第七話 酒宴、巨vs貧、乙女の勝負! Кошачий бой カシャァチィ ボゥイ


 「……っくぅ~、やっぱりあたしには少し強いよ。でもさ、不思議と美味しく感じるのは何でだろうね?」


 第一声を上げたのは、マリアだった。


 「久しぶりに飲むなぁ。何回飲んでもバッカしゅは美味しいね。度数が高いから相変わらず喉から胃に掛けて熱さが落ちて行く感覚はキツイけど、これぞ“今を生きてる”って思えるから、この酒はクセになるよ」


 これはイデア。


 「酒精が強いって事もあるけれどぉ、高いお酒だから滅多に出ないのよねぇ。その“お陰で”って云えばいいのかなぁ、今、うちにあるバッカ酒は全~部、倉に寝かせた八年物ビンテージなのよぉ」


 バッカ酒を飲める事に気分は増して、すこぶる上機嫌なイヴォンヌが教えてくれる“お店事情”にイデア達は今回の酒宴の機会を得た事に内心歓喜の悲鳴を上げているのだが、現段階では理性が「おしとやかに」と訴えているのを自覚している様で、奇声は発さないがその顔はお淑やかとは程遠い表情をしていた。



 バッカ酒の場合、封を切ってから日が経つにつれ酒精が弱くなっていく為に、樽で出されるのが当たり前になっているのと高額であるが故に、注文される機会は少ない。


 「Имеет прекрасный美味しいで вкус。久しぶりに飲みますが、このお店のバッカ酒はとても美味しゅうございますわね。好きなお酒がまた一つ増えましたわ。うふふ」


 ジェーニャもビンテージになったバッカ酒の飲み応えと味、鼻孔に残る仄かなフルーティーな香り、九十二度の度数に、とてもご満悦な表情を作り、故郷のウォッカと比べて遜色のない飲み応えのバッカ酒を気に入って、立ち寄った街では必ずと言って良い程飲んでいるのだが、今回のバッカ酒は今まで飲んで来たバッカ酒の中で最上位に位置付けられた様だ。


 “八年物なんだからな、不味いわけがねぇ”とカウンターの向こうで密かに突っ込むデイビットの声はイデア達には聞こえてはいないが、特上客のジェーニャが来店した事を神に感謝し、ぼそりと悪態はくものの、その顔はニヤケている。

 理由は言うまでもない。一ギャロン樽売りのバッカ酒は八百ダーマもする超が付く高値。しかも今夜の客達はジェーニャを除いて“うわばみ”なので、これからどんどん酒が出るとなれば、今夜の売り上げを予測してしまうとニヤケ顔になるのは仕方ないであろう。

 ウサギの尻尾亭歴代一位の売り上げは、ほぼ確定と云えるのだ。


 商売をしている人間達の習性と云うか、売上更新は目標であり、己が料理の腕が認められたとなる確証を得たと思えるのだから“これ・・があるから死ぬまでこの商売は辞められない”と彼は思っている。


 脳裏にそんな考えを浮かべながら、くだんのテーブルを見れば、口直しでもあるチーズをプチっとフォークで刺して食べるジェーニャが見える。彼女はつまみにも満足している様で頬に手を当て、悦楽気分に浸っている。そして彼女が言うのだ。


 「ご遠慮なさらずに、どうぞ飲んで下さいましね」


 ジェーニャが三人の空いたグラスに目をやり、これからですわよといだバッカ酒を一気に飲み干す。


  「でわでわ、お言葉に甘えまして」


 言葉では遠慮口調のイデアだが、突き付けられた挑戦と自身に質問をさせる隙を与えない様に間髪かんぱを入れず、即座にグラスに酒を足す。


 「あらあら、ジェーニャちゃんとイデアちゃんには負けられないわ」


 実は負けず嫌いなイヴォンヌもグラスに並々とバッカ酒をぐ。


 「ジェーニャ、本当に遠慮しないで飲むよ? 四人でなら五ギャロンはイっちゃうかもだけど良いの?」


 ペロっと唇をひと舐めしたマリアも、臨戦態勢で樽にグラスを近づける。


 「ええ、問題はありません。百ギャロン分のお金は持っていますので。どうぞ、お気になさらず、ご存分に堪能して下さいまし」


 「「「ひゃく…」」」『ひゃく・・・』


 見事にハモる三人だったがデイビッドもそれに加わった。だが迷い人ならそれくらい稼いでいてもおかしくはないと、思考を再起動して三人プラス一人はグラスに口をつける。デイビッドだけビェールなのは、仕方のない事。


