有能だと思っていたのに追放されてしまった件

カモミール

第1話 

序章:追放




「お前クビな。」



冒険帰りの打ち合わせと

聞いて来た俺に投げかけられたのは

そんなどうしようもなく

理不尽な一言だった。


「えっ、今なんて?」


「だからさぁ、ルプス。お前はもういらねーって事。はっきり言わないと分からない?」


俺に再度悪態をつくような態度でクビを宣言してきたのは

このパーティーのリーダー、勇者だった。


「いやいや、俺はちゃんとサポーターとしての役目を果たして」


こんな時だが自己紹介しよう。俺、ルプスは新米冒険者だ。

2ヶ月前、冒険者ギルドが俺の強化魔法の才能を評価してくれ、

勇者パーティに入ったことが俺が今ここにいる経緯だった。


だから、このパーティでサポーターの役割をしている。


サポーターとは攻撃強化魔法から回復魔法まで幅広くパーティの能力を強化する事でパーティ全体に貢献する所謂バフ担当だ。


俺は短い時間だが今までのサポーターとしての働きをアピールし、

反論しようと試みた。


しかし、


「だからその役目が果たせてないって言ってんのよ。おバカね」

俺の反論に横槍を入れてきたのはパーティの魔法使い役、魔女だ。


「正直あんたの強化魔法ほとんど効いてる気がしないのよ。あれじゃあってもなくても大差ないわ。それどころかこの前シルバーウルフの群れに襲われた時なんか、1。弱いから」


魔女が蔑んだ目で容赦なく俺を非難して来た。

そして俺が負けじと反論の糸口を探す間もなく勇者が魔女に続いた。


「そういう事だ。つまり君は足手まといなのさ。だから、このパーティから出て行ってもらいたい」



「まぁまぁ、そんな言い方しなくてもいいじゃないか。能力不足はしょうがない事さ。でもルプス君。今回ばかりは彼らの言う事も事実だ。自分の能力に合わないパーティにいてもお互いにとって良くないだろう。君には君に合うパーティがきっとある。だからここはね」


