第2話 妹の為に(編集)
この年齢の癖に肩凝りに悩まされている。
だけど.....コンビニバイトはやはりやり甲斐はある。
その事が.....俺は幸せと感じている。
俺がこういう事をするから.....周りは明るくなるのだと信じたい。
アイツも.....いつか俺を見つけてくれるかもしれない。
思いながら俺は.....目の前の病弱な妹を介抱する。
少しだけ痩せながらも.....笑顔の甘い感じを出す妹を真剣な顔で、だ。
「お兄ちゃんお帰り」
「.....大丈夫か。夕日」
「.....うん。大丈夫だよ」
俺の家はアパートでの母子家庭だ。
母さんは夜の働きに出ている。
所謂.....ホステスだ。
アパートは築30年を超えているが.....住み心地は良い。
俺には妹の羽鳥夕日(はとりゆうひ)が居る.....のだが。
顔立ちは幼いながらも笑顔の絶えない美少女だ。
そして髪はボブにしている。
本人曰く、介抱の際に邪魔になるから、だそうだ。
今、中学2年生だが今は病気を患って.....家で休んでいる。
学校にはかれこれ1年近く行ってないので.....中学1年生から学校の成長を知ってはいない。
友人も居るらしいけど.....病気に配慮して来てはいない。
たまに来ているらしいが。
俺がバイトの時に、だ。
実の所だが俺達はお金が足りなさ過ぎる。
俺はこの夕日の為に働いている部分もあるのだ。
母親だけの金銭では足りないから、だ。
それに.....家賃も賄う必要がある。
「.....でも私は良いけどお兄ちゃんが体調を崩さないか心配」
「俺は死なないさ。.....お前を見守る役目があるからな」
「.....それでも心配。.....でもそう言うお兄ちゃんが好きだけどね。私は.....貴方の事は尊敬のお兄ちゃんだと思ってる」
「.....そうだな。.....兄は妹を守る役目があるからな。だから当たり前の事をしているだけだよ。全然心配する必要は無いから。今はな」
その言葉に、相変わらずだね。お兄ちゃんは、と夕日は柔和に笑みを浮かべる。
そしてニコニコする。
そんな夕日とは裏腹に.....俺は少しだけ眉を顰める。
それから.....夕日を見つめる。
夕日の病気は.....実は治らない。
治らないというのは.....そうだな。
心臓系の疾患だ。
過呼吸に突然なったりするのだ。
そうしているとお茶を飲んでから少しだけ知りたそうな顔で俺に向いた夕日。
「.....そういえばお兄ちゃんは.....少しは和らいだ?」
「.....俺が醜い事か?」
「.....そう。.....強迫観念だよね。大丈夫?」
「.....大丈夫。俺は醜いさ」
夕日はその言葉に、そんな事無いと思うんだけどな、と苦笑する。
冗談混じりだろうけど。
俺は、そんな事もあるんだ、と苦笑する。
ふと、昔を思い出そうとするが。
ショックで思い出せなかった。
全てを.....思い出せない。
それは逃げなのかもしれないけど.....でも。
マジに思い出せない。
強迫観念か.....まあ確かにな。
病院にでも行くべきなのかもしれないけど。
それは俺じゃない。
行くべきは俺の妹だ。
俺は妹の為に居るのだ。
「.....あのね。お兄ちゃんは背負いすぎだよ。色々と.....」
「.....背負いすぎか.....それも言えるかもしれないけど。.....でも俺は背負っているつもりは無いんだけどな」
「.....背負っているよ。.....私の大好きなお兄ちゃんが」
「.....そう言ってくれるお前は.....女神だな。本当に」
それから俺は妹の頭をゆっくり撫でる。
妹はニコニコしながら、有難う、と言いながらまた横になった。
俺はその中で食事の準備を始める。
妹に優しい料理を、だ。
随分と慣れたな。
こういう作業に俺も.....。
初期の頃は.....全然駄目だったのにな。
真似ばかりで.....だ。
☆
翌日の事だが。
登校をする為に歩いていると。
曲がった角の先で、うわ、とか、すげぇ美少女、とか声がした。
俺は?を浮かべて見てみると.....そこにブレザーを着た佐藤さんが立っている。
何か俺を見て笑顔で声を掛けて.....え!?
