家具屋と木樵

 家具屋が桐箪笥きりたんすの注文を受けたので、山小屋に行って年老いた木樵に桐の木を切るよう言いつけた。

 翌日木樵が木材を納入したが、それは桐ではなく栗だった。家具屋は嘆息した。

「おいおい爺さん、耳が駄目になってるんじゃないか。クリじゃなくてキリだよ、欲しいのは」

 木樵は憮然として言い返した。

「確かにわしの耳が遠いので聞き間違えたのかもしれんが、目はまだハッキリ見える。書面にして依頼してくれていれば間違える事はなかっただろうよ」


 このように中途半端な指令は二度手間をもたらす。

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