そこで口をはさんだのはこのパーティの戦士だった。

普段は温厚で魔女や勇者が問題を起こした時もの仲介になってくれている。


いつもギスギスしているこのパーティが存続できたのも彼のおかげだろう。

だが、そんな彼も俺の追放には賛成らしい。


「でも、俺はまだこのパーティに来て2ヶ月くらいしか経ってない!最近冒険の要領だって掴めてきたし、これから」

「即戦力じゃなけりゃいらねぇよ。俺たちゃ勇者。魔王から世界を救う仕事をしてんだぜ。さっさと消えろ」


勇者は完全に俺を見限ったらしい。もうこのパーティにいる事は無理だ。


最後の勇者の言葉に俺はそれを感じ取ったのだった。




次の日、俺は勇者のパーティ退却の準備を終えた。


「ま、一応お前は2ヶ月働いた訳だし…給料な。俺達と冒険できた貴重な経験を考えるとこんなもんだろ」


そういって出されたのは2ゴールド(日本円で200円)だった。どこまで侮辱すれば気が済むのか、怒りを感じると同時にこんなパーティを抜けられた事に清々したのだった。



*****


勇者パーティを追放されたルプスはとぼとぼと道端を泣きながら歩いていた。



一連のやり取りから彼が泣いているのを見た人々は

また勇者パーティの横暴だと思い彼を哀れんでいた。



「うっ、うっ…くっくくく」


だが、泣きながらも一瞬彼が邪悪な笑みで笑った事には気づけなかった。










―――――



中間:抗争


*戦士目線



ルプスが追放されてから7ヶ月が経った。

「お前もクビな」


勇者と魔女は新たに入ってきた賢者を追放していた所だった。

「はぁ、良い人材ってのは中々いないもんだなぁ」

「そうね。私達は特別だから仕方ないのかもしれないわね」

「ちっ、とはいえ入ってくるのが無能ばかりだとストレスが溜まるな。ストレス解消に魔物イジメにでも行くか」



あるうわさを聞いて急いで戻ってきたところ、

扉の中からまた、いつもの横暴な会話が聞こえた。


また、新しく入った新人が絶望したような顔で部屋をでていった。


「あ~、もうっ」

これで何回目だろうか。あの新人君はもうだめだろうな。


やっぱり、俺だけじゃどうやってもフォローしきれない。


息が切れていたため、ため息はつけないけれど、心底あきれる。



勇者と魔女の横暴は今に始まったことじゃない。

新しい新人を雇ってはさんざんコキ使った挙句理不尽な難癖をつけて追放する。


確かにそれは嫌がらせだけでやっているわけじゃない。

俺たち勇者パーティは魔王を倒すことが使命であり、それが唯一可能なパーティといえるだろう。

故に力が足りないものはやめさせることも時には正しいのだ。


その事実を割り切っているから俺もこのパーティを辞めずに堪えている。


でも、だからといってあんな横暴な理屈で新人を辞めさせることは間違っている。


勇者と魔女は魔王討伐ができる自分たちが最も偉く、周りの人間は自分たちを全てにおいて優先すべき、という傲慢な考えを持っているのだろう。


だが、他の冒険者にだって魔王討伐以外の大事な役割があるのだ。


それは、街を襲う魔物の退治から有事の避難誘導までいろいろあるが、どれも人々を守る大切な役割だ。


こいつらがしているのはその役割を担う新しい芽を摘み取る最低の行為だ。


俺はうんざりしながら部屋に入ったのだった。




「ハァ、ハァ…大変だ!」

俺が息を切らしながら入ってきたため、勇者と魔女はなにごとかと視線をこちらに送る。

「あのルプス君が、俺たちと同じS級冒険者に認定されたって掲示板に」


「ルプスって誰だっけ…あーあいつか…はぁ?」




勇者は信じられないといった顔をした。自分が無能と認定して追放した男がたった半年そこらで冒険者の最上位クラスまで上り詰めたのだから無理もないだろう。


俺は続けて言った。


「しかもそれだけじゃない。今やつは狼の牙というパーティを率いているらしいんだが…

その裏名は傲慢勇者パーティ被害者の会だってもっぱらの噂だ」


「はぁ!?ちょっと何よそれ。私達に喧嘩売ってんの?調子に乗っちゃって許せない!」



魔女が激昂する。彼女は舐められるのが1番嫌いなのだから仕方ないだろう。


魔女は愛用の杖と箒を持ち、瞬きをする間もなく箒に飛び乗り、窓から飛び出していった。


「はぁ、冒険者同士の抗争は禁止って分かってんのかあいつ?」


魔女が去った後に勇者のため息が響いた。

勇者にもまだその程度の常識はあったらしい。



とにかく魔女も被害者の会も放っておく事はできない。

勇者と戦士も魔女の後を追い、部屋から飛び出して行った。





