杉と柳

 杉は自身が真っ直ぐに太ましく伸びる様を誇らしく思っていた。

 柳は自身が細身で貧相である事を気にしていた。杉が折あるごとに自身を誇って柳を腐したからである。


 ある夏の盛り、それまでにない強烈な嵐がやって来て森を撫で回した。

 杉は自身の全てに誇りを持っていたので、全身全霊で嵐を我慢した。

 対して柳は身が細かったので耐えようとはせず、根本ねもとだけは守り抜こうとした。

 嵐が去った後そこにはいつもと変わらぬ柳と、根本から折れてしまった杉の倒木があったとさ。


 突発的な事故が起こった時、剛直な者は折れやすく、しなやか者の方がやり過ごせる、という事をこの話は解き明かしている。

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