2話 呼ばれた意味は無いそうです。


輝いた笑みを見せながら言うアンセム。


「え? かん……しょう、のう……りょく?」

『そう! 干渉能力! まぁ、ただ高瀬湊人さんの場合は‥‥使いどころ難しいかもね‥‥』

「‥‥どういう能力?」

『ん? んー‥‥何でも使えるよ!』

「いや、それだとよく分からないんですけど‥‥」

『あー‥‥そもそも干渉って言葉知ってる?』

「他の人に自分の思うままに動いて貰ったり、国同士のやり取りに反発して‥‥とかじゃなかった?」

『そうだね。正解』


などと言うアンセムにますます分からなくなる。

なら何故、干渉能力が大当たりなのか。


『けど、他の人の 人 の部分が、この干渉能力とは違う所かな』

「えぇ? どういう?」

『答えたいけど、もう時間だからね』


アンセムが言った瞬間だろうか、突如光が差し込み、光がオレを包んだ。

満面の笑みを浮かべるアンセム。


『君の生きてきた事は正直言えば‥‥つまらない物さ。君だってそう思った筈だ‥‥けど、その世界は素晴らしい事が山程ある! さぁ! 君は資格を得た! 思う存分、この世界を満喫すると良い!』


光が強くなり、前すら見えなくなる。

その瞬間、浮遊感に襲われる。

そして、目の前の光景が変わり、叡知の間へいつの間にか立っていた。


「高瀬さん!」

「大丈夫でしたか!?」


小川さんと水橋君がこちらを心配しながら駆け寄った。

俺はどこか体調が悪くないか確かめて、


「はい、大丈夫ですね」


その言葉にほっと胸を下ろした二人。


「河野君の言うとおり大丈夫ですよ」

「そうですか」


その後、二人は水晶に触れてちゃんとギフトを得たのであった。

全員がギフトを得てから、再度王の間へ戻る。


「これで全員が特別な力を手に入れたな。では、これから皆には厄災王の討伐をお願いする。これはソナタ達が帰る為の行為としてもある」


王は勢い良く立ち上がり、俺らに向けて手を向ける。


「行け! 異界の勇者達よ! 今こそ、人類に光を!」

「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」


などと、騒ぎだす兵士達。それに反して9割の者が冷めきっている

ちなみに、残りの1割はもちろん、


「異世界のお決まり展開キター!!」


河野君である。さてはて、これからどうやるのやら。

と思うと、黒づくめの者がいつの間にか王の近くへ寄り、耳打ちをしていた。

なにやら、王が驚愕している。

そして、顔に手を付けて重いため息を1つついた。

何だ? 何かあったのか?


「‥‥皆のもの、大切な話がある」


と、何やら気まずそうに言う王。

さっきの事だろう。なんだ?


「実は先程‥‥ほんっとうに! ついさっきだ!」


顔に手を付け、項垂れる王。

そして、


「厄災王が倒された‥‥」

「「「「‥‥」」」」


まさかの事実を突きつけられ、思わず放心状態となる。

それは他のメンバーも同じであった。

口を開け、王の方へ顔を向け、そのまま硬直。

そんな中、我に返ったーー


「え? じゃあ、私達帰れるんですよね?」


水橋くんだ。


「あぁ‥‥だが、今すぐには無理でな‥‥一週間程すれば、障気が収まるだろう。早めに障気が無くなれば、直ぐに報告いたそう」

「あ、はい‥‥ありがとうございます」

「う、うむ‥‥」


そしてまた、静寂と言う気まずい空間へ逆戻り。

だが、そんな中彼だけは違う。


「王よ、もし、もしこの気を逃せば、2度と元の世界へは戻れないと言う事ですか?」

「そうだな。お主達を呼んだ際の事もある。だから、この気を逃せば2度と元の世界へは戻れないだろう」

「なるほど‥‥うん、なら王よ、自分はこの世界に残ります」

「そうだろう、帰った方が良かろう‥‥って、え?」

「「「え?」」」


河野君のまさかの発言に、俺意外の全員が驚愕する。

そんな河野君に俺は、


「あ、すみません。自分もこの世界に残ります」

「「ええ!? 高瀬さん!?」」


何故ですか!! と言わんばかりの勢いでこちらに近づいてくる二人。


「高瀬さん、まだ全然間に合います! 考え直しましょう!」

「そ、そうですよ!」


真剣になってくれる二人に思わず口元が綻ぶ。


「‥‥お二方のお気遣い本当に感謝します。けど、俺の人生は本当につまらない物です」

「そんなの!」

「父は幼い頃に亡くなりました。その後、母は自分為に働き続けました何年も何年も‥‥そして自分が社会人となり、二人で仲良く暮らしていました。夜中、もしくは朝帰りの仕事の時だって、必ず家で待っていてくれて、お帰り。と言ってくれました、が‥‥二年前ですね。二年前に亡くなりました‥‥何故でしょうね?」


そう、あの時。俺はどうして。


「涙が出なかったんです。心にぽっかり穴が空いた感じがして‥‥でも、生きるためには働かなきゃいけない。だから、働きました。働いて、働きました。けど、ある日、何でしょうね?」


思ったんだ。


「何で、俺の人生つらない物だなって」

「「「「‥‥」」」」


俺の長話に皆付き合ってくれている。

本当に感謝と申し訳ないと思う。


「そう思った時ですよ? ここに呼ばれたのです。これって天命? もしくは父と母が俺を思ってしてくれた最後のチャンス何じゃないかと思ってね」


だから、俺は‥‥。


「そのチャンスを生かしたい。元の世界へ戻っても生きた屍だ。多分、数年後にはうつ病とか何かで頭が可笑しくなるか、自殺してますよ、ハハハハハ!」

「高瀬君‥‥」


そんな俺に小川さんが俺の肩に手を置く。


「‥‥何も出来ないが、気持ちの安らぐ様なコーヒーや紅茶の入れ方をお教えしましょう」


小川さんなりの励ましと、俺の決意を確認して諦めた感じだろう。


「この世界で通用するか分かりませんが、覚えておいて損は無いかもですよ。この世界で生きていくんですから」

「ありがとうございます」


それからと言うもの、俺らは冒険に出ること無く、王の住まう城で過ごしていった。

そして一週間が経ち、遂に障気が無くなり魔方陣に魔力を込める事が出来るようになった。

魔方陣の中に俺と河野君以外の全員が立ち、そんな彼らを見送る。


「高瀬さん、どうかお元気で」

「高瀬さん、お体気をつけて下さい」

「ありがとうございます。小川さん、水橋君」


二人は河野君の方へ振り向き、


「河野君も気をつけてね」

「最初来たとき、先導してくれてありがとうございました」

「さようならッス、河野!」

「ちょっとの間だったけど、楽しかったしーあんがとー」


お別れの言葉を掛けると、その場にいた全員に言われていた。

これが、人望って奴かなぁ……なんて思う。


「転送します!」


魔法使いの掛け声と共に、帰還者達が瞬時に姿を消した。

静寂だけが、その場を包んだ。


2話 終

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