第14話 側近を改善
勉強は楽しくなったし知識も増えてはいるが、地理は各領の位置と特産品に苦労している。部屋とトイレの地図でコツコツ記憶中。
領地と特産品は何も考えずに地図の上から順に覚えていたけれど、王都は国土のやや南側に位置する事実。
そして北に住む彼らは滅多に王都に来ないと聞いて、ショックを受けた。最初にちょっと頭を使えばよかった。
「話には出て来るから気にすんな」
ルヒトじいの優しさが沁みる。
自分なりに勉強のペースが掴めた頃、側近を選ぶように言われて資料を渡された。見事に全員が同年代。有無を言わさず頻繁に同世代と会う時間を作られるようになった。しかし待て。
側近はアドバイスや注意もしてくれる貴重な存在のはず。それが同世代ってどうなの? 同じガキにアドバイスを貰うの? 経験値がお互いに低すぎない? という素朴な疑問。
早速ルヒトじいに相談してみた。
「側近が同世代って、正直どう思う?」
「不満なのか?」
「うん。だって、お互いに経験値低すぎない? それにまともな諫言が出来るのかっていう疑問」
「うーん、お互いに高め合えってことと、友情で忠誠心をってところかな」
「最近よく会わされているけれど、仲良くなれる気がしない……」
「それはどうしてだ?」
聞かれて最近の会話を思い出してみる。何か自分の能力自慢が多い気がする。それに凄いなーって言わないと機嫌が悪くなる感じ?
「うーん、気が合わない。何で合わないかって言うと、皆のプライドが高過ぎて? 自慢大会とかあるし、性格もちょっと面倒臭い、かな」
「まぁ、十歳前後じゃ親に褒められれば自慢したくなる年頃か」
俺は褒められたことないけどね! 酷くないですか、これ。弟もそうなのかな?
アンナやルヒトじいたちが褒めてくれるから特に気にしたことはなかったけれど、結構酷い気がしてきた。親子関係が希薄だわ。
「年上の側近には賛成だな。人生経験も浅いひよっこの諫言なんて、たかがしれているだろう」
「だよねー。今度両親とのお茶会があるから、その時に言ってみる」
両親との関係が希薄だとは思うけれど、月に一度はお茶をする程度には関係がある。この日に限ってはお互いの立場抜きで、親子として語らうと決まっている。
その時に側近の話を出すのは微妙っちゃ微妙だけれど、夕飯にはいつも貴族の誰かがいるので仕方が無い。
家族だけのお茶会と言いつつ弟も含めてのお茶会をしたことがない辺り、家族関係に関してはかなり希薄だと思う。
忙しい合間に時間をちゃんと捻出してくれるのは凄いとは思うけれど、それだけかも。昔は両親に会える貴重な機会だし楽しみだったけれど、今はそうでもない。親子感が薄い。
周囲に人がいなくなってから、既に周囲での評価を得ている三十代くらいの側近を希望した。
色々言われたけれど、最終的には一応意見が通って、二十代の優秀な人になった。
陰でまた、アンナの師匠が暗躍してくれたっぽい。アンナの師匠凄い。
三十代はバリバリで政治に食い込んでるし、俺には勿体無いよねー。バカ王子のお守りだもん。
俺の側近にされちゃったケビンには、本当に悪いと思っている。解放する時はちゃんと希望の職場に戻れる様にするつもり。
バカ王子でもそれくらいの権限はあるだろう。ケビンは短髪爽やか枠かな。小説には出て来なかったからか、茶髪にヘーゼルの瞳と目立たない色合いをしている。でも爽やか。
「俺の側近になっちゃったケビン。内政部門で若手のホープだったんだって」
「ケビンです。よろしく、お願い……します?」
ケビンが何故疑問系? と思ったら、教師陣に侍女まで顔が怖い。あるぇ? もっと歓迎してくれると思ってた。
後から聞いたら、前情報が一切ないケビンに警戒していたとか。警戒を通り越して威嚇だった気がするのは俺だけ?
しばらくしたら、ケビンも馴染んだ。
「ルヒト様の顔は本気で怖かったです」
「わかる。普段は孫にデレるじいちゃんみたいなんだけどな、時々凄い怖くなる」
「予算部門長時代はずっと怖かったと聞きます。私も配属直後に何度かお会いましたが、基本怖かったですよ」
「そうなの? そんな感じはしないなぁ」
ルヒトじいはかなりのやり手で、ルヒトじいが予算部門長になってから、予算部門の全員が定時退勤になったそう。
離婚率も激減して、今の部門長もそれを引き継いでいるから、そこそこ人気の職場らしい。
「ところで、敢えて年上の側近を希望した理由を聞いても?」
ケビンに理由を話したら納得してくれたが、「まずは言葉遣いから直しましょうか。皆殿下に甘過ぎます」と早速指摘が入った。
小説通りにこの世の中が進んで行くとは思わないけれど、いい側近を選べた気がする。
年上だから基本一緒にいてくれるし、質問したら豊富な知識で色々と教えてくれる。
同年代だとまだ家で勉強の真っ最中だし、こうはいかないと思う。自慢されても不毛なだけだし、競い合う気も一切ない。
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