 「Менеджер店長 магазинаさん。おつまみも適当に持って来て下さるかしら?」


 迎撃するジェーニャの追加注文に“おうよ”と返事をしたデイビットは、妻のミーシャにホールを任せて厨房へと消えて行った。


 次々と運ばれてくる料理の数々。


 “フェイフォンの包み蒸し肉饅頭”“マイクのハッピーサイコロステーキ”“サンチェスのチーズと馬鈴薯焼き”“モハメドのチリソテー”“シゲルのコロコロ焼き”“ウラジミールのカウカウストロガノフ”

 出てくる料理は全部、迷い人が広めたもので。ジェーニャを持て成す為にデイビットが腕によりをかけて調理したのである。

 特にカウカウストロガノフを見たジェーニャは感激のあまり、その綺麗な瞳の輝きが増し、感激の言葉が艶やかな唇から零れる。


 「хорошоハラショ! хорошоハラショ! хорошоハラショ! 善いですわ! とても善いですわ!」


 その反応にカウカウのストロガノフはジェーニャ一人で食べて下さいと三人は気を利かせて譲ったのだが。


 「ストロガノフを食べないなんて人生の半分を損していますのよ。ここは皆で舌鼓を打つべきでございますわ」


 親切の逆効果で、ジェーニャに怒られてしまった。


 ウサギの尻尾亭には、迷い人関連の料理メニューが沢山あり種類の多さもさることながら味にも定評があって、お忍びの貴族もいると云う。


 バッカ酒と迷い人料理を囲み、各々自己紹介を経て。失敗談や武勇伝等で盛り上がり、ジェーニャもイデアに対して、ドキっとする様な質問はしてこなかった。


 

  ◇



 そんな女子会のテーブルに八ギャロン目となるバッカ酒が置かれた時には、全員がかなり酔っていてこれ以上はカオスになるだろうとデイビットとミーシャは覚悟しカウンター越しに皆を見守っていた。


 「バッカ酒、何杯飲んでも問題なし! 余裕余裕」

八樽目に手をかけ、たゆんと揺れる胸を張り、エッヘンとするイデアに“分かってるよ”と若干不機嫌のマリア。


 そんなイデアの胸をみて、か細い声で“うっ”とジェーニャが言ったのをマリアは聞き逃さなかった。


 「分かる、分かるよぉぉぉその気持ちぃぃぃ。この敗北感、劣等~感。だけどね、だけどね…どんなに足掻こうとも逃げられない現実が目の前にある、あるのよぉぉぉぉ。しかも、しかもだよぉ、今日は四つもあるんだよぉぉぉぉぉ……うぅ……“同志ジェーニャ”と呼ばせて欲しい」


 流石の“うわばみ”マリアも出来上がり寸前、いいや、此処は既に出来上がっているのだろう。理性のダムが決壊しかけている。呂律が回らなくなってきている彼女の姿は滅多に見る事が出来ない貴重な場面ではあるのだが、それ以上にマリアの胸への劣等感からくる威圧に剣呑な空気が流れ始める。


