7話 本気で戦った事が無いそうです。
「ーーッ!! 助けてミナトーーーーッ!!!」
タイミング良く石壁を蹴り砕き、みんなの入る間へ入った。
「ミ、ミナトッ!!!」
「あ?何でテメェが」
俺はギネンを気にせず、ソイレーンさんの所へ向かう。
壁にめり込み、身体中から血を流している。
かなり重症だな。肋骨、腕、足、内臓がいくつか破裂してる。
干渉能力を自身へ使い、回復魔法の最高上位のヒーリング・リヴァイバルを使用した。
そもそも上位魔法の上の魔法は既に失われている。
だから、これを使える者はこの世界に多分俺位な筈。
ヒーリング・リヴァイバルはどんな状態でも、生きていれば必ず治す。
それも完全な状態で。
ヒーリング・リヴァイバルを受けたソイレーンさんは意識が戻った。
「……君は、ミナト……か?」
「はい」
「私は……ーーッ!!そうだ!ギネンの奴に一撃受けて、私は死にそうになって……いた……筈…じゃ、ない……の、か?」
ソイレーンさんは自身の手足を確認後、身体を触れる。
それからこちらを見る。
「な、何をした?」
「それは……後程ご説明します。ですので少しだけお休み下さい」
立ち上がり、ギネンの方へ振り返る。
すると、ギネンが口を開け驚愕していた。
「な、何故……アイツがピンピンしているんだ!何をした!!」
「さあ?教える義理は無い」
「くッ!答えろ!!さもなくば!」
ハートの首を掴み、首をへし折ろうとしていた。
俺はギネンに手のひらを見せてから、干渉能力を使う。
対象は俺とハートと間の空間。これを無くす。
「え?」
「は?」
ハートは俺の片腕に抱かれ、ギネンとハートは何が起きているのか理解不能だろう。
それから近くに横たわっているレイラとの空間を無くす。
手のひらをかざした後に握る。
これで空間が無くなるのだ。
瞬時にレイラが手の届く範囲まで近づいた。
俺はレイラに近付き、ヒーリング・リヴァイバルを使う。
「す、すまない……ミナト……」
「構わないさ。それよりもごめん、自身へ保険を掛けてた」
「良いさ、こうして……ピンピンしているからな!」
「お母さん……!お母さんッ!!!」
「あらあら、心配を掛けましたね」
話している間にヒーリング・リヴァイバルで完治したレイラ。
我が子を抱きしめるレイラの瞳には慈愛に満ちている。
そんな中口を開け、驚きのあまり硬直しているギネンの方へ振り返る。
「ギネン、もうやめろ」
「……驚いたが、貴様はただの雑魚だ」
「……そうだな。ソイレーンさんみたいに何か1つを極めた訳じゃないし、レイラ見たいな竜帝でもない。ただの普通の人間だ」
「そうだろう!だから、雑魚はひっこーー」
「ーーだけど、お前も人間だ」
目を丸くしながらこちらを見ているギネン。
「何を言っている?」
「お前は人間だよ、ギネン」
「違う、私は厄災王に選ばれた存在だ」
「なら何故お前はその格好をしている」
「私は選ばれた存在」
「答えになってないぞ」
「私は厄災王に選ばれた存在だ!」
「ならさ、ギネン……」
指を指す。
「何で仲間の証の短剣を持ってるんだ?」
「ーーッ!?」
「お前は力の誘惑に惑わされているだけだ」
「違う!」
「`それ、はお前力を貸し与えている」
「私は選ばれたのだ!!」
「`それ、はお前の事なんて気にしてない」
「厄災王様にッ!!!」
「……お前は優しい奴だよ、ギネン」
「ーーッ!?」
「器になる必要は無い、ギネン。今すぐ`それ、を解き放て」
俺の一言に黙り込むギネン。
徐々に身体を震わせる。
「何が分かる……ッ!!」
「分かるさ、俺はお前が最初に来た時の事を凄く覚えてる。そんとき俺も初めて来て間もない頃だったからな」
「……」
「見てきたさ、アンタを。……まぁ、正直言うならこの街は全体的に冒険者としてのレベルが低い。今はそんな事無いけどさ、それはギネン達のお陰でもあるんだ」
「何を、言って……」
「さっき言った通り、冒険者のレベルが低い頃、ちょっとでも強い魔物相手にはどうしようもなく、衛兵を呼ぶしか無かったこの街だけど、ギネン。お前達が来てから、そういう難しい仕事は全て引き受けてくれてたんだろ?」
「ちが、俺は金のーー」
「ーーそれだけじゃない筈だ。内容が重くて、報酬もそんなに美味しくない討伐依頼もやっていたのも知っている。本当に優しいパーティーだなって思ったのさ」