驚愕しながら俺は佐藤さんを見る。
何をしているんだ!?
「あ!羽鳥さん」
「.....どうしたんだ?.....何故ここが?」
「.....えっと.....悪いとは思いましたが.....生徒手帳を落としてまして中を見て.....この場所に届けに来ました」
「.....そ、そうなんだ。しまった。気が付かなかった」
「はい。大変恐れ入ります」
そして生徒手帳を返してくる佐藤さん。
俺は頬を掻きながら.....その生徒手帳を受け取ってから。
すまないな。俺もドジだな、と苦笑する。
中を見られてしまったな、と思いつつ。
その言葉に、ふふふ、と笑う佐藤さんだったが.....。
すると背後からいきなり蹴られた。
「コラァ!!!!!テメェ何時の間にそんな美少女の彼女作った!!!!!」
「うわ!何すんだコラ!山根!」
ドロップキックを打ちかまして来た少年。
俺の親友で腐れ縁.....いや。
もう今から友人ではない.....このアホは。
思いながらジト目で山根大吾(やまねだいご)を見る。
山根は目を逆三角形にして怒っている。
「貴様.....裏切ったな」
「裏切ってねぇよ。.....お前な。人の話もろくに聞かずに.....」
「喧しいわ!羨ましいわ!」
「話を聞けボケナス!」
そんな言い争いをしていると。
俺の背後に何時の間にか佐藤さんが隠れている事に気が付いた。
ビクビクと小動物の様に、だ。
その事に掴んでから山根の首を絞める。
お前のお陰で怯えているからな、と。
「く、苦しいんだが.....」
「当たり前だ。キツく締めているからな。.....ったく反省しろってのこのボケナス」
黒縁メガネを直しながら山根は俺を見てくる。
にしても誰だ?じゃあ、と聞いてきた。
生徒手帳を落としていたから届けてくれたんだ。
佐藤さんっていうんだ、と俺は紹介する。
その佐藤さんはぺこっと頭を下げた。
「.....俺は山根大吾って言います。.....でもその制服.....花盛岡女子高校の制服ですよね?.....ここから五分ぐらい離れている.....ふーん.....届けて.....ねぇ.....」
「山根。頼むから.....お前もう先に行け」
「怪しいなぁ.....」
怪しく無いって。
コイツのせいで怯えている。
山根は、まあどっちにせよ、と膝と尻を叩いて立ち上がる。
それから笑みを浮かべて、イチャイチャも良いがお前も早く来いよ、とニヤニヤしながら手をヒラヒラさせて行ってしまった。
俺は額に手を添える。
「.....ったく」
「.....あ、あの」
「.....何だい?」
「.....その.....その」
「.....?」
私も山根さんの様に是非ですが.....羽鳥さんとお友達に.....なりたいです、と俺に向いてくる佐藤さん。
俺はビックリしながらも笑みを浮かべた。
構わないよ、という感じで、だ。
佐藤さんは満面の笑顔で俺に向く。
有難う御座います!、と。
「もっと話をしたいけど.....俺、学校あるから。.....有難う」
「.....あ。はい。私も小走りで行きますし.....有難う御座います」
「.....」
嬉しそうに去って行く佐藤さん。
それからその場で俺達は別れた。
そしてこの後、教室に行くと俺を殺して懸賞金のウォンテッドの紙が貼られていた。
山根がクラス中に噂を撒いていたから、だ。
まあバレていたかも知れないが.....なんて事をしてくれたんだ。
アイツやっぱ殺すわ。
全く.....。
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