コンビニでバイトをしている俺だが必ず俺の元でショートケーキを買っていく美少女がいるのだが
アキノリ@pokkey11.1
ショートケーキの天使
何故かショートケーキだけを買って行く少女
第1話 ショートケーキ少女(編集)
コンビニバイトはそんなに楽じゃ無いと思っている。
手を抜いてもいけない職業だなって思う。
実際に働いている人間が言うのだから.....間違いは無いだろう。
そもそもに手を抜く場所などあるのだろうか。
俺、羽鳥夕(はとりゆう)、高3。
何とかギリギリだがシフトを打ち込んでコンビニバイトをやっている人間。
凡人。成績普通。身長普通、秀でる所が無い。
強いて言えば顔立ちが少しだけ整っている部分か。
それなりのイケメンとは言われているが。
荷出しにレジ打ちに女の子のスカートがしゃがんで地面についても汚れないぐらいの思いでの店内清掃。
それからトイレ掃除に商品管理に商品補充.....と。
本当に仕事は楽じゃ無いと思う。
コンビニバイトは.....多分全てのアルバイトの中で最も几帳面なやり甲斐が出来てしまう仕事だろう。
そこら辺の若者はこう思っているかもしれない。
レジ打ちをしていればそれで良いって、だ。
だけどそんな甘い理由で給料は貰えない。
大体は全てが氷山の一角の思いで俺はこなしている。
俺はレジの業務とか.....お金の計算とか.....それにお年寄りへの配達とかも.....やっているのだ。
金銭を預かったり数えたり、だ。
そんな俺だが唯一楽しみな時間がある。
それはバイトの休憩時間。
俺の生徒手帳に挟まっている.....友人と撮った写真を見る事だ。
事情があって離れ離れになってしまった.....友人の事を思う。
俺は頷きながら妹の為に今日も働く。
休憩が終わってから、だ。
もう出会う事の無い友人を思いながら、だ。
「.....」
「羽鳥君。シフト戻ってもらって良い?」
「あ、はい」
俺は返事しながら生徒手帳に挟まった写真を仕舞いながら。
シフトに戻っていく。
今日も明日も変わらず、だ。
☆
翌日.....ああ。そういえば聞いてほしい。
そんな感じの忙しない俺だが.....このバイトをやっている中で一つだけ気になっている事があるのだが.....聞いてほしい。
顔が見た感じ客の中で最も整い過ぎた美少女で黒髪の長い髪。
美しい凛とした奴が居る。
あまりにも無表情だが.....美しいと表現すべきか。
その美少女はこのコンビニに足繁く来る。
それも俺がバイトを始めて必ず一分後に来てから特定の物を必ず一個だけだが買って行くのだ。
その物品とは、ショートケーキ、である。
毎回買っていく。
これがかれこれもう1年ぐらい続いている.....。
俺は首を傾げながらの春夏秋冬。
変わっていくその少女の制服を見ながら.....顎に手を添える。
謎だな、って思いながら。
コンビニスイーツってやつだが.....好きは好きで分かるが.....。
俺はそこら辺は鈍感なのでよく分からない。
話した事もないのだが.....無表情で声を掛け辛いし。
それにあまり興味も無いが.....ショートケーキを必ず特定のこの時間に買っていく。
かなり不思議に思っているのだ。
そんな感じの年も1年明けての1月。
今日も来るかな、と思いつつ荷出しをやりつつお金の計算を行ったり。
商品を置居たりしてからタバコを売り場に収納したりする。
そして白い息を吐いていると。
一分経ってからやっぱりブレザー制服姿の女子高生。
その凛とした少女がコンビニに入って来た。
蝶の髪留めを背後に付けている長い黒髪の美少女。
相変わらず美少女だな。
薄化粧でも似合いそうなぐらい凛としている。
無表情だが、だ。
(.....やっぱり来たか)
俺は心で考えながらレジに回る。
少しだけ黒い短髪を弄りつつコンビニのおでんを整理して作ったりして.....惣菜を作って待っていると.....やっぱりショートケーキを持って来た。
相変わらず1個だけ、だ。
横の別のレジには店員としてリーダークルーの先輩のおっちゃんがいる。
全ての店員の中でも俺は基本的にレジ打ちは遅い方だ。
