熊と狸

 その山では熊があまりに暴れ回るので、山の動物達もふもとの人間達も困っていた。

 困った動物達は山小屋に狸をつかわし猟師に熊を退治してくれるように頼み込んだ。

 猟師はその頼みを渋々引き受けた。鉄砲をもって山に入り熊を見つけて撃ち殺した。


 熊が居なくなって山の動物達は喜んだ。宴をもよおし三日三晩踊り続けた。

 怖い熊が居なくなったので動物達はやりたい放題。

 山の中だけでなく、人間達の里にも出没しはたけを荒らすようになった。

 困った農夫達は猟師に動物を駆除するように頼んだ。猟師は二つ返事で引き受けた。

 こうして動物達は熊に代わって猟師に怯える事になったのである。

 困った動物達は狸を呼び出しこう言った。

「お前が猟師を呼ばなければ、こんな事にはならなかったのに!」

 こんな事を言われて山に愛想が尽きた狸は人里近くに住むようになった。


 大物が居なくなっても小物が大物に成り代われる訳ではない、という事をこの話は解き明かしている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る