______



勇者が狼の牙、あるいは被害者の会を名乗るパーティの住処にたどり着いたのはそれから30分ほど経ってからだった。


見るとそこには被害者の会メンバーと思われる人間が2、30人ほど倒れており、奥ではルプスと残りの被害者の会メンバーざっと70人ほどと魔女が対峙している所だった。


その戦闘に目を向けたとたん、まぶしい閃光が俺の目を眩ました。


「ライトニング・ラビリンス!!」

魔女が雷の高位魔法を唱えたのだった。


「皆行くぞっ! ウォールッ!!」

魔女の魔法に対し、被害者の会メンバーおよそ30人くらいで魔力の壁を作り出す初級魔法を唱える。


光の中、かろうじて見えた攻防。


なるほど。

狼の牙の全員の魔力を合わせる連携は中々だ。だが、残念ながらその程度で魔女の高位魔法は防げない。


そう思ったが、


「超硬化」


ルプスがウォールをさらに固くするサポート魔法を放つ。


結果、ウォールは鉄壁の魔法と化し、魔女の高位魔法を完璧に防いだのだった。


「チッ、ルプスゥ、あんたねぇ」

魔女が恨めしそうに言う。


そこで魔女は俺たちの到着に気づいたようだ。

彼女はこちらに合流した。


「こいつら、しぶといったらないわ」

「へっ。ルプスさんの肉体強化能力と回復能力さえあればお前らなんか目じゃないぜ」


被害者の会のメンバーの1人が言う。


どうやら俺と勇者が被害者の会のアジトに着くまでの間、被害者の会は魔女と抗争していたようだ。


ハァとため息をつく。

ペナルティ確定だな。これだから、魔女は血の気が多くて困る。


だが、魔女がほうきでここに着くまでの時間はおそらく10分ほど。


残りの20分もの戦いの中で魔女がこの程度の被害しか生み出せなかった

という事はどうやらルプスがS級ランクの冒険者になったという話はあながち嘘でも無さそうだ。


「そこまでだ!!」



勇者も俺と同じような思考を巡らせてから、声を上げた。


途端に勇者に注目が集まった。


狼の牙は全員勇者に憎悪の目線を浴びせるが

勇者はそれに気づかずに話を続けた。




「久しぶりだね。ルプス。S級冒険者になったんだってね。おめでとう」

「ええ。おかげさまで」



ルプスは皮肉のつもりで言ったのだろうが、

勇者はそれに気づいていないようだ。


こいつは昔からそうだ。与えられた才能に驕り、特に努力などせず最強の冒険者になった。


だから他人の気持ちなど一才考えない自己中心的な子供。



その強さが無ければとっくにこんなパーティ抜けている。


俺だって被害者の会に入会したいくらいだ。



「だが、勇者パーティ被害者の会なんてふざけたものを作った事は笑えないな。魔王を倒せる唯一のパーティである俺たちに対して無礼な奴らだ。今後パーティを存続できるとは思わない事だな。」



冒険者同士の戦闘禁止はギルド内でも

最重要のルール。


あの勇者でも今回はそれを守るようだ。

それを思い、ホッと俺は一息ついた。

ところが、



「被害者の会とは何ですか?僕達は狼の牙というパー」

勇者の言い分にルプスが反論しようとしたその時、




「そうだ。勇者だからってお前らの横暴にはもう付き合いきれない!」

「俺はお前らに散々こき使われたあげく追放されたんだ!」

「俺の武器屋じゃ勇者からだって武器を安値で全部持ってかれた!」

「俺の息子はお前らに脅されて引きこもっちまった。責任取りやがれ!」



被害者の会メンバー達から猛烈な勢いで一斉にブーイングの嵐が俺たちに浴びせられたのだった。



「ちょっ、ちょっと何よ。これ」

「き、貴様ら勇者であるこの俺に向かって」



魔女と勇者は自分達がここまで嫌われていると気づいていなかったようだ。


誰より凶悪な魔物を数多く退治して来たからだろう。




とぼけようとして、即刻被害者の会のネタをばらされたルプスは何やら苦い顔をしている。




「大体、お前らルプスさんも追放したんだって?バフスキル天才の彼を」

「恥を知れ。恥を」

「彼のサポートスキルのおかげで俺たちゃ格上の魔物だろうと難なく殺せるようになったんだ。お前らなんかもういらねぇ」



よほど勇者の横暴に不満を抱え込んできたのだろう。被害者の会の苦情はその後もしばらく止まらなかった。



あまりの勢いにその後ルプスが彼らをなだめ、俺たちに


「お引き取りください」

と言った言葉に俺たちは従うしかなかった。








俺たちはすごすごとアジトに戻った。魔女と勇者は憎悪の感情をあらわにしていたが、普段の彼らの態度を考えれば自業自得。


俺は少し清正したくらいだ。



だが、何か引っかかる。


7ヶ月でS級?バフスキルの天才?

