母になってはいけない女ども

 寝子ねこは死んでしまった。妻子ある男性にちょっかいを出してその子を孕んだら、彼の妻に刺し殺されたのだ。

 他馬子たまごは死んでしまった。夫ある身なのに他の男を受け容れその男の子を孕んだのだ。それに勘付いた夫によって絞め殺されたのだった。


 二人は閻魔えんまの前に連れてこられた。審判は勿論地獄行きだった。

 寝子と他馬子は異口同音に閻魔に尋ねた。

「あのひとはどこにいますか?」

 閻魔は二人に教えてやった。

「寝子が手出しした男なら世間から後ろ指を指されて肩身を狭くしておる。他馬子を殺した夫は逮捕され人の裁きを受けるだろう。お前達を狂わせた男はのうのうと生き永らえるだろうよ」

 それを聞いて二人はそれぞれ疑問を口にした。

「なぜ男を裏切らせたからといって、その男自身ではなく女の方が被害者にならなければいけないの?」

「なぜ男を裏切ったからといって、女から攻撃されなければならないの? 女はいつも被害者なのに、男を利用して出し抜いて何が悪いの?」

 哀れみを込めた目で溜息混じりに閻魔は答えた。

「お前達が男や女になる前は皆子供だったろう? 子供はどこからやって来る? 女の腹からだろうに。母親が間違う事を子供は何よりも恐れる。沽券に関わるからな。お前達のような女で在り過ぎた者が、母にならなくて本当に良かった」


 男を裏切っても男を裏切らせても、まずは女から狙われるという事を女は思い知らねばならぬ。

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