしさ、とか、勘弁してくれ、などとは思っていない。

恥ずかしいとかそんなのも無い。


だけどまあ.....色々クラスメイト達がカンパしてくれるのは.....控えたい所ではあるんだがな。

しかし今日のクラスメイトは完璧な敵である。


授業中の事だ。

消しカスが飛んできた。

紙も、だ。

おまけにパン屑まで。


おまけに男子、そいつら全員が黒板では無く俺を睨んでいる。

何しやがるというよりも。

非常に困ったもんだな.....。


全く、と思いながら俺は山根に丸めた紙をぶん投げる。

それから山根の頭にショットさせた。

アイツ寝てやがる。


「.....むにゃ.....」


「.....起きやしない。.....いい御身分だな.....本当に」


そうしていると。

背後から威圧を感じた。

良く見ると.....数学の教師が俺を目下睨んでいる。

中年のオッサンなんだが.....。

そして俺の頭を引っ叩いた。


「楽しそうだな。お前と山根は」


「.....いや。楽しく無いっすよ?.....それにクラスメイトが悪いっすこれ」


「.....ふーむ。そうかそうか。.....まあどっちにせよ廊下に立ってろ」


「.....あ、はい」


クラスメイトは笑いを堪えている様に見える。

俺はその姿に、畜生め、と思いながらそれでもまだ寝ている山根と共に廊下に出されてしまった。

その事に流石の山根も起きた様に反応した。

何が起こった?、的な感じをしている。


「.....どうした?これは何が起こっている?」


「.....全てお前のせいだけどな。.....寝るんじゃねーよ。ったく」


「.....そうか。俺のせいか.....済まなかった」


「潔く謝るんならさっきの件も謝れこのボケナス」


何コイツのこの清々しさ。

本気で殺したくなっちゃうよ?

思いながら俺は額に手を添えて盛大に溜息を吐いてから。

山根を睨みつける。

そんな山根はヒラッと躱しながら、さっきの子。むっちゃ可愛かったな、と笑顔をニヤッと浮かべる。


「.....そうだな。苺っていうらしいしな。ショートケーキ少女だ」


「そうなんだな。.....まあどっちでも良いけどさ。お前はアタックしねぇの?マジに」


「.....俺は醜いからな。.....お前でもアタックしてやれ」


「馬鹿言え。あの子は多分.....お前が好きだぞ」


「.....何寝言、言ってんの?お前有り得ないだろ。何処に惚れられる部分があった」


うーん。

お前は犬からでもその少女を救ったんじゃ無いのか?

と顎に手を添えて俺に向いてくる。

ナイナイ。


俺は否定しながら首を振る。

それだったらもっと有り得ない。

俺はそんな根性無い。


「.....じゃあ昔の同級生とか?」


「.....あんなに可憐な奴は見た事ねぇよ」


「うーん.....ってかそう言えばお前.....男友達が居たんだろ?その子って事は.....」


「ますます有り得んわ。.....男だぞアイツは。山根。止めようぜ。下らない」


「へいへい。お前が言うならな」


俺の幼い頃の友達.....がねぇ。

それが女の子?

有り得ないな。

思いながら俺は.....後頭部を掻く。

すると山根が、あー。俺も恋をしたいなぁー、と苦笑した。


「.....お前好きな奴とか居ないのか」


「.....俺はシングルだ。永遠にな」


「.....ならショートケーキ少女にアタックしろよ。.....先ず有り得るかもだぞ」


「アホ言え。それはお前のだ」


「何で俺のものになってんだ」


「絶対に惚れてるって。お前に」


いやいや無い無い。

その勘違いが全て壊れたんだけどな。

俺は思いながら苦笑いで受け流す。


なんつうか。

面倒臭いのはゴメンだしな。

すると教室のドアが勢いよく開いた。


「コラァ!!!!!煩い!」


「あ、すまないっす」


「だな.....」


そんな感じで平謝りしながら。

俺は.....いや。

何というか山根と俺は苦笑した。


それから.....廊下に立ったまま今日の事を考える。

今日のアルバイト.....また来るかな。

あのショートケーキ少女は。



「ショートケーキ一つ」


「.....やっぱり来たんですね」


「.....は、はい」


「有難う御座います」


俺は笑みを浮かべながらショートケーキのバーコードを読み取る。

それからビニールに入れて.....、としていると。

俺に何か紙を渡してきた。

そしてショートケーキを受け取ってから俺にウインクをする。

その姿に?を浮かべながら.....佐藤さんが去った後に紙を見る。


「.....えっと。.....『今度.....1月25日にカフェに行きませんか』.....え?」


ビックリしながら顔を上げる。

コンビニの窓の外。

そこに佐藤さんが赤くなって立っていた。


すると.....同時に。

メッセージが俺の携帯に入ってきた。

俺は業務中なので.....携帯は見ない主義だが.....取り敢えずと思い佐藤さんを一瞥して隠れながら携帯を見る。

そこにはこう書かれていた。


(是非、待ってます)


「.....?」


そんな感じで可愛い顔文字と共に書かれていた。

俺はビックリしながらも.....高速で返事を打ってから。

返信をしてから.....そのまま。

俺は業務に戻った。


窓の外では.....嬉しそうな佐藤さんが居る。

何て打ったか?

そうだな。

構わないと入力しただけなのだが。

あんなに喜ぶものなのか.....?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る