6話 本気で相手しても勝てる相手では無いそうです。
骨が折れる相手なのは間違いは無い。
何せ、ヤツが死なないからだ。
どうしたものか。
「かかってこいよ、雑魚」
等と挑発している。正直、あんなヤツに雑魚と呼ばれるのは釈然としない。
「来ねぇなら……こっちから行くぞ!」
単調な。突っ込んでくるだけの脳しかないのか?
剣を構え様としたときに若干の違和感を感じる。
待て、ヤツ……速くなってないか?
私は直ぐに盾を召喚して、ヤツの攻撃を防いだ。
ヤツの一撃が鋭く重かった。
「重いな」
ふと口から言葉が漏れる。
「フッ……まだまだ行くぞ!」
ヤツ、いやギネンからのラッシュ。
確かに速くなっているかも知れないが、まだまだだ。
受け止められるなら、
「反転」
ギネンが与えたダメージと私の力を加えて、ギネンへ返す。
「良いダメージだ。お返しに私の力も少しだけ加えておく」
ギネンの上半身が木っ端微塵に吹き飛ぶ。
しかし、何事も無かったかの様に再生をされる。
「その程度か?」
「はぁ……」
思わずため息をつく。
本当に……コイツ……。
「面倒くさい」
「死ねやァァァァァ!!」
勢い良く突っ込んでくるのは別に構わない。
全然問題無い程の実力だからだ。
数発攻撃しては反転、時には切り捨てる。
そんな事をしていて、かれこれ100回は越えただろうか。
本当に思う。
「多分、私はお前とは相性が悪い」
と、何故なら他のメンバーならギネンなぞ、他の方法で倒すだろう。
正直この場を去って、他のメンバーを召集させるのも手ではあるが……。
コイツは厄災王の一部が入っている。
もしここで、あえて見逃せば後々被害を考えると想像を遥かに越えるはず。
だからこそ、多少不利でもギネンを仕留めるしかない。
「そうか」
「ーーッ!グッ!!」
少し、ほんの少し油断した、とおもう。
その瞬間にギネンのヤツが瞬く間に私の懐へ飛び込んでいた。
殴られたのだろう。腹部に鈍い痛みが走る。
追撃を許さない為と威力軽減する為、後方へ飛ぶ。
「近づいて来たぞ、お前に」
「……ッ」
何処か、ギネンの雰囲気が違う。
ギネンの瞳は悟りを開いた様な、何処か静かな気配を感じとる。
この気配……コイツ……。
「越えたな?」
「ああ、越えたさ。だからこそ、分かる」
こちらに指を差してくる。
「お前ら人間という、劣等種が如何に弱いか良く分かる」
「……」
「どうした?何も言えないのか?」
笑えるな。
「フハハ……」
本当に。
「フハハハ!アーハッハッハッハ!」
「頭でも可笑しくなったのか?」
「いやいや、フフフ……世界最強の剣と盾使いに向かってその言葉が出るとは……!フハハハ!」
「……」
「フハハハ!ハァ……ふざけるのも大概にしろ……ッ!!この三下がァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!」
「吠える奴程弱い」
「だが、貴様と私の相性は最悪だ。他のメンバーなら容易いだろう。だがな、ここまで名を汚されては黙ってはおれん」
「ほう?で?どうする?」
「本気を見せてやろう」
剣を盾に収納し、そのまま地面に突き刺す。
目を閉じ、意識を集中させる。
沸き上がる魔力、そしてイメージを形に。
そして、修練で得たスキル……これらを一つにする。
洞窟内と言うのに突風が発生する。
「何だ?何故風が?」
「劣等種と言ったな?ギネン」
「な、何だ……その姿は……」
「本当に劣等種かどうか、確かめさせてやろう」
ーーーーーー
「本当に劣等種かどうか、確かめさせてやろう」
うわぁー!すご!何あれ!?
俺は突如フルアーマーを装着し、大盾と大剣を装備しているソイレーンさんに驚く。
「ハハハッ!!!まだ私と戦おうと言うのか?」
「正直に言おう」
「何?」
「貴様の能力が分からない以上……それに、泥沼化しているこの状況、勝てるか私は分からなくなった」
「ほう?それでお前は諦めて死ぬ、ということか?それは楽で良い!」
「無粋な奴だな。だからギルドで子供みたいに騒げるのだ」
「殺す、テメェは直ぐには殺さねぇ……!」
言った瞬間だろうか、ギネンは一気にソイレーンさんとの距離を詰めた。
だが、ギネンは何かにぶつかった。
「何だこれは!」
「障壁だ」
「クソ!」
ん?何かギネンの奴少し戸惑ってないか?
てか、待て待て……そもそもアイツの能力を調べてなかったな。
『― 干渉 ― 自身へ鑑定能力付与』でっと、どれどれ?
