第12話 お城について

 近衛騎士も前世のイメージとかなり違う。皆機動力重視で茶色い。中には鎖帷子を着ているらしいが、基本革。とにかく全身が茶色っぽい。

 格好良いお揃いの制服や鉄の鎧とかもなく、見た目はとにかく革。動きやすいし弓矢は刺さりにくいし、革で充分なんだって。


 詳しく聞いたら、式典の時だけ使う格好良いお揃いのマントもあるそう。式典に出たのは赤ちゃんの時だけなので、見た記憶がない。

 っていうか、弓矢とか刺さる前に叩き落とせばいいし、剣でやり合う事になっても斬られなきゃいいって考え方らしい。


 近衛騎士が茶色くて、長剣の他に弓矢背負っている人もいるし、短剣だけでなく、暗器ですかってのを持っている人もいる。実用的な騎士ね……。

 前世の漫画とかで言う、傭兵とか冒険者のイメージに近い。


 俺のイメージの様な全身鎧の人は、重装騎士って言われていて国境にいるそう。弓矢や投石からの盾になって、味方を守る人たちなんだって。

 勇気がないと出来ないし、騎士としての能力だけでなく、体格や体力にも恵まれていないと無理なので、子どもたち憧れの存在らしい。


「普通の賊は城に侵入する為に身軽です。身軽な賊相手に動けない護衛なんて、ただの盾ですよ」って笑われた。


 ごもっともです。全身鎧の賊とか想像も出来ない。城壁さえ登れなさそうで、もはやコント。


「重装騎士ほどの体力や体格はありませんが、我々もちゃーんとライハルト殿下を抱えて走れますからね!」と力こぶを見せつけつつ言われた。


 俺の護衛責任者熊さん。違う、ベアード。髭もじゃの脳筋風味が漂っているおじさんだけれど、ちゃんと頭も良い人。

 俺が産まれた時からの付き合いになる。気が付いたらもういた。よく遊んでもらった。


「私らのことを遊び相手だと思ってチョロチョロされていた時は大変でしたが、今は護衛にとって殿下は理想の護衛対象ですよ」


「ふーん?」


「案外、護衛の言うことをよく聞き、守ってくれる人は少ないんですよ」

 何の為の護衛。言う事はちゃんと聞かなきゃ。


「えー? それじゃ誰か怪我をしたり、死んじゃうかもしれないじゃない」


「そうそう、それそれ。皆さんその意識が薄くってねぇ」


 あー、何となくわかっちゃった。


 俺に何かあったら全部ベアードたちの責任になる。護衛騎士だしそれは当然。

 だけれど俺が勝手に行動したり、護衛を撒いた先で何かあっても、ぜーんぶベアードたちの責任になるって事ね。


「これからもちゃんと守るよ」


 知り合いが傷付くとかとんでもない。言われた通り従順な護衛対象でいて、自分も皆も安心安全が一番。


「そうして下さい」


 ベアードの圧が怖い。何かあったな。我儘な護衛対象に苦労しているとか?

 その後にあった式典に参加して、格好良い近衛騎士たちを見ることが出来た。マントが格好良いな!



 今日はルヒトじいと役所見学に行く。


「置いていかないでね、ルヒトじい。俺きっと、二度とお家に戻れない」


「アホなこと言ってないで、そもそも一人になるなよ」


 歩いていると他の警備からの視線をビシバシと感じて、緊張する。ルヒトじいだけでなく、ナタリーの手もにぎにぎ。


「ほれほれ、そろそろ慣れろ」


「大丈夫ですよ、私の知り合いも沢山いますからね」


 ナタリーは人見知りしたことないって言っていたし、別格だと思います!


「この間のなんかの式典は平気なのに、なんでこれが駄目なんだ」


「うーん、何か違う」


 上手く言えないが人前に出る為に参加する式典と、歩いているだけで視線を感じるのは違う。


 役所ではもっと視線に晒されたが、十歳で手を繋いでもらっているのも恥ずかしいと思って頑張った。後で褒めてもらえた。でへへ。

 大きな部門は全て見学させてもらった。皆忙しくしていて大変そうだった。


 国は王家と役所で運営されていて、内政部門が国内で外交部門が外国関連、予算部門がお金関係の所。部門の中で役割が細分化されている。

 他にも調査部門とか監査部門とか色々あるのは聞いているが、まだ全部は覚えられていない。


 法律もあるし裁判所もある。けれどあまり裁判はない。起こすのに結構お金がかかる。

 事件や事故が起こった場合は調査部門が捜査して、罪に応じて処罰が決まっている。前例がない場合に限り、お金不要で裁判に自動突入。


「そんな仕組みで大丈夫なの?」


「まぁ、大体はな。あくまで大体、だからな?」

 

 ちゃんと情状酌量される条件も決まっていて、調査部門の調査結果に不服がある場合のみ、裁判を起こす権利が与えられる。

 調査部門が基本優秀なのと、監査部門による身辺調査が頻繁に行われている事から、不正などもあまりなく、基本素直に従う感じになっている。


 王族でも対応は一緒。自分の身内だけに甘い対応は出来ない仕組み。例外は国外が絡む時。

 監査部門の人を監査する部門もあったな。名前を覚えていない。案外公平な世の中。


「まぁ、裏ではいくらでも汚いことはあるが、表向きは公平だ。本当に公平だと信じていると、やられるぞ。油断するなよ」


「えー。公平かと思ったのに……」


「甘いな。本当に公平な世の中なら、権力を欲しがる奴などいなくなるだろ。まぁ、他の国よりは随分マシだ」


 大体国内はこんな感じ。他国の位置関係とか状況とかはまだこれから勉強する。

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