第80話 結果報告

 全員の婚約破棄が成立後、フォード侯爵家、ニコールの実家、子爵家と共に食事会。お礼をめっちゃ言われた。

 子爵はあの一家の演技を見抜けなかった事など、当時の自分を恥じて相当落ち込んでいた。思わずフォード卿と一緒に慰めちゃったよ。


 令嬢は中央貴族との人脈作りと婚約者の都合で王都の学園へ通っていたので、婚約破棄後に転校手続きをした。

 人脈は俺経由で繋がったし、王都の学園に通う意味が無くなった。転校先には友人もいるのでご心配なくと言われた。


 弁護士と調査部門からの報告で、婚約に伴って行われた投資の返済や慰謝料の支払いが、屋敷や家財道具全て売り払っても足りないと聞いた。

 これを機に、雑な動きを見せるだろうと調査部門が陰から狙っている。慌てて何かをしたら捕まるし、何もしなければお金も領地も失う。


 敢えて泳がされているのに気が付いていないのか、今は強引な金策に走っているとか。純粋に授業料が払えなくなるので、令息は退学になると思う。

 調査部門がぐいぐい虫の家と元婚約者の家を追い詰めている。虫の家の共謀が認められれば、虫の家の財産も子爵家への支払いに回せる。頑張れー。


 このままだと、両伯爵家が一度国預りとなる見込み。犯罪の温床が一掃されてからになるが、まともな親族が居ればそちらが新たな当主になる。

 いない場合はそのまま国が預かる。それで国に貢献している人への褒美となったり、堅実な運営を出来そうな人に託すかなどが検討される。


 食事会の後子爵と令嬢は領地に戻り、お礼の品として色々と珍しい食べ物などを贈ってくれた。

 さすがやり手のお父さん。こちらの好みをよくわかっていらっしゃる。俺の周囲も大喜びで、今度の視察ではそっち方面に行きたいねという話にもなった。


 伯爵家に関しても弁護士が説明に来てくれた。


「訳のわからない謎理論を息子に展開され、侯爵も頭を抱えていましたよ。話し合いが長引くほど慰謝料が増額出来ましてね。それでようやく諦めました。彼はこちら側には良い助っ人でしたよ」


 弁護士が思わず思い出し笑いをしてしまうくらいには、凄かったそう。彼の中では婿入りでも愛人を囲うのは、当然の権利だったらしい。

 伯爵家令嬢との間にも子どもは作りますよ、二人とも愛しているので! と堂々と言って、大人たちがフリーズしたとか。


 婚約破棄が成立した後も、伯爵家令嬢には愛していたのに残念だよとショックを受けたように言ったらしい。

 さらに婿入りが無くなったので、親が持っている伯爵位を自分が新しい婚約者と継いで、モモーナは愛人にするつもりらしい。アホ?

 それと婚約者がいなくなっても、モモーナは愛人枠なの?


「思わず帰り際に良い施設を紹介しようかと思いましたが、侯爵は切り捨てて放置でしょうね」


 実際、王家に睨まれた次男に対して侯爵に親の情はなかった。価値だけで判断すると噂の侯爵は、息子の価値にも厳しかった。

 余計な出費は不要とばかりに退学手続きが直ぐに行われた。程なく除籍申請もされていて、放逐されるのが決定的。知らぬは本人だけっぽい。


 貴族のボンボンが急に放り出されてやっていけるのか、いくら酷い男でもちょっと気になっちゃう。

 苦労はすればいいとは思うけれど、犯罪に巻き込まれたり、命を失うのはちょっと違うと思う俺。


 伯爵家令嬢から報告とお礼の手紙が届いた。伯爵家令嬢の手紙にはお相手の様子が面白おかしく綴られていて、なかなかに面白い手紙だった。

 元婚約者としては気分が悪い話のはずなのに、ただただ笑える話になっていた。明るくて前向きな人なのだろう。


 手紙を読んで感じたのは、彼女は元婚約者がどうなるか知らない感じ。

 何度か話しただけだけれど、優しさと面倒見の良さが溢れ出ていた。知らない方が良い感じ? 返事はどうしよう。こういう時は相談。


「ねぇ、これ、相手がどうなったかは知らせない方が良いと思う?」


「そう、ですね。フィリアナ様は優しい方ですから気にされるでしょう。除籍はされたけれど、親が面倒を見るだろうとかの曖昧な感じがいいのでは」

 手紙を読んだリーリアからの助言。


「うーん、そうだよね」


 返事の内容を考えている数日の間に、彼女の父親からも手紙が届いた。


「何で同時に出さないの?」

 まとめて出したら料金とかさ。


「南部の人間は、だいたいこんな感じですよ」

 ナタリーに言われた。


 重要な事にはピシッとするが、それ以外はゆるゆるらしい。王子への手紙は重要案件ではないのね。

 父親からの手紙には、娘には元婚約者は除籍され退学するとしか伝えていないと書かれていた。


 やっぱり放逐となると気にする感じなのね。それと、婚約破棄が無事に成立したら伯爵領へ遊びに来ませんかと以前から招待を受けていて、それに関することが書かれていた。

 伯爵領は人気の保養地で、ケビンとアンナの子どもも連れて行っていいか確認したら、大歓迎と言ってくれたので行く予定にしていた。


 ゴネられたと聞いてこの話は流れるかと思ったが、さすが王家御用達の敏腕弁護士。遊びに行く予定が出来た。

 詳細についてはおいおい。これで俺が関わった婚約破棄に関しては、一旦終わった感じ。


 商会の息子には婚約者もいなかったので放置だけれどね。モモーナとくっつこうが問題なし。

 ただかなりモモーナに貢いでいる様なので、二人の先行きは不透明。でもわざわざ王子の俺が介入するような案件でもない。


 これでWeb小説の登場人物が、学園からはほぼ消えた事になる。俺はモモーナをヤバい奴としか思っていないし、もう大丈夫かな。

 今までの努力が実った瞬間! 王太子からは逃げきれていないし、婚約者もいないけどね!

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