いくらなんでも成長スピードが速すぎる。


もしかしたらルプスは始めから

俺たちを陥れるつもりだったのかもしれんな。


勇者や魔女が前からどこかで恨みを買っていたのかも。


そんな事を考えながら戦士は帰路についた。






だが彼らはこの時力づくでも狼の牙あるいは被害者の会を潰しておくべきだったのかもしれない。そう思うことになる。







_______


中間2 :終わりの始まり…かも


*勇者視点



狼の牙と勇者パーティとの争いがあってから2ヶ月が過ぎた。

あれからギルドに狼の牙の廃止を申請したが通らず、

それどころかルプスという有能な人材を無下に扱ったとして

俺達の評判はますます下がる始末だった。




今一度俺たち勇者パーティの威厳を取り戻そうと高レベルの魔物を狩ろうと試みるも、ここのところ弱いモンスターしが現れなかった。


ヤキモキした俺達は弱いモンスターの討伐を繰り返し、そのストレスを発散していた。


そんな時だった。


狼の牙が魔王の側近、キングウルフの討伐を果たしたという一報が耳に入ったのは。

キングウルフとその一団は俺達でも倒しきれなかった強力なモンスター。


それを討伐したという事は英雄になるという事。

何より、自分達にできなかった事をかつて見下したルプスに成されてしまった事は

非常に屈辱的な事態だった。


「クソッ」

俺は思わず叫んでいた。


だが、事態はそれだけでは終わらなかった。

次の日から俺達への周囲の目線は冷たいものとなった。


今まで勇者パーティ一が一強だったからこそ俺達は威張れていたのだ。


だが、それに代わる強力なパーティが生まれてしまい、世間は俺達を白い目で見始めた。俺達の昔の我儘はある事もない事も広がり、途端に俺達の評価は地に落ちた。



そして1ヶ月後、

ギルドマスターが俺たちの元にやって来た。


「この街から出て行ってくれ」

ギルドマスターの親父が来てすぐ

俺達投げかけられたのは

そんなどうしようもなく

理不尽な一言だった。



「なっ、何言ってんのよ!?私達がどれほどこの街に尽くして来たと思ってんの!?」

魔女が激昂する。

「その事は感謝してる。だがそれ以上にお前らは勇者という権力を傘にやり過ぎたんだ。暴力、威嚇魔法、食い逃げ、恐喝、不当解雇、その他マナー違反。もう庇いきれん」

「食い逃げはやってねーよ」

「同じさ。噂に尾鰭がついてもうどうしようもない事になってるぞ」

「そんな事って…」


魔女が絶望した顔で項垂れた。

戦士は微妙そうな顔で俯いている。

俺ももう半分諦めていた。


今までの民衆の態度からここ数日確かに俺達はやりすぎたと感じ取っていたから。


「せめて今まで街を守ってくれた礼だ。次の街に移住する分くらいの退職金は出そう」


最後にギルドマスターはそう言って俺達にとっては端金程度のゴールドを渡し出て行った。


こうして俺達勇者パーティは追放された。


「せめてもう少し弱者の気持ちを知るべきだったのかな」


全てを失い俺はそう呟いた。

そして、勇者パーティは解散したのだった。










遠くからその様子を一匹の狼が見ていた。

_______


最終章   人狼 

*ルプス視点


ある狼は人の姿に化けて勇者パーティ解散の様子を監視していた。

その狼に俺は近づき声をかける。


「よう。どうなった?」


狼は振り向いて言った。

「計画通り、勇者パーティは解散しました。ルプスさん。いえ、キングウルフ様」

狼は答えた。


「そうか。ふっふふふっ」


それを聞き、計画の成功に思わず笑みが溢れる。


そう。始まりはスパイの部下から勇者が新入りを追放し続けていると聞いた時だった。



「勇者を殺せ」

そう魔王様に命じられたが、勇者の強さ故にそれは不可能だと思っていた。


だが部下からの報告で勇者は強さは本物でも人間性に大きな問題があり、恐喝やら追放など悪事を働いていると知った。

使えると思った。


「一年時間をください」


それだけ魔王に言い残し、俺はすぐ計画を実行した。

まず人間に化けて冒険者となり勇者パーティに入った。



その後、不自然にならないよう無能を演じた。

部下のシルバーウルフに命じ、俺を執拗に狙うよう仕向けた。


勇者は俺を庇わないといけなくなり、俺に無能のレッテルを貼った。

こうして俺は勇者パーティを欺いた。


隠れて相手の生命を狙う人狼のように。



結果、勇者共はコロッと騙されて俺を追放した。


あとは簡単。俺の真のサポートスキルの力を発揮し、

勇者に追放された悲劇の天才を演じ、

勇者パーティを恨む連中を集めるだけ。




勇者の1番の被害に合ったとされた俺に、他の勇者の被害者どもは簡単にくっついて来た。

俺がルプスとして人間と協力し倒したキングウルフも当然部下が変身した偽者だ。

彼は殺される振りをして今も勇者を殺す準備を進めている。


そもそもキングウルフが殺されるはずもない。

本物のキングウルフは奴等が信じる英雄、

ルプスなのだから。


そんな小細工だけで人間は勝手に勇者を身限り、追放してくれた。


「これからどうするんです?」


部下の狼が聞いてくる。


「当初の予定通り、別の幹部達とも協力して勇者を殺す。いくら奴でも1人で俺たち全員には勝てねぇだろう。今なら国から奴の一級品装備も没収されてるしな」

「じゃあこの国は?」

「勇者をやった後に滅ぼすさ」

「そううまくいきますかね?」

「フン。勇者がいなきゃ結局俺たちには抗えねぇよ。いくら強化魔法を使った所で元が雑魚の冒険者じゃな」

「じゃあ奇襲準備、今すぐ開始ですね」

「ああ。勇者パーティの誰かに勘づかれでもしたらかなわねぇから俺はもう少しルプスを演じるぜ。軍の指揮はお前に任せる」

「あいあいさー」


そんなやり取りをした後、しばらく沈黙が続く。

俺は考えた。


今回の人間側の敗因は何だったのだろうか。

おそらく人間が誰かを蹴落とそうとする醜い心だろう。


勇者は人の心を考える思いやりがなかった。

だが人間側も魔王に抗えるのは勇者だけという

現実から目を背けてしまった。


手を取り合わなければならないもの同士が対立している。


だから簡単に付け入るスキがあった。

まぁ、結局一番は勇者が俺を追放した事だろう。

奴が誰かの失敗を許せればあるいは…


そこまで考えた時、通信機がなった。

他の仲間のウルフからだった。


「はい、もしもし?」

部下の狼がそれを取る。

「すまねぇ。兄貴。サリエール国のスパイ活動が俺のミスでバレちまった。俺は何とか逃げきれたけど、逆に俺達の活動記録は取り上げられちまった。」


隣国サリエールのスパイを任せていた狼の部下からだが、

かなり大きな失態をしたようだ。


「はぁ?お前何やってるんだ!機密情報が漏れたら追放じゃ済まされな」


狼が怒る途中、俺は狼から通信機を取り上げて言った。

「こちらキングウルフだ。事情は俺も聞いた。貴様、とんでもない事をしてくれたようだな。」

「キ、キングウルフ様。もっ申し訳ありません。この責任は必ずこの命を持って払わ…」

部下は萎縮しているようだ。

「あー、いや、いい。いい。了解した。後処理はこっちでやっておく。それより、今俺がいるアリエール国で戦争をおっ始めようと思ってるんだ。お前も来い。密偵として俺の補佐をしろ」

「へ!?」

許されると思っていなかったようで部下は困惑しているようだ。


「次会うまでに反省文100枚書いて俺に提出しろ。あと戦争では死ぬ気で役に立てよ」

俺はそれだけ言い、通信を切った。


部下の狼は唖然とした顔をし、尋ねてきた。


「よ、よく許されましたね。スパイがバレるなどあってはならない事なのに」


俺は天を見上げ、答えた。

「べつに。奴は一度スパイとバレる大失態を犯した。だったらもうバレないよう最新の注意を払ってくれると思っただけだよ」



それだけ言い残した後、狼は消えた。


そして、俺はルプスに戻ったのだった。













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