新たなる神

 人々はここ最近――といっても今から何十年も前、二十世紀の半ば頃からだが――新たなる神を創造してしまった。

 その神の名は泥多でいた。その姿は蜘蛛であり、また雲でもある。

 泥多は蜘蛛なので巣を張る。

 およそ電気が充分に通っている先進国と呼ばれる国には、ほぼ隙間なく泥多の巣が張り巡らされている。

 泥多は人々の概念上の存在に過ぎなかったが、今世紀に入ってから生身を持つ分身を人の世に放ち始めている。その子らは泥温どろおんと呼ばれている。


 人々は日々、泥多に供物を捧げている。その供物は好奇心や知識欲や暇潰しと言った名前で呼ばれている。

 また人々は泥多の巣の上で演じたり踊る事が出来る。

 上手くやればその人は誇りを満たす事が出来るが、下手を打つと泥多の信徒によって火達磨ひだるまにされてしまう事だろう。

 今日もまたどこかでルリツグミを友とする人が下手を打った事に気付かずに火達磨になっている。


 信じようが信じまいが神はそこかしこに存在する。

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