「……」
「そういう依頼をやってくれたから、冒険者が集まり、尚且つ人の行き来が多くなった。その分、仕事も増えた。俺の仕事はさ……ギネン、お前のお陰なんだよ」
本当は優しい奴なんだ、ギネンは。
けど、
「けど、人が増えてからは依頼も取られて、他の奴からは陰口を言われる。挙げ句の果てには受付嬢にすら。どうしたんだ、ギネン」
「……聞いただろう?俺が中央都市からの逃亡者と呼ばれる奴だ。逃げたんだよ、中央都市の依頼の難しさ、街の単価、人柄に。どうしようも無かった」
「……」
「己の力量の無さに心底嫌気が差した。そんな時、俺はこの街を見つけたんだ。楽だった、依頼も俺からしたら簡単でやれるだけやった。それで人が増えていき、そうしたらなんだ?俺は厄介払い見たいな扱い可笑しくねーか?」
「ギネン……」
「どれだけ必死にやったと思ってる?お前らが出来ない事をどれだけ、やったと……俺がどれだけ頑張ったか知ってるか!?」
普通の奴なら答えられないだろう。けど、俺にはこの能力がある。
書庫に干渉して依頼履歴、報告書は全て目を通してあるからこそ、
「知ってる、全て」
「ウソをーー」
「ーー初の依頼はコボルトの集団の討伐、その後コボルト大量発生による討伐、これをギネンと他二名で攻略。他にもあるぞ?」
「おま、何で……」
「言っただろ?俺はお前のお陰で仕事が出来てるって、言わば恩人みたいな奴だぞ?」
手を差し伸べる。
「ギネン、お前は厄災王何かの器になる奴じゃない、心優しいお前に戻れ。今ならまだ間に合う」
「……良いのか?俺は、お前をコケにしたりバカにした男だぞ?」
「そんなの誰にだってある。それに仲間がお前を心配しているし、受付嬢達だって言い過ぎたと言っているんだ。だから、戻ってこい」
ギネンが俺の手を取ろうと手を差し伸べる。
だが、
『イヤイヤ、貸したらしっかり返すのが普通だろォ?』
ギネンの手からどす黒オーラが放出される。
だからと言って俺に害は無いけど。
「な、なッ!?」
『力は貸し与えたんだ、ギネェン』
「し、知らない!」
『そう言う契約何だよォ……!』
ギネンの身体をどす黒オーラが覆っていく。
ここで干渉能力を使おうとしたが、一旦待つ。
1度使ってしまうと、もう一度使えないからだ。
『契約違反だァ……罰としてその身体ァ……我が肉体の器となれェ!!』
「た、助けーー」
『ーークフフフ!! クハハハハハッ!! 受肉した! 受肉したぞ!!』
額から2つの角が生え、肌は臼黒く、目の色は白い部部が黒く染まり、黒い部分が黄色に染まった。
格好自体はギネンに近いが姿をしている。
不適に笑う……アイツ何だ?
「ミナト、ここからは私が」
「下がれ、人間。赤竜帝が奴を屠る」
「「……」」
互いに睨み付け合うが、
「ごめん、2人ともここは俺に任せてくれないかな?」
「な、何を言っているのだ!君は、その……見るからに力不足だ!それにあの治療……ヒーラー何だろう!なら、下がって私を援護してほしい!」
「ソイレーンさん、奴の能力とあなたでは……自身で仰っている通り相性が悪い。いや、最悪だ」
「だ、だからと言って君が勝てる相手では無い!」
「いえーー」
ソイレーンさんの方を向くと同時に、ギネン……モドキが強力な殴打を放ってきた。
が、俺の障壁に完全に防がれる。
「ーー俺じゃなきゃ勝てませんよ」
「え」
『ここまで硬い障壁だとォ?貴様何もーー』
話しているギネンモドキへ先程の攻撃をそのまま、返した。
「ーーうるさい」
流石の一撃だったな、ギネンモドキがぶっ飛んで壁に激突してったわ。
「レイラ、みんなを守ってあげてくれ」
「……ミナト、こっちに来てくれ」
「んー? どうした?」
俺は何か用事があるのかと思い、レイラに近付く。
すると、レイラが俺の首に手を回し、
「ん」
「……え?」
まさかの口付けをしてきたのだ。
だが、何故か力が沸き上がる。
「レ、レイラ?な、何をした?」
「
「え?」
「貴方に私の持つ
「……ありがとう。だけど、キスする必要あった?」
「あら、私の気持ちよ。これは」
「な、なるほど……」
「後、ミナト」
「ん?」
「死なないで」
「ありがとう、レイラ」
優しく微笑み、ギネンモドキへ振り返った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます