第77話 準備完了

 モモーナに群がる男の一人が除籍されて脱落したにも関わらず、残りの二人は自分は大丈夫だと考えているらしい。

 避けられているが頑張って、自分たち有責で婚約解消を申し込むよう度々勧めたがそれもしようとしない。


 ここ、身分制度のある世界。俺王子。王子の真っ当な勧めを無視するって何故だ。意味がわからん。

 しかも残りの二人はまだ、俺の側近候補の肩書き付きでしょうが。保留中でも肩書きを利用しているなら、せめて言う事を聞けよと思う。


 どうも彼らは望んだ全てを手に入れたいみたい。結婚前から愛人を許容しろなんて、どんな下衆だよ。

 一部には婚約者がいるが、まだほとんどに婚約者がいない状態だから、このアホたちから解放されれば令嬢には次の婚約者が見付かるだろう。


 その状態で愛人を許容するのは苦痛でしかないと思う。モモーナもこのままではただの愛人候補だし、彼らの女性に対する扱いが酷くない?

 ケビンに聞いたら、結婚相手の恩恵で良い立場へいけるのだから、多少は我慢すべきとかっていう考え方が根底にあるらしい。


 だから女性側からの婚約破棄や解消は難しいとされている。婿入りの侯爵家次男はどうなるのさ。

 それでも他の侍女やニコールにまで、世の中そんなものですよと言われた。解せぬ。


 あいつらが将来有望扱いなの? 無いわー。俺の側近には絶対しない。空気も読めないから、城勤めも無理だと思う。

 地方の役人とも関わりは持っているけれど、何処にもあんなあかん奴はいないと思う。今まで会った事ないし。皆さん仕事の出来る人たちだった。


「ライハルト様の考えの方が多分特殊ですよ。この国って何だかんだで中枢は男だらけじゃないですか。だから男に有利な世の中になっているんですよ」

 ナタリー。


「確かに側近にも城の各部門にも女性は少ないもんね。調査部門くらい?」


「残業や徹夜が多いので、体力の問題がどうしてもありますからね。調査部門では女性の手も必要になるのでいますが、雇用形態が男性とは異なります」

 リーリア。


 調査部門で男と同じ雇用形態にしてしまうと、連日の徹夜、野宿、夜通し馬で走るなどが解禁されてしまうらしい。


「それは男でもキツイでしょ」


「調査中は何が起こるかわかりませんからね。それに納得した男性しか雇用しないそうです。年齢的に体力が厳しくなった場合には、女性と同じ雇用契約も結べるようになりますよ」


「そうそう。意外と城勤めは給与面でも男女平等です。中央貴族が多分一番酷いんですよねぇ。それが国の代表として大きな顔をしているから男社会の雰囲気なんですよ」

 ナタリー。


「後、中央貴族に憧れている地方貴族と中央貴族を気取っている地方貴族」

 リーリアの顔が険しいです。リーリアの実家は前者かな。


「当然、家にもよりますけどね」

 ナタリー。何か大体中央貴族が悪い気になって来た。普通にアガーテさんとか活躍していると思うのだけれど。


「一部の権力を振りかざす中央貴族に多い考えだと思うので、それに憧れている人たちが真似しているのですよ」

 なるほど。フォード侯爵家とかは違うってことね。


 こちらが報告した学園での素行と父上の側近が集めたあれこれで、侯爵家でも反論が出来ないほどの証拠が集まった。

 側近候補から外すだけでなく、女性側からの婚約破棄も問題なく出来るような書類を、父上の側近が作成中。完成まで後少しらしい。


 婚約者の令嬢たちが理不尽な目に遭っていないか伺いつつ、一応自分の婚約者探しも続行中。婚約者候補のリスト以外でいい人いないかなっと。

 因みに俺の婚約者候補の人たち、俺が忙しいのといつも団体なので、顔と名前が未だに誰も一致しない。そのせいか、知人の距離感ですらない。


 仲良くなれたらゴードンたちの中央貴族との人脈にでもと思っていたのだけれど、それも無理そう。令嬢だから人脈としても難しいし、諦めた。

 団体で会うのも今日で最後。相手にその気が無いのを知った時から、だんだんお茶会の間を空けていっていた。


 お互いに親に何か言われないよう、時間をかけてフェードアウトする作戦でした。今日で作戦完了です。

 向こうはそれでいいだろうけれど、こっちはなかなか納得しなさそうな両親用に、こんな相手無理ですーと言えるような証言も集めておいた。


 学園の警備さんたちには余計な仕事を増やして申し訳無かったが、ケビン曰く快く協力してくれたそう。

 元々そういう依頼は結構あるらしく、更に俺のあまりの言われように同情してくれたっぽい。


 ケビンに隠されて詳しくは知らないけれど、時々ゴードンから入って来る情報で雰囲気はわかっている。

 多分酷い言われよう。だからか俺の周囲には全く令嬢がいない状態です。未婚の王太子? そんなん無いわー。


 ついでに王太子も無いわー。ってか、令嬢たちに遠巻きにされ過ぎー。

 最近は辺境伯家令嬢が話しかけてくれるようになったけれど、周囲がぎょっとしてて申し訳ない気持ちになるんだよね……。


 更に公務とか視察とかが忙し過ぎ。早く弟の謹慎処分終わってくれないかな? 正直今も弟の分まで働かされているのではないかと疑っている。

 国内の視察だけでも叔父さんだけでは無理なのはわかるけれど、だからって俺に沢山回されても困る。


 少しは断って欲しいと思うし、学生しながら行くのには限界がある。成績が落ちたらどうしてくれるのさ。

 それに何処に行くかを選ぶだけでも大変。どうせなら投資したところを優先したいしね。

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