慣れてないから、であるが。
それなのにわざわざ俺の方に並ぶ黒髪の美少女。
今日もやっぱり買っていくんだな、と思っていたのだが.....驚いた声がした。
「.....あ.....大変。.....財布忘れた.....」
言ってから美少女は無表情を崩し慌てる。
俺はかなり見開いた。
この1年の間でそれは初めてだ。
そのきっかけもあり俺は話し掛けてみる事にした。
本来ならガチにこういう技は禁忌なのだが.....だ。
そのままビニール袋に商品を詰めてからレジを開けてお金を入れる。
「良いっすよ」
「.....え?」
「.....俺のお金で賄うんで。.....持って行って下さい」
「.....で、でも.....そういう訳には」
「.....良いから。.....何時も買って行ってくれて有難う」
俺はゆっくり頭を下げる。
それから俺は笑みを浮かべた。
そしてそのまま美少女にショートケーキを渡した。
それから見つめる。
美少女は俺に赤くなる。
「.....是非また.....来て下さい」
「.....あ、有難う。.....この恩は忘れないです」
美少女は俺に頭を下げて笑みを浮かべた。
笑顔の、歯に噛む様な、だ。
俺はこの1年で初めて見たその姿に少しだけ紅潮しながら。
そのまま頭をまた下げて見送る。
自動ドアを開けてからそのままこっちに手を振って立ち去るショートケーキ少女。
盛大に溜息が出た。
「.....やれやれ。何であんな事を言っちまったのか。.....貴重なお金を。俺も馬鹿だねぇ」
初恋を打ち砕いたあの女の事もあるのにな。
それからその少女を見送った後。
コンビニで仕事を続けて.....そのままバイト上がりの午後六時を迎えた。
今日も帰ってから勉強をしなくちゃな。
妹も待っているし。
思いつつ.....そのまま自転車に乗ろうとした.....のだが。
側から声を掛けられた。
それは.....聞き覚えのある声だ。
陰から聞こえた。
そして少女が赤くなりながら顔を見せる。
「あ、あの」
「.....!?.....君.....確かショートケーキ少女さん」
「.....それは私の事ですか?」
「そうだよ。.....だって.....名前を聞いてないから.....っていうかずっと待っていたの!?まさか3時間ぐらい!?」
「はい。.....ずっとお礼がしたくて」
お礼って.....そんな馬鹿な。
もう周りは結構、薄暗い。
3時間ぐらいも待っていたのか!?
俺は驚きつつ、とにかく帰った方が良いよ、とアドバイスをする。
するとショートケーキ少女.....がこう言ってきた。
私、言い忘れていましたが佐藤苺(さとういちご)って言います、と。
高校2年生です、とも、だ。
もし良かったら私と.....SNSを交換して下さい、と顔を赤くしながら言ってくる。
「.....え?.....え?」
「お礼の事、もっとしっかり話したいんです。お願いします」
「.....わ、分かった。うん」
俺は目をパチクリしながらスマホをすぐに出した。
佐藤さんは慌ててスマホを取り出す。
それから俺達はアドレスを交換してから。
そのまま.....佐藤さんは嬉しそうに頭を下げた。
そして.....俺に柔和に向いてくる。
マフラーで口元を隠しながら、だ。
ああそうか佐藤さんのせいで暑いけど.....仮にも1月だしな。
そりゃそうだ、って思う。
「.....じゃ、じゃあ.....」
また会えて嬉しいよ。はっちゃん。
そのまま佐藤さんはそう呟いた様に言いながら口元にスマホを添えてニコニコしながら去って行く。
詳しくは聞こえなかった。
口元がそう動いた様に見えただけで。
俺はその姿に少しだけドキッとしながらも.....首を振った。
それから苦笑する。
いかんいかん。
醜いからな俺は。
初恋を砕かれた以上は.....そうなるのはゴメンだな。
それから佐藤さんを見送ってから。
俺は自転車を転がして夜空を渡り歩く。
これが.....佐藤さんとの初めての出会いだった。
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