第13話 お金の使い方を改善

 ずっと城にいたので、自分の生活にどれくらいお金がかかっているのか分かっていなかった。

 子ども過ぎて気にしていなかったとも言う。ルヒトじいが教えてくれた。


「王族だからって、金銭感覚の無い奴には育つな」


 言っていることは凄く真っ当だと思うけれど、言われないと金銭感覚の無い奴に育つ感じ? 王族がそれってヤバくない?

 王族は国民が国に支払っている税金と、自身が持つ私財で暮らしている。私財? 何と俺、産まれた時から給料を貰っていた。知らんかった。


 長男は普通にいけば将来の王太子。なので国が保有する領地の中で、二番目に収入がいい領地から毎月かなりの額の給料が出ていた。


「びっくり。俺、何もしてないけど……」

「知らなかった事にこっちもびっくりだが、王子として生きていることが仕事だ。その報酬だな」

 どういう事か、ちょっと意味わかんない。


「王子だから、必要最低限以上の服に部屋が求められる。この国大丈夫? とは城の従業員にさえ思わせてはいけない」

「あー」


「昔は税金は全部王族が好きに出来た。そうすると、アホが出て来るだろう? だから公と私を分ける給料制になったんだ」

「あー。趣味に散財する奴とか絶対いるな」


 人前に出る時に必要な服、人と食べる食事、人を招く可能性がある部屋の家具や調度品、教師陣や侍女などの給料は税金から。

 それ以外の私服や私室の家具などが私財から。税金から出る項目、自分の私財から出す項目がきっちり決められていた。


 そんでどれくらいお金がかかっているか、見てびっくり。俺の服飾費が特におかしくない?

 詳しく聞いたら服が全部ジャストサイズのオーダーメイド。成長したらポイ。さらにシルク率が高くて汗をかいてシミが出来たりしたらポイ。


 俺十歳。日々成長している最中。

 もったいない! ってことで、先触れしてルヒトじいたちとお針子さんの所へ行った。ビシッとフルメイクの人が出迎えてくれた。


「いつも服を作ってくれてありがとう」


 何か出迎えてくれたお針子さんが感動してしまっている? くわっと目を見開いた後、うるうるしている。

 髪をぴっちりお団子にしていて、顔が化粧のせいなのか劇画タッチ。ちょっと怖い。


 聞いたら勤続二十五年、初めてこういう形でお礼を言われたそう。服の仕上がりを褒められたりで感謝されることはあっても、仕事そのものを感謝されたのは初めてだって。逆に驚いた。

 でも、攻めどころがわかった。にしし。


「あのね、貯金したいし、ちょっと背が伸びたり汚れたらポイするのは嫌なの。長く使えるように出来ない? 皆が作ってくれた物を大切に長く使いたいな」


 子どもっぽさを意識したぜ。

 劇画タッチで撃ち抜かれてくれた。ズッキューーン!! って音が文字で見えた気がする。


「ですが殿下、王族は最高級品を身に付けるべき方々です」

 意外にも話すと普通な感じ。


「でもさぁ……。皆が作ってくれたら、それでもう最高級品だよね?」


 またズッキューーン!! って音が文字で見えた気がする。城のお針子さんたちは、城の裁縫関連を全てお任せされている人たち。

 腕がいい人しかなれないのだから、最高級品でいいと思うんだ。俺があえて子どもの特権を行使しているからか、ルヒトじいがにやついている。

 お主も悪よのうって言って欲しい。サンタクロースでも凄く似合いそう。


 色々と相談させてくれた。生地とかも沢山見せてもらったけれど、最高級品は前世の普通の品とほぼ同じクオリティな気がする。

 今までの普段着はシルクシャツにズボンが基本。季節に合わせて手編みのベストやセーターにカーディガンを着ていた。ズボンも寒くなると表の生地は変わるが、裏地はシルク。


 王族だから直に着るものからシルクであるべきを、見える所だけシルクになった。綿が増えると汚してもいい安心感があるよね。


 寝間着の綿は却下された。羽織るガウンもシルクのまま。緊急時に寝間着にガウンを羽織って部屋の外を歩く可能性があるからだって。

 十歳の緊急時って、すぐ死んじゃいそうですけど。起こりませんように。

 服もジャストサイズより大きめにして、長く着られるようにしてもらう。


 シルクは凄い高かった。この変更だけでも随分節約になりそう。突然廃嫡されたとしても、私財の残りで何とか生きて行けそう。

 ちゃんとそこはルヒトじいに確認した。給料は俺の公務や王子として正しい姿でいることへの報酬でもあるので、廃嫡されようが婿に入ろうが俺の物。没収はない。


 やらかした場合の慰謝料とかは私財から出す事になるから、真面目に生きて行こうと思います。


 今回の件で、お針子さんたちと仲良くなった。あの劇画タッチの人がお針子さんたちを纏めている人で、そこから皆に話が伝わったみたい。

 素材は綿でも最高級品って、滅茶苦茶気合の入った服が届いた時はびっくりした。刺繍とかよく分からないけれど、凄いのは分かる。


「ははは、こりゃあいい。この刺繡だけで、シンプルな絹の服の値段は軽く超えるぞ」


 ルヒトじい爆笑。お針子さんの給料は国から出ているので、服の支払いは材料費のみ。何か逆に申し訳ない気がする。

 侍女経由でそんなに気合入れなくていいよって伝えてもらったら、私たちの心意気だと言われて有耶無耶になった。

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