第79話 婚約破棄連発

「私も質問よろしいでしょうか」

「勿論だよ」


 子爵家令嬢からも質問が。調査途中だけれど、騙されていたのはほぼ確定。申し訳ないので色々と頑張りました。頑張ってもらったとも言う。


 ワインなどはニコールの実家経由で王都へ輸送し、フォード侯爵家が販売することがほぼ決定している。

 チーズとワインをセットで販売すると効率がいいと思うので、フォード卿に話を持っていった結果。


 ニコールの実家はオリーブオイルを王都で販売しているので、瓶の輸送ノウハウがあり、それに便乗する形。

 話を持っていったら、商品の品質が良いから王都で売れる! とどの家もノリノリで、とんとん拍子で話が進んだ。


 さらにルヒトじいの実家経由でワインの輸出の話も出ていて、成功してかなり裕福になる気がする。

 令嬢の父親が商売に関してはかなりのやり手と聞いた。調査の過程で元々既存の商売が急に傾いたのも、虫の家に嵌められていたことが判明。


 婚約者の家にお金をむしり取られたせいで新規事業に足りないお金に関しては、俺の私財からお金を出した。これはかなりの割合でお詫びも兼ねている。

 ここに関しては返済時に利益や利息は求めず、婚約破棄が成立した際にもらえる金銭か、その後の利益から返済される予定だった。


 それなのに。俺が繋げた人脈への恩返しと言われ、こちらも通常の投資になってしまった。

 お嬢さんの人生を潰しかけちゃったのに、逆に良くされると怖いです。考え過ぎだとケビンやフォード卿に言われた。

 側近候補の保留さえ知らなかった子どもの俺相手に、変に恨むような人でもないと説明された。だけれど怖いので、ビビってしまう。


「私はお相手の家に投資という名目で、かなりの金額を渡しています。婚約を破棄すると返済が必要になるので、この書類があったとしても破棄が難しいかも知れません。その場合はどの様に対処したらいいと思いますか」


「ああ。構わずゴリ押ししてみて。ゴネたら弁護士を紹介するよ。さすがに王家御用達の弁護士が出てきたら、訳の分からない理屈は言えなくなるだろうし、権力も無理だから。その時は直ぐにケビンに手紙を出してくれたらいい」


 調査部門の調査は継続中だが、現状でも弁護士が上手くやってくれると思う。

 彼らが子爵領のワインを王都で売り込んでいなかったことは既に判明していて、それだけでも婚約の際の契約書に違反している事になる。

 やり手の弁護士さんなので、時間がかかっても婚約破棄は確定したも同然です。手紙が届かずに円満解決の方がいいけれどね。


 その後もいくつか質疑応答があり、最終的には不安そうな表情も消え、満足そうな顔をしてくれたのでほっとした。無事に済んで何より。

 実際に追い詰められている状態だから仕方がないのはわかるけれど、鬼気迫る勢いの女性陣は本気で怖い。女性を敵に回してはダメ、絶対。


 気分が落ち着いたところで、ハノアのスイーツが登場。


「美味しいです!」

 皆さんの素敵な笑顔を頂きました。


 早速親の準備が出来次第相手先に婚約破棄を申し入れたが、驚くことに侯爵家も伯爵家も普通にゴネたそう。

 両家の話し合いが続く中、冬休みに突入した。


 辺境伯家には弟がお詫びの品を持って行き、そのまま滞在するそう。

 その馬車と一緒にゴードンたちも帰ると聞いたので、毎年恒例にしようと思っている俺から北部への利益還元分も便乗させてもらった。


 この冬休みもまったり過ごせる雰囲気が城には漂っている。弟が積極的に外出を始めたらしい。

 こちらは特に公務もなく、投資関連のあれこれを皆でのんびりとしつつ、食事会に人を招く日々。


 準私的スペースでの食事にフォード侯爵家やロシーニ侯爵家、ナタリーの実家を招いたので、料理人の腕が存分に振るわれた。

 ちょっと前まで誰も呼ぶ人がいないような状態だったのに、料理人は随分と忙しくなったが、皆にこにこしてくれていて単純に嬉しい。


 ナタリーの実家からは新商品のお試しやら何やらと、俺が頼んでいた分の納品もあったので、お針子さんたちにプレゼント。

 劇画タッチで喜んでくれて満足です。技術料を一切支払っていないのが気になっていた。ロシーニ卿はまたルヒトじいを領地へ連れて帰った。


 後、残念なことに子爵家令嬢からだけでなく、伯爵家令嬢からも弁護士の相談が来た。

 あれだけ息子がダメ人間な証拠を揃えたのに、どうやってゴネているのか不思議。早速凄腕弁護士がにこやかに話し合いの場所に向かった。


 弁護士が到着してからが早かった。

 あっという間に婚約破棄が成立しただけではなく、当初令嬢側の当主が希望していたよりも大幅に慰謝料がはね上がったと報告の手紙が届いた。

 流石王家御用達。凄い。父上の側近が手配してくれただけはある。

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