 「даええ! даええ! даええ! Понимаю分かります даええ я понимаю分かりますとも。今日からマリアはТоварищタヴァーリシチですわ」


 そして、ひしっと抱き合うマリアとジェーニャは、ホロホロと涙を流しながら、つぶやいている。


 「Товарищ同志 Марияマリア、我が心の友よ」


 「だばーりしち・ジェーニャ、同志ジェーニャ。心の友よ貧乳仲間!」


 あぁもう駄目ねとイデアとイヴォンヌが半目で二人を見ているが。その半目も、酔っている半目である事に、イデア&イヴォンヌの二人は、まだ気付いていない。


 「あぁ、まりあもじぇーにゃも酔ってまふね~。こんな重たいモノのどこがいいろか…じゃまらだけらのに」


 「しょうらねぇ、じゃまらのにえ~」


 その発言を聞いた同志達が、むくりと立ち上がる。


 「であ、それあたひにちょうらいよ!!!」


 「даダーЯ хочуに頂 это


 マリアとジェーニャは、バッカ酒を煽りながらトーンの消えた瞳で訴えてくる。


 「にゃにお~、あげれるのにゃら。あげりゅわよ」


 グイっと飲み干したグラスをテーブルに置いたイヴォンヌは、ガバっとブラウスと下着を脱ぎ捨て、見事なおっぱいを丸出しにした。


 それを見たミーシャは、デイビットに避難するよう指示を出すと、素早くテーブルに置いていた料理や小皿を片付けに掛る。


 「そんあに、ほちぃ~にゃら。とってみにゃしゃいよぉぉ」


 イデアもバッカ酒を飲み干しイヴォンヌに続いて脱ぎ始めるが、着ていた服がゴスロリワンピだった為に、パンイチ姿になっている。


 「にゃんりゃとぉぉぉ!」


 巫山戯ふざけんな! とばかりに、マリアもジェーニャもグラスに注いだばかりの酒を飲み干し、これまた対抗するかの様に二人してパンイチになる。


 再度、グラスを手にしたイヴォンヌが酒をお代りして、そしてあおり飲む。

 イデアも、マリアもジェーニャも同様にグラスに注ぎグイっと飲み、ぷっはぁ~と挑発的な態度で睨み合う。


 ここに“巨乳’s vs 貧乳’s”の火蓋が切って下ろされる。


 ◇



 『“ちゅーちゅー”して全部吸い出してやる!』


 マリアとジェーニャがシンクロした瞬間だった。 


 先手はマリアが取った。


 「シャオ!」


 何とか水鳥拳の使い手みたいな掛け声と共にイデアの懐に飛び込み、そして憎たらしい大きな両胸を鷲掴みにする。


 ジェーニャも追撃とばかりにイデアの背後に回り込み、イデアの胸を強調させるかの様に後ろ手に彼女の腕を絡めとって動きを封じる。


 「Cейча́сスィチャス、今です!」


 脱衣した時にトランサーも外れてしまったが、貧乳パワーの前には言語の弊害も無効になっているのかマリアはその意味をはっきりと理解し返答したのだ。


 「Даダーидти行きます


 マリアはいつロシア語を覚えたのだろうか、それとも同志パワーの成せる技なのか。ジェーニャの束縛から逃げようともがくイデアのプルンプルンに揺れている乳袋をペチンペチンと叩き始める。


 「この! この! この! この!」


 ペチン! ペチン! ペチン! ペチン!


 「痛い、痛い、痛い、いたぁぁぁい」


 通常、酔った人間は力加減が出来ない。だからか、マジ殴りの乳叩きの衝撃はイデアにかなりの苦痛を与えている。


 「天罰らぁぁ、ちち罰らぁぁ」


 ジェーニャからは見えない乳叩きではあるが、発言からすると、音を聞いて誅がなされていると確信している様だった。


 「oдинアジン! Двеドゥヴァ!」

 

 「いち! にっ!」ペチン、ペチン。


 「痛い、痛い」プルンプルン。


 「oдинアジン! Двеドゥヴァ!」


 「いち! にっ!」ペチン、ペチン。


 「痛い、痛い」プルンプルン。



 パンイチ三人に合わせる様に、慌ててスカートを脱いだイヴォンヌが、やっと加勢に入る。


 「おぉまぁたぁへぇ」


 遅刻の看板娘が目の前の三人の確認する。マリア、白。イデアは赤の縞々で、ジェーニャは何と、黒レースのタンガー。


 そして、自分イヴォンヌは、ショッキングピンクのスケスケTバック。


 偶然なのか必然なのか、皆が皆“迷い人ピエール”がデザインしたショーツを身に着けていた。




 その中でも看板娘が身に着けている下着は、最新デザインの入手困難な超レア下着。彼女もかなり酔っているのだろう、意味不明な下着ファッションチェックを終え「右! 左!」とイデアを責めているマリアへ襲撃する。


 「ちょりゃぁぁぁぁぁ」


 サッと後ろから掌に収まるマリアのなだらかな膨らみを感じ、バババババとこすり出す。


 「ひゃうひゃうひゃうひゃうひゃぁぁうぅぅぅ」


 ゾワゾワっと全身に虫唾が走ったマリアの声に驚いたジェーニャの拘束する力が弱まると、機を逃さないDランク冒険者イデアはスルリと拘束から脱し、ジェーニャの背後に回り自分がされた様にジェーニャの腕を後ろに絡めて、腕をめ様とするが、迷い人であるジェーニャはそれを許すほど愚かではない。