「何だこれ、厄災王の加護と死からの解放?どんな能力よ」
えー……何々? 厄災王の加護、超再生と不死の力の混合か。
で、死からの解放は……死の縁から生還した者は、上限を越え……更に力を……解放、出来る……だと!?
え?待て、それは非常に不味いんじゃないか?
ソイレーンさん、ギネンの奴を何回、いや何百回殺した?
それも上限は無いし、死ぬ程、復活して強くなる。
だから、ソイレーンさんは相性が悪いと感じているのか……。
「てか待て、ちょっと見ない間に何か……ギネンまた強くなってるよな?」
疑問に思い、干渉能力を自身へ使い、ギネンを解析鑑定する。
「猛毒状態!?アイツ自身で毒盛って死んで、強くなろうって魂胆か!」
徐々にだが、ソイレーンさんが押されていく。
本当にソイレーンさんは強い。
並大抵の冒険者なら、あの領域まで到達している相手に手も足も出ない。
だが、あの領域まで到達しているとなると、ソイレーンさんも。
「もう少し、もう少しだ!」
「グッ!」
「ーー!!届いた……届いたぞ!!」
「ハアアアアッ!!」
「甘いな!」
ソイレーンさんの放った攻撃をギネンは弾いた。
弾かれた攻撃は壁に当たり、壁が崩れていく。
壁が崩れていくなか、不自然にぽっかりと穴が空いた場所が砂ぼこりの舞う中少しだけ見える。
何だ、あの穴……。
砂ぼこりが無くなると、そこには、
「レイラにハート!?」
何故あんな所に!?干渉にも引っ掛からなかったぞ!?
驚くもあれだが、それよりもあの場所は危険過ぎる!
いくら竜帝と呼ばれ、世界に10匹しかいないレイラだとしても、今のギネンの相手は厳しすぎる。
毒で死んで強化され続けているギネンに、何か行動する前に倒される可能性が非常に高いからだ。
戦いに夢中になっていたのだろうか、ソイレーンさんとギネンがレイラとハートの方を向く。
「な?!ま、まさかそなた達は!」
「あー……?」
怯えて涙目になっているハートを、強く抱きしめるレイラ。
レイラが立ち上がり、ハートへ結界を張る。
そして、振り返りギネン達を見ようとした瞬間。
ギネンがレイラの真っ正面に立っていた。
は、速すぎる!アイツどんだけ強くなっているんだ!?
レイラが危ない!が、待て!まず、俺は奴に勝てるのか!?
闇雲に突っ走った所で何も出来ず、死ぬだけだぞ!
先ずは、自身へ敵意、脅威となる物全てを干渉で受け付けしなくする。
これでアイツの攻撃はどうにかなるか……?
思った瞬間、地面と共に轟音が響き渡り辺りが揺れる。
「お母さんッ!!!」
ハートの叫び声が響く。視線を戻すと、目を疑う光景がそこにはあった。
ソイレーンさんが壁に大きなクレーターを作り、制止しており。
レイラは身体中から血を流して首を掴まれ、持ち上げられている。
「んー?お母さん?コイツが?」
「離せ!お母さんに触れるな!!」
「ってことはぁー……お前、処女か?」
「だからなに!良いからお母さんを離ーーひッ……!」
ここからではギネンの表情は見えないが、ハートの表情と気配で分かる。
「奴隷商に渡す前に一発やっておくか。アハハハハハッ!!どんな何だろうなァ?竜人の穴は!さぞ、名器何だろうなァァァッ!!!」
等とゲスな発言をするギネンに苛立ちを感じる。
クソ! 自身への強化……!
俺はここで思い出す。自身への強化を今まで最大でやったことがない。
自身への干渉はいくらでも出来る。
だが、どれだけの反動が来るか……いや、そもそも反動が来るのかすら試したことが無い。
「にげ、て……ハー……ト……」
「ほう?ハートって言うのかぁーそうかそうかぁ……んじゃ、お母さんの前で子作りでもしようか、ハァトちゃん」
「い、いや!」
ギネンの手が結界に触れる。
だが、ガラスを割る様に簡単に結界が割れた。
考えている暇は無いッ!!!
俺は自身への強化を出来る限り最大まで強化を施した。
「さぁ、ハァトちゃああああん、子作りしましょうねぇぇぇぇぇ!」
「いや!やめ、離して!」
「ハハハッ!!!無駄だァ!ここには誰もこれやしねぇよ!」
服が破かれる音が聞こえた。
これだけだ!ギネンに干渉する場所はッ!!!
一回しか使えないのなら、これがコイツの脅威だッ!!
「ハァトちゃん、頂きま~す!」
「ーーッ!! 助けてミナトーーーーッ!!!」
タイミング良く俺は石の壁を蹴り砕き、みんなのいるこの間へ突入した。
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