 絡め取られたかいなを捻り、イデアの組み掛かりからスルッと抜けると。彼女の頭を掴み、一本背負いの要領でブワンと前方に投げ飛ばす。


 「わわっ」


 宙に舞う身体の芯によじりを入れて、まるで猫が音も立てずに着地するみたいな体術を披露するイデア。


 剣士の彼女の得意としている動きの一つで、どんな体制からもたいかわし得るフォースターランク冒険者の実力を発揮する。


 「やりゅましゅわねぇ~」


 「そ、そっちこちょ」


 フフフフと、不敵な笑みを浮かべ合う二人。


 おっきい膨らみを邪魔だと吐き捨てた持ち主と、一部分成長祈願が必須な小ぶりの所有者の視線はバチバチと音を立てている…エフェクトが似合う空気をかもし出していた。




 一方、背後を取られたマリアは、酔いと摩擦の刺激に喘ぐ中、背中に当たっているイヴォンヌウエポンHカップに怒気が噴出す。

黒いオーラ…のエフェクトが似合う空気を漂わせ始め、反撃の一手を取る。


 「セイ! セイ! セイ! セイ!」


 「あらあら…あぁぁ…どうしまぁぁぁん。嗚呼ぁぁぁ」


 背に当たっているに、マリアからも摩擦攻撃を開始したのだ。肩甲骨を巧みに使い、相手の“揺れ”を利用して一番敏感な頂点を攻めまくる。


 「あらしらって…あらしらって…バしゅトアッぴゅ体操たいしょぉしたり…おふりょでモミモミしちゃりぃ………ぎゃんばってるんらもん。しょれを…じゃまらって…この! この! この! この!」


 「あっしょ、しょ、しょこはっ! あっ…ん。嗚呼ぁぁぁぁ」


 マリアの猛攻に腰砕けになり、摩り攻撃に隙を見せてしまったイヴォンヌ。


 「ふっふっふっふ~」


 素早いステップで見事に脱出を果たし、イヴォンヌを見据えるマリアの目には、己の胸の大きさに比例するかの様に、そこに慈悲の情は無かった…無かったのである。


 「いりゃにゃいにゃらぁ、よ~こ~せ~」


 無慈悲のロリが、朱に染まっている看板娘に飛び掛かった。


 攻守交代。


 マウントポジションを得たマリアは歓喜な表情を浮かべて、デカブツの料理を始める。


 カプッ! ……ちゅー!? ……ちゅーちゅーちゅーちゅー!


 「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁん、らららららめ~。ら、らめて~」


 何を思ったかマリアは“無ければ吸えばいいじゃない”と何処ぞのアントワネット思考で、イヴォンヌのおっぱいを吸い始めたのだ。

 (吸いつくしてやる~! その中身、我が血肉となりて、顕現せよ大きくなれ~。………う~ん、ちょっと吸いにくいなぁ、よし!)


 ちゅーちゅーちゅーちゅー! レロレロ! ちゅーちゅーちゅーちゅー! カジカジカジ!


 両腕を膝の裏に極められて動く事が出来ないイヴォンヌはマリアのちゅーちゅーの前に成す術なく、足掻き続け、そして悶え続けていた。


 ちゅーちゅーちゅーちゅー! レロレロ! ちゅーちゅーちゅーちゅー! カジカジカジ!

 (おぉっ! 吸いやすくなってきたぁぁぁ。おし、モミモミしながらやってみようぉ)


 ちゅーちゅーモミモミ! ちゅーちゅー! レロレロ! モミモミ! カジカジカジ!

  (こ、これは!!! イイ! イイよコレ!)

  

 タガが外れたのか危ない目のマリアは、何かに取り憑かれた様にイヴォンヌの胸に顔を埋めている。


 ちゅーちゅーモミモミ! ちゅーちゅー! レロレロ! モミモミ! カジカジカジ!


 「嗚呼ぁ、あっ、あっ、あっ、…イ、イデ、イデアちゃぁん。たたた、た、たふけれぇぇ。嗚呼ぁぁぁぁ」


 そしてやっとの思いで、声を絞り出しイデアに助けを叫ぶイヴォンヌだが、マリアは構う事無く吸い続けている。


 ちゅーちゅーモミモミ! ちゅーちゅーレロレロ! モミモミ、カジカジ!


 (うっほほ~い、うっほほ~い)


 泥酔状態に近いマリアの思考は麻痺していて、イヴォンヌの胸を一心不乱に弄ぶ。


 「なっ!」


 救援の声を聴いたイデアが“ちゅーちゅー”しているマリアと“ビクンビクン”しているイヴォンヌへ視線を移すと、百合の花が咲き乱れている錯覚に捕らわれる。


 「このジェーニャから目を離すとは、いい度胸でありません事?」


 それを逃がす訳がない迷い人は、低い体勢でイデアに肉薄し、その腰にタックルを浴びせる。


Шансチャンス!」


 しかし、目の前に居た筈のイデアが消えた。


 「残念れひたぁ~」


 イデアが使った技は“巴投げ”…そう翔太郎の記憶から咄嗟に反応した柔道の投げ技だった。


 迫りくる低い体勢のジェーニャの更に、その下に潜り込み受け身が取れない様に両腕を取って、未だに“ちゅーちゅー”しているマリア目掛けて投げ飛ばしたのである。


  ちゅーちゅーちゅーちゅー! レロレロ! ちゅーちゅーちゅーちゅー!カジカ「ごばぁぁ」


 夢中で吸ったり舐めたり、齧ったりしていたマリアは気付かずに、飛んできたジェーニャの臀部がモロ顔に当り、仰け反る。


 「きゃうん」


 ジェーニャのお尻に痛みが走る。


 「あぁぁぁん」


 チュポンと抜けたマリアの唇の余韻にイヴォンヌは脱力する。


 イデアは顎に滴る汗を腕で拭いながら、むくりと立ち上がる。


 「はぁはぁ…っ、はぁはぁ」


 柳の様に身体を揺らしながら…そのたわわな胸も揺らしながら。怪しい輝きをしたまなこで息も絶え絶えの三人に歩を進めたのだった。


 「覚悟しにゃしゃいね、貴女達あにゃにゃたひ…………ヒャッハァァァァ!」


 女の子なのに、たけびを上げて襲い掛かるイデアの意識は既にブッ飛んでいた。



 ◇



 「う~ん……な…な、ななななっ、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁ」


 翌朝…目覚めたイデアは真っ裸になっている自分と、折り重なって大切な所が隠されてはいるが、スヤスヤと寝息を立てているやはり真っ裸な三人を見て絶叫する。


 「なによ~、うるさいなぁ」


 モソリモソリと起きてきたマリアは、周りを見て現状真っ裸を把握し顔面蒼白になる。


 「うん? あらあらあらあら、いやん」


 イヴォンヌは全裸で寝ているのは何時もの事なので、皆がスッポンポンでも別段気にならない様だ。


 「ДоДоброеおはようご утроざいます


 寝ぼけ眼のジェーニャは、状況が良く分かっていない。


 この後、四人は昨夜の出来事を薄っすらとしか思い出せずに、何故、皆全裸なのかパニックになりかけたところへ、ミーシャがやってきて説明をしてくれた。


 「バッカしゅに飲まれたアンタ達……マリアとジェーニャがイデアとイヴォンヌの胸を寄越せとわめいてね。その意趣返しに全裸になったイヴォンヌとイデアの態度に更に激怒した………………云々」


 話し終えて、さっさと服を着な! と言い残しミーシャはカウンターの奥へ去って行った。



 いつの間にか脱ぎ捨てられていた彼女達のショーツは、あちらこちらのテーブルに投げたされていて、それぞれが慌てて取りに走る。


 「あわわ、あわわ」


 「やばいって、あたし達。全裸って何やってんだろ・・・・・・シャレになってないよぉ」


 「あらあら、女の子同志も捨てたものじゃないかもしれないわよぉ」


 「О мой богなんてこった !」


 恥ずかしさの中、四人の乙女はそそくさと服を集めイヴォンヌにお願いをして“しゃわー”を借りにスタスタとお風呂場へ向かう。



四人では狭い風呂場ではあったが、キャーキャー騒ぎながら身綺麗にしたイデアはイヴォンヌの服を借りて冒険者ギルドに急ぐ。


 (『しかし、俺的には眼福だった…』いやいやいやいや、ないないないない。私は乙女なのよ! 十六歳で恋人が欲しい年頃なの!)


 道すがら、翔太郎の思いとイデアの理性がぶつかり合い、二日酔いじゃない頭痛にさいなまされるフォースターランク冒険者は、査問会が開始される時間ギリギリにギルドの会議室に到